熊井先生!教えてください! |
子どもにとっての「生活習慣」がどう大切なのか、三鷹市の子育て支援に長く関わり、現在は杏林大学で教鞭をとられている熊井先生にうかがいました! |
今回のアンケート結果を簡潔に言うと、子どもたちの生活リズムに気をつけているご家庭が多い、ということになると思います。また、基本的生活習慣を身につけることが子どもにとって大切であるという意識を多くのかたがもっていることがうかがえます。これらは他のもっと大きな調査とほぼ同様の結果と言えるとおもいます(Benesse教育研究開発センター「第3回幼児の生活アンケート報告書・国内調査」)。 ただ最近、子どもの生活リズム、基本的生活習慣などについて、さかんに注意信号が発せられています。「早寝早起き朝ごはん運動」という言葉を聞いたことがありますか。朝食をとる、とらないではなく、早寝早起きが習慣化すれば自然に朝ごはんをキチンと食べるようになる、という生活リズムの問題として考えられています。子どもの生活リズムを向上させよう、というわけです。 この運動を推進している文部科学省は、「子どもの学習意欲や体力の低下」が「家庭における食事や睡眠などの基本的生活習慣の乱れ」と関連している旨説明しています。そして、「朝ごはんを食べないことがある小学生が15%、中学生が22%」「毎日朝食をとる子どもはペーパーテストの得点が高い傾向にある」と紹介しています。 テストの点数を持ち出されてもなあと思わないではありませんが、でも基本的生活習慣と学力の関係はずいぶん前から言われていました。小学校の教員を長く勤め、百ます計算の考案者として有名な岸本裕史さんは『見える学力、見えない学力』(大月書店、初版は1981年発行)で、次のように書いています。学力を氷山にたとえています。
そして、見えない学力を作るものとして、岸本裕史さんは、「基本的な生活習慣の確立」をあげているのです。 最近ではさらに、心身の不調を訴える子どもには、その背景に、人の身体に生来備わっている体内時計のリズムと生活リズムのズレによる影響があるとも考えられています。 そして、テレビやゲームが子どもの心の発達に与える影響なども懸念されるようになりました。長時間のテレビ、ゲームとの接触は寝る時間を遅らせるなど、つまりは基本的生活習慣の乱れにつながります。 テレビゲームの流行など、ますます子どもたちは、基本的生活習慣を乱しがちな環境に置かれるようになっているのかもしれません。幼児期はよかったけれどその後、せっかく獲得した基本的生活習慣が乱れてしまう。そういうことかもしれません。 就園、入学、進級シーズンのこの時期に、あらためて子どもの基本的生活習慣について考えてみませんか。そして、子どもにとって基本的生活習慣が大切という意識を忘れずに持ち続けたいものです。 (杏林大学 熊井利廣) |
2007年4月号