三鷹市は昔から文庫活動が盛んな土地です。家庭文庫「ちいさいおうち」も名前や場所を変えつつ30年以上続いています(私自身、この文庫で育った子どもです!)。公民館等の一室をお借りする地域文庫と家庭文庫のいちばんの違いは、家庭文庫は個人宅で開かれているということ、だから主宰者さんのカラーが大きく反映されます。
牟礼7丁目にある「ちいさいおうち」は三鷹市の全部の小中学校に司書さんのいる学校図書館を設置するために奔走してくださった内藤千津さんのお宅の地下室、といっても大きな窓があって開放的な雰囲気。玄関横の小さな石段を降りて入ります(小さな看板が目印)。利用者は0歳から小学校高学年の子どもたちとそのお母さんたち。ときどきお父さんや中学生のお姉さんも(←落語や手品もしてくれる人気者)。
毎週の決まったプログラムは特にありません。お母さんたちは「みたか子どもと絵本プロジェクト連絡会」の会員だったり東三鷹学園朝読書サポート隊のメンバーだったりと外部で活発に読み聞かせ活動をしている分、ここではのんびりしていることが多いのです。でも「読んでー」の声があがれば誰でもなんでも読むので、結局毎週絵本なり紙芝居なりがいくつも読まれています。ストーリーテリングの練習を兼ねて一席披露なんてことも。みんなでお行儀よくというよりは、聴きたい人が聴きたいように楽しんでます。自分が生まれる前に描かれた古いマンガに読みふけってるお姉さんが耳だけ向けてたりとか。おすすめしたい本を文庫に持ち込むと他のお母さんたちから言われます、「読んでー」。
大きな行事はクリスマス会。司会も段取りもみんな子どもたちで、紙芝居や絵本といった文庫らしい演し物の他、ダンスを習っている男の子たちのヒップホップの披露も。司会さんに「次は大人です」といきなりふられたり(素話をしました)。それ以外には毎月最後の週に持ち寄りでお茶会をしています。子どもたちの間でなぜか人気のメニューはゆでたまご。生活クラブの卵とマヨネーズは確かにおいしいです。それから昨年はお母さんだけで原宿の絵本専門店「クレヨンハウス」で楽しんだりも。この2月には長野麻子さんの呼吸法のワークショップで、大人も子どもも大いに盛り上がりました。
ふだんの日は家庭文庫ならではのアットホームな雰囲気の中、男子は「しごとば」シリーズをみんなで囲むようにして読み、女子は「101漢字かるた」でヒートアップ、小さい子はお母さんに好きな本を読んでもらったり、ブロックで遊んだり。年齢とわず人気なのは「メイシーちゃんのおうち」などの広げると2階建の大きな家になる仕掛け絵本。付属の紙人形以外にもレゴの人体やミニカーが参入します。子どもたちがわいわいと本を楽しめるのが、図書館では味わえない文庫の良さです。
お母さんたちはその横で、子育てのこと、幼稚園や学校のこと、今晩のおかずのこと、そしてもちろん本のことをいろいろおしゃべり。読書ボランティアの打ち合わせをここでしちゃったりも。昨年はやはり放射能が大きな関心事でした。山岸凉子や萩尾望都のコミック、小出裕章さんの子どもから読める解説本、ドイツの小説『みえない雲』、クレヨンハウスのブックレットを回し読み(含小学生)。中でもお母さんみんなの手がのびたのは『今ある放射能を消す食事』とそのベースになったウクライナの『自分と子どもを放射能から守るには』の2冊です。
文庫の本の大部分は、他の文庫同様、市立図書館からの団体貸出の本です。いきいきした本、わくわく楽しめる本が選書の基準の「ちいさいおうち」、いわゆる定番絵本の率は他の文庫さんに比べて低めです。図書館からの貸出は年に1回リクエストもできるので、これもお母さんたちの大きな楽しみ。昨年は新日本出版社の「アメリカの人権絵本」シリーズを入れてもらいました。読み書きを教われない、図書館の利用を禁じられている、といった「読むこと」をめぐる黒人差別を小学生にもわかりやすく、しかも物語性豊かに描いた図書群です。もちろんシリアスな本ばかりではなく、いとうひろしの「おさる」シリーズの最新刊も頼みました。ゆるくってほっこりする本です。その他メンバーおすすめの本やコミックが、ところ狭しと置かれています。
文庫のメンバーは一小・北野小学区在住の人がメインですが、自転車やバスで中原や井の頭から通う人もいます。どうぞいつでもお気軽に遊びにいらしてください。
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