ハピネスセンター佐伯先生にお話しをうかがいました!

北野ハピネスセンター園長
佐伯先生
こどものしつけ、叱り方について北野ハピネスセンター園長・佐伯先生にお話をうかがいました。
佐伯先生は子ども家庭支援センター長時代から、たくさんの相談を受けていらっしゃいます。
今回も、「目からウロコ!」のお話しをたくさんうかがいましたよ〜!!
1.しつけは生まれてすぐからしていた!!
2.自分の子どもの全てを受け止めよう
3.最後はプラスの言葉
4.弾力のある心を育てる
5.たとえばこんな叱り方で
6.スキンシップも重要
7.最近気になることの一つ
8.皆さんからの質問への答え

文中=子育てコンビニ  =佐伯先生


佐伯先生、今日は「子どもを叱る」ということについて教えていただきたいのですが、子どもを叱るのって、やっぱり「しつけしなくちゃ」というところから来ていると思うのです。「しつけ」というのはいつからどういうふうにすればいいのでしょうか?
しつけってね、実は生まれてすぐから始まっているんですよ。
へ!?生まれてすぐなんですか!?

1.しつけは生まれてすぐからしていた!!

ええ!もちろん無意識でしているんですけどね!ほら、赤ちゃんがおっぱいやミルクが欲しくて泣くでしょう?そういうとき、お母さんは、「はいはい。おなかすいたのね〜、ちょっと待っててね〜いまあげますからね〜」なんていうでしょう?それから、おむつを替えるときも、「ほ〜ら、きれいになって気持ちいいね〜。いいウンチが出たね〜。」なんていいますよね。あれも「しつけ」なんですよ。
こういう言葉がけというのは、母子の絆を深めるとともに、心地よい体験を通じた、しつけなのです。
「ちょっとまってね、といわれたら待つ。でもまったらママが私の要求をかなえてくれる。」とか「おしりがきれいになることは気持ちよくていいことだ」というやりとりの言葉や行動を体験しながら、子どもは理解するんですよ。
しつけは、こういうところから、実は始まっていて、年齢がすすむとともに、たとえば、待つ時間が長くなったり、「待つ」という動作をしていったりと、どんどん展開し、形になっていくのです。
生まれたときから、しつけをしていたんですね〜。
ええ。それと同じに、母子の絆を深めることで大切なのは、こんなことです。
テレビなどを見ているときに、振り返ってお母さんの顔を見ますよね、これは年齢が低いほど回数が多いのですが、「おもしろいな」と思ったときにお母さんの顔を見ると「おもしろいね」という顔をしている、それをみて、「ああ、これはおもしろいんだ」と理解する。「こわいな」と思ったときお母さんが「怖いね、でも守ってあげるよ」という顔をしている、それをみて「これは怖いんだ。でもお母さんがいてくれるから大丈夫だ」と感じる。

こんなふうに、生まれてすぐから、赤ちゃんはお母さんと皮膚接触をしたりしながら、お母さんの言葉のイントネーションや表情から「感情」とか「いいことと悪いことの区別」を学んでいくのです。

たとえば赤ちゃんがおっぱいを吸っているときに、ガブっと噛む事、ありますよね。そういうときお母さんが「いた〜い!」と言って痛い表情をする。そうすると赤ちゃんも困ったような表情になったりしませんか?お母さんとのそういう感情の同化というのが、お互いに意識しないレベルでのしつけのスタートで、感情が分化していくうちに自然に発展していくのです。

意識的に「しつけ」ということが出てくるのは、ママにとって、「困った行動」をするようになってからなんですが、この「困った行動」というのは、それぞれのお母さんの価値観によるんです。今は、この「価値観」というのが多様化したため、それがちょっと問題ですね。
ああ、わかります!今は情報も多いし、何がいいか悪いかということもすごくわかりにくくなっていますよね。

2.自分の子どもの全てを受け止めよう


でもね、しつけ以前に、子どもにとって大切なのは、まず、自分のことを100パーセント受け止めてくれる大人がいる、ということなんです。
100パーセント、ですか。
ええ。いいことも悪いこともも含めて全ての感情を全部受け止めてくれる心の安全基地があるということが大切なんですよ。これがあるということが大前提です。
いいことを受け止めるのはもちろん簡単ですが、悪いことも受け止めるって難しいですよね・・・。
そうですね〜。まだこの年齢は良いこと、悪いことの基準を学び始めた時なのです。まず、悪いことをしてしまったときも、そうしてしまったその子の気持ちをそのまま受け取ってあげてほしいのです。
そして、そのときにその行為に対する親の評価を入れてはいけないのです。まず、受け止めてあげてください。
そこでいきなり叱ってはいけないんですね。
ええ。難しかったら、まず、子どもがやった行動を一度言葉にしてみてください。それから、子どもの表情を見て感情を代弁して、受け止めてあげてください。「こまっちゃったの?」とか「びっくりしちゃったね。」とか・・・。
そういうときって、子どもは自分で説明なんてできないですものね。
そうなんですね。そして、年齢がある程度いっていれば、「どうしてそういうことをしたかったのか」という理由も聞いてあげてその気持ちも受け止めてあげてください。
そして、全てを受け止めてあげてから、「でも、こうしたほうがよかったね」とか「こうやったらもっとうまくいったよ」という解決法を示してあげてください。ここが「しつけ」とか「叱る」にあたるところですね。
受け止めるだけではだめなんですね。
「受け止める」と「通してしまう」はまったく違うんです。なぜ「しつけ」をするのか、叱るのかというと、それは生きる知恵をしっかりと伝承するためなんですね。だから、きちんとそれを示すことも大切です。
受け止める」と「通してしまう」がまったく違うということをちゃんと親はわかっていないといけないんですね。
ええ。それからね、この後が一番大切なのですが、最後は必ず「プラスの言葉」で終わらせてください。

3.最後はプラスの言葉


プラスの言葉で終わらせる・・・。
そう。そのままで終わってしまったら、「ダメな子だ」という気持ちが残りますよね。
最後は、「きっとできるよ!」とか「次は大丈夫よ!」とかプラスの言葉でかならず結んでほしいのです。
それって、子育てに限らず人間関係全部に大切ですね〜。
ええ、友人でも、仕事場でも、「自分の評価抜きで相手の気持ちを受け止める」「最後はプラスの言葉で結ぶ」ということは大切ですよね。
生まれてからず〜っと大切なんですね。
100パーセント自分を受け止めてくれる大人(=自分の心の安全基地)が存在するという体験があることがまず大切で、そして、何かあったときには、その行動と、そのときの感情、そうしたかった感情ををそのまま受け止めてもらった上で、しつけ的評価をうけ、最後はプラスの言葉をもらう。こういうことがしっかりできていると、思春期になっても安心です。
何歳ぐらいまでにやっておくべきことなのですか?
就学前までにそういう体験ができるといいですね。こういう経験を通して、価値観ができていくので。0〜5歳の間に信頼できる大人との愛着関係を通して、自立性が育っていくのですよ。
それから、就学前までに、心がもまれることも大切なんですよ。

4.弾力のある心を育てる


心がもまれること、ですか?
「心の安全基地」があり、そして、その上で、いろいろな人がいる中で体験を重ねて行くことがいい刺激になるのです。
感情にまかせて「怒る」のはしつけではないのですが、そういう人がいてもいいのです。むしろ、そういう中でもまれ、弾力のある心になっていくのです。世の中にはいろいろなやり方があり、いろいろな価値観があり、いろいろな人がいるということを学べるのが乳幼児期なのです。今はそういう経験がしづらくなっていますが・・・。
自分の家にきちんとしたルールがあることは大切なのですが、自分の家でのルールだけが正しい、それが当たり前なんだ、って思ってはいけないんですね。
社会にでると、本当にいろいろな人がいますものね。
昔は、大家族で、近所とのつきあいも盛んで・・・で、もまれる経験はもちろん、自分の心の安全基地となる大人も見つけやすかったのですが、今はお母さんだけになってしまっているのが、お母さんにとっても大変なんですよね。
100パーセント子どもを受け止めた上で、子どもが悪いことをしてしまったらまずそのまま受け止める・・・。う〜ん、つい、「だめでしょ!」って先にいっちゃうんですよね・・・。感情的になりそうなときはどうすればいいでしょうか。

5.たとえばこんな叱り方で・・・


先ほどもいったように、まず、子どもがやってしまったことを言葉にしてみてください。お水をこぼしちゃったなら、「お水をこぼしちゃったのね」と。
そうすることで親子ともまずワンクッションおくことができるんですよ。それから、子どもの感情を読み取って代弁して受け止める・・・。
カっときても、まずやっちゃったことを言葉にしてみる、そこから始めるというのは、できそうな気がしてきました〜。
それから、「ダメ」といわなければならないときは、わかりやすく「ダメ」っていう表情もはっきりしてくださいね。小さい子ほど「目」から情報がはいるので、いけないことをしたときには、「だめ」っていう言葉、表情、動作で短く叱る。そして、伝わったら、理解できたことをほめ、評価してあげてください
もちろん年齢があがって言葉がわかるようになったら理由も話してあげることが必要です。
なるほど。「プラスの言葉でしめる」でしたよね!安全基地をつくり、受け止め、叱り、プラスの言葉でしめる、ですね!

6.スキンシップも重要


それから、もう一つ大切なことはスキンシップです。乳幼児から、そうですね、パートナーができるまでスキンシップはずっとしてあげてください。そのぬくもりからも気持ちが伝わるんですよ。
パートナーができるまで、というと、相当大きくなってからもですか?
ええ。スキンシップといっても抱っこする、とかじゃなくて、ただ肩をポンと叩いたり、軽くハグしたりとか、そんなことでいいのです。
先生は子育てのいろいろな相談を受けていらっしゃいますが、「叱り方」についての相談は多いんですか?
そうですね、「ママの変声期」時期は、「いつから叱ったらいいですか」とか「どんなふうに叱ったらいいか」という相談が多くなりますね。
ママの変声期???
ええ、赤ちゃんが生まれると、育児語というんですが、こう、高い声でしゃべりかけますよね?
それが、普通の声に変わるころを私は「ママの変声期」って呼んでいるんです。その頃のお母さんから、叱り方の相談をうけることが多いです。
最近のお母さんの傾向とかはあるんですか?

7.最近気になることのひとつ

そうですね・・・。これはお母さんに限らず、保育士さん、幼稚園の先生などでもある傾向なのですが、子どもにたいしてあいまいな指示が多いように思います。
「いい」「悪い」などをはっきり言わない?
「お母さんは片付けてほしいんだけどなぁ〜」というような、子どもに判断をゆだねる言い方が増えています。こういう言い方をすると「お母さんはかたづけてほしいんだね。でもぼくはちがう」となってしまいますよね?まず価値観を育てるのですから、そのときには、まだ○×をはっきり示したほうがいいのです。
それから、これは大きくなってからもいえるのですが、「我が家のルール」というものを自信を持ってすすめてください。今は、情報が多くて、お母さんたちも迷いがちですが、子育てには正解なんてないのです。「この子にとってはこれがいい」とお母さんが判断し、自信をもってすすめていかないとね!
それと、迷ったときは、周囲の人に相談することも必要です。

8.皆さんからの質問(メールアンケート)の答え


ところで、読者の方からの質問があるのですが・・・
まず「他人の子どもの叱り方について」です。他人の子どもでも叱ったほうがいいということは、「心ももまれたほうがいい」ということにつながると思うのですが、他人の子どもを叱るのって難しいですよね・・・。
最後をね、プラスの言葉で結べばいいんですよ!
あ!なるほど!そうですよね!他人の子どもでも、「代弁する・聞く・受け止める→解決法を示す→プラスの言葉で結ぶ」っていうのは一緒ですものね!

次ですが、「兄弟がいる家庭での叱り方」です。兄弟だとどうしてもおにいちゃんばかりを叱ってしまうじゃないですか。お兄ちゃんが不信感を持っていないか、ひいきと感じていないか不安、という質問です。
これも、お兄ちゃんを叱ったとき、最後をプラスの言葉でむすんであげればいいのです。
また、あえて弟から叱ってみる、というのをやってみてもいいと思いますよ。
次は、「なぜ叱られているのかを本当に理解しているのかが良く分からない」という質問です。
子どもは0歳の赤ちゃんから、しっかりと全身で受け止めているものですよ。
ガミガミいいすぎて、「お母さん怒ってる??」というようなことを言うようになってきて、親の顔色をうかがって行動するようになってしまうのでは?と不安についてですが・・・。
親の顔色をうかがうようになってしまうのは、やっぱりよくないんですね。まず、子どもの心・気持ちをそのまま受け止めるところからやってみてください。
叱るが怒るになってしまって、自己嫌悪・・・というのはきっと皆さんあると思うのですが、次の質問は、「自分を抑えきれずに叱りすぎ、それが自分で情けなくて思わずその場で子どもを抱きしめているときがあるのですが、これって子どもは叱られたのかなんなのか混乱しないでしょうか?」ということです。
子どもには全部きちんと伝わっているから大丈夫ですよ!子どもの心はそんな簡単にはつぶれません。私達は弾力のある心を育てているんですから。子どもが2歳だったらお母さんはまだ2年生ということじゃないですか。周りの人にもそう思ってもらいたいですよね。
やりすぎちゃった、と思ったら、そのまま子どもに謝ればいいんです。「お母さんまたやっちゃった〜」なんてね。
私も、毎晩、子どもの寝顔に向かって、「また怒りすぎてしまった・・・」って自己嫌悪なんですよ〜。でも、それを自覚して謝ればいいんですね。
もちろん、子どもの安全基地になることと、「受け入れる」という気持ちは忘れないでくださいね。
はい!では次なんですが、体罰というのは、どうなんでしょう。
体罰はやっぱり意味がないですね〜。体罰を与えていると、「おびえる子」になってしまい、助けてもらいたいときに「助けて」といえなくなってしまうのです。つい手が出てしまう、というのは、その大人のクセや育ってきた環境の影響もあると思うのですが、先ほどもいいましたが、ワンクッションいれるといいのです。子どもがした行為を口に出していってみる、とか、あと、「叱る宣言をする」というのもいいですよ!
それから、カッなったときにその場を離れるというのも有効です。で、そのままだと「見捨てられた」と子どもは感じてしまうので、感情がおさまったら、子どもと向き合い、プラスの言葉で結んであげてください。
お母さんだって、感情があるんですから、それを押し殺す必要はないんですよ。
叱る宣言???
ええ!「これから叱らせていただきます!」とか「今から鬼に変身させてもらいます!」とか宣言しちゃうの!宣言することでワンクッションおくことができるんです。
子どもも、これだけで十分わかるし!
次の質問は虐待についてです。体罰は意味がないということをうかがいましたが、
精神的な虐待というのは、どういうこを言ったときなのでしょうか。
その子の存在を否定したとき、ですね。「あんたなんかいらない」「なんでここにいるの」「産まなければよかった」というような、存在を否定するような発言は絶対に使わないでほしいですね。
でもね、こんなことを言ってしまうときって、ママの心のエネルギーが傾いてしまっているときなのです。だから、そんなことを言ってしまったら、自分の心がどうして傾いたかを考えて、しかるべきところに相談してもらいたいのです。お母さん自身が、そんなふうになってしまった自分を否定してしまわないでください。その心を「100パーセント」受け止めてくれるところが必ずありますから、そういう、安全な場所(=安全基地)で自分の心を出していけばいいのです。三鷹市でしたら、保健センター子ども家庭支援センターにお話ししにきてほしいのです。
100パーセント受け止めてもらえるから、100パーセント受け止めてあげることができる・・・つながっているんですね・・・。
100パーセント受け止めて包み込んでもらえる心の安全基地があるから、臆せず自分の思いを伝えられるようになるし、安心してもまれ、そして弾力のある心をはぐくむことができるんです。それは子どもだけでなく、お母さんにとっても大切です。
母親である私たちも、「母親だから」と自分にプレッシャーをかけてはいけないんですね・・・。佐伯先生、今日はありがとうございました!!

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2005年6月号

画像は「ソザイヤPOMO」さんからお借りしています。