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子どもの体力づくりって? |
体力づくりとはいつから始まっているのでしょうか? 外遊びっていつから出来るものなのでしょうか…? 三鷹市立山中保育園の太田代先生に、小さなお子さんの体力作りや外遊びについてお話を伺いました。 |
≪子どもの体力づくりって?≫ | |
「子どもの体力が低下している」という話をよく耳にします。 | |
確かに、文科省の全国調査でも「運動能力」の低下が顕著になっていますね。体力をつけさせたいと望んでいる保護者の方も多いと思います。 しかし、そもそも、大人と子どもでは、体力づくりに適する方法が異なります。 まず、「運動能力」には、2つの要素があります。 @運動体力…筋力や持久力、瞬発力など、体を支えたり動かしたりする力のこと。 ⇒これは、思春期や青年期に発達しやすい力です。 A運動コントロール能力…目的に合うように体の動きをコントロールする力のこと。 ⇒乳児期や幼児期〜学童期に身に付きやすい力です。 |
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私たちは普段、体力と認識しているのは、どちらかというと「運動体力」のほうなのですね。 | |
そうですね。乳幼児期の子どもたちは、運動体力よりも「運動コントロール能力」を育てていった方がよい時期なのです。 具体的に言うと、歩く・跳ぶ・投げる・転がる などのさまざまな基本動作のことです。 |
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なんだか普通過ぎてよくわからないです(・_・;)。 | |
例えば、子どもは段差の上り下りが好きですよね。始めのうちはゆっくりでおぼつかない動きでも、何度も繰り返していくことで、その動きがなめらかになり、着実に出来るようになります。 これが、「のぼる」という基本動作の「習得(身につけること)」と「洗練(上手になること)」で、乳幼児の運動発達の特徴です。 このようにして身に着ける基本動作の種類は80種類以上となり、およそ11・12歳頃までに大人と変わらないレベルにまで達するのだそうです。 |
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確かに!!子どもって、何度も同じことを繰り返しますよね! | |
大人は、筋力づくりやジョギングなど専門的な運動をすることで体力づくりに効果がありますが、乳幼児期は、一つ一つの動きをトレーニングすればよいということではありません。 いろいろな動きを身につけて、それが上手にできるようになることが大切です。 そのため、様々な動きを幅広く経験できる「遊び」が重要になるのです。その中で筋力や心肺機能などの体力・運動能力の基礎も高まっていきます。 しっかりと体を動かすことで、食事や睡眠もバランスが取れるようになるので、規則正しい生活リズムが作れ、健康を保つことができます。 これがこの時期の子どもたちなりの大切な体力づくりのではないかなと考えています。 |
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≪年齢別の遊び≫ | |
外遊びというと、公園の遊具を使って、というイメージなのですが、小さいうちはまだ遊具も使えないですよね。 保育園ではどのように遊ばせているのでしょうか? |
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では、年齢別にご紹介します。 | |
0歳…まだ歩けない時期ですが、園庭ではマットを敷いて座らせたりしています。ご家庭でしたら、レジャーシートを持ち歩かれると良いかもしれません。 その子の興味に合わせて声をかけ、歌ったり、体に触れたり、おもちゃを用意したりして遊べるようにしています。 外気にあたることで、気温(暖かい、寒いなど)を感じたり、匂いを感じたりと、五感がたくさん刺激されます。 ご家庭でも、赤ちゃんが室内では泣いていても、外に出たら泣き止むことなどはよくありますよね。 また、年齢の近い子たちの遊ぶ姿を見ることも嬉しいようで、体を動かそうとするよい刺激になります。 |
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1歳…おもちゃや物に対する興味が湧いてくる年齢です。おもちゃはもちろん、坂道などの起伏や段差、トンネル、砂場、ボールなどでもよく遊びます。 歩行が安定していなくても、興味を持っているようであれば(安全な場所であれば)、子どもを地面に下ろしてみても良いですね。 嫌がるようであれば、無理をさせないようにしましょう。レジャーシートや大人の膝に座らせてあげるのもよいと思います。 大人が少し砂を手に取って見せたり、触らせてあげてみるのも方法の一つです。 慣れてきたら自然と子どもから歩き出したり、触ってみたりするようになりますよ。徐々に手や膝などで感じる地面の感覚も楽しめたら良いですね。 |
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2歳…友だちへの興味が湧いてくる年齢です。音楽に合わせて体を動かしたり、お兄さんお姉さんのまねをして遊んでみようとするようになってきます。 年上の子のまねをしようとしているとき、難しそうなことは少し手助けしながら、できる範囲でやりたい気持ちを叶えてあげると、子どもの達成感につながり、喜びますよ。 例えば、「かけっこ」なら、スタートのラインを引いてあげたり、笛を吹くまねをしてあげるだけでも子どもの気分を盛り上げることができますよ。 |
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私たちは、環境設定といって、その年齢に合った環境づくりをしながら保育をしています。 子どもたちは、園庭を自由に遊んでいるように見えますが、保育士は日々目的を持ちながら保育に取り組んでいます。 ルールを守ることに重点を置く日もあれば、遊びの発展性を重視したり、又はただただ遊び込むことを目的としたり。 遊びは、気分の解放・情緒の安定など心に働きかける面とともに、工夫や想像を膨らませることにつながり、学びの基礎にもなるので、とても大切に考えています。決して体力づくりの為だけではないんですよ。 |
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≪興味の幅を広げる≫ | |
親としては、子どもの体力づくりに、と公園に連れて行っても、段差の上り下りだけでは納得がいかないというか(^_^;) ときにはせっかく公園に行こうとしているのに、途中で止まってばかりで困ってしまうということもあります。 全然体力を使っていないからお昼寝出来ないじゃない!という気持ちになってしまったり…。もっと体を使う遊びをさせたいと思うのですが…。 |
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そうですよね。遊んでいるとき、1つのことにある程度熱中できて、楽しめているようであれば、気持ちを切り替える言葉が効果的かもしれません。 まずは、子どもの発見や興味を大事にしてあげます。 例えば石を拾っていたら、「ツルツルしてるね!」「白い石、めずらしいねぇ!」など、一緒に驚いてみるのもいいですね。そして、「たくさん拾って楽しかったねぇ〜!!またやろうね〜!!」と、今、遊んでいたことについての達成感を言語化してあげます。 それから、「あそこの木までかけっこしてみようか!」など、提案してみます。 今していたことを言葉で表してもらえると、子どもは気持ちを整理しやすいんです。 自分の好きな特定の遊びに夢中になることはよいことですが、遊びがあまりにも偏ってしまうと経験できることが限定的になってしまいます。 なので、このような言葉がけをして、適度に他の遊びに誘ってみることも必要です。 興味を持つ時間は短いかもしれませんが、ここは大人が“笑顔”で“楽しく”提案してあげられるとよいですね! |
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逆に、子どもが何に興味を示しているか知るためにはどうしたら良いでしょうか。 | |
私たちは、子どもたちがどんなことに視線を注いでいるのかを見ています。そして、子どもが見ているものに、私たちも興味を示し、楽しさを共有するようにしています。例えば保育園で多くの子どもたちに人気のダンゴ虫。動く姿や、刺激を受けて丸くなる形が面白いようです。ダンゴ虫を見つけようと園庭の石をひっくり返して、夢中になって地面を探しています。バケツに集めて満足げな表情をしていると、私たちも嬉しくなります。 子どもの興味の幅を広げる大事なポイントは、大人も一緒に楽しむことです。笑ったり、驚いたり、悔しがったりと、いろいろな表情を子どもたちに見せてあげてください。子どもも安心して楽しむことが出来ますよ。 |
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≪外遊びの服装と注意点≫ | |
外遊びの際の注意点はありますか。 | |
3点ほどあります。 1点目は服装です。フード付きの洋服や、スカート、ひも付きのデザインは遊具などに引っかかる危険があります。サイズも動きやすさに違いが出ます。大きすぎず小さすぎないものが良いです。また、子どもは体温が高めなので、外遊びの際は少し薄着くらいの方が心地よく遊べます。また、帽子の着用をおすすめします。転んだ時に頭を守れ、特にこれからの時期は紫外線を避けることができます。 2点目は安全に、ということです。遊ぶ場所に危険なものがないか、まずは確認してください。そして子どもから決して目を離さないでください。安全に見える遊具でも、子どもは思わぬ動きをして怪我につながることがあります。 3点目は体調への配慮です。外遊びができる体調かどうか判断しましょう。体温や食事の食べ具合、機嫌などを見て、無理なく出かけましょう。また、子どもが一回に摂取できる水分量はとても少ないので、こまめな水分補給を忘れずに。 |
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園長先生からもお話をいただきました。 日々の忙しい生活の中に、自転車での移動は欠かせないところですが、いつも自転車で通ってしまう道を、時には歩いてみるのはどうでしょうか。動きの基本の「き」である「歩く」という動作は、より高次で多様な動きに発達していきます。子どもの体力づくりには貴重な運動ですよね。歩くとき、バックを持ったり、水筒を持ったりするだけで気分が変わり、良い運動にもなりますよ。 遊びは心も体も成長させ、考える力を養い、子どもの個性を引き出します。大人も一緒にぜひ楽しみましょう^^。 |
〜取材を終えて〜 始めは体力づくりの観点から外遊びについてお話を伺うつもりだったのですが、話は広い意味での成長の話となり、 子どもの時期の運動って体力作り以外にも大切なことが沢山あるんだ、ということをしみじみ感じました。 どれだけ能動的に子どもと遊んでいたかなぁ…。 そんな中で言われる体力の低下問題。 つかまり立ちが早くなっている、というお話を伺いました。 昔はハイハイ時期が長かったことが、その後の身体の発達に良い影響を与えていたそうです。 現在は部屋の中で過ごすことが多いため、すぐに掴まれるところがあり、つかまり立ちが早く出来てしまうということです。 生活が便利になり、活動の幅が少なくなりがちな昨今、改めて子どもの目線や興味を大切する必要性を知ることができました。 太田代先生、山中保育園のみなさま、ありがとうございました! |
reported by terumi
2014年5月号