星の話をしよう!9月号

協力:天文学とプラネタリウム


9月の夜空は、これに注目!

 家を建てるときは採光を考えて南向き、夏の蒸し暑さをしのぐために風通しを良く(あるいは冬の豪雪に対処するため、屋根の傾斜を急に)しておく、というのが日本の一般的な家屋の建て方ですね。南向きにするのは、太陽が一年中天頂よりも南側を通るためです。

 ところが北緯およそ23度にある北回帰線に対して、赤道寄りの地域では、春分・秋分の日を境に、太陽が北側に行ったり南側に行ったりします。夏の間は北側、秋分の日を過ぎると南側。南回帰線よりもさらに南に行くと、今度は太陽が天頂よりも北側に行きっぱなし。地球の自転軸の傾きのおかげで、緯度によって、家を建てるときの考え方が変化するわけです。もっともいまどきの都会であれば、よいっぱりの人が多くて、太陽がどっちにいるなんてことは、あまり重要でなくなっているのかもしれませんが。

アンドロメダ。クリックすると大きい画像が開きます。  同じ理由で、秋の空の名物であるアンドロメダ星雲も、日本では天頂近くを通るので首が痛くなりがちなのに、ハワイではちょっと低いところを通るので、見やすくなります。しかも晴れたら空気が澄んでいるので、視力の良い人なら平地に住んでいても、見分けられるチャンスが多くあります。日本でも台風一過のあと、空が澄んでいたら、自分の目で見えることがありますよね。台風が過ぎてほっとしたところで、夜空を見上げてみたいものです。何しろ私たちの住んでいる地球が属している太陽系、これを含む銀河系とは別の銀河を、自分の目で見る絶好のチャンスなのですから。

 さてさてハワイでは、昼間の太陽の高度が相変わらず高い。すばる望遠鏡が設置されている山の上では、強烈な紫外線が降り注ぎます。もし皆さんが見学にいらっしゃることがありましたら、たとえ気温が摂氏ゼロ度付近になっても、紫外線が強いので、日焼け対策にご注意くださいね。(左)



今月の星空 Q&A
このコーナーでは、皆さんから寄せられた宇宙に関する質問に対して、天文学とプラネタリウム(略称:天プラ)のメンバーがお答えします!お子さんから聞かれて答えに困った素朴な疑問などありましたら、sukusuku@mitaka.ne.jpまでぜひお寄せ下さい。


オシエテオシエテ
冥王星はなぜ惑星じゃなくなっちゃったの?

オコタエシマス

先日、冥王星を惑星の仲間から外すかどうかが大変話題になりました。国際天文学連合(IAU)の総会が8月にチェコのプラハで開かれ、そこで惑星の定義が決められました。この定義に従うと、冥王星は惑星ではなくなりました。では、なぜ急にこんなことになったのでしょう?

太陽系についての基本的な情報は、下記のウェブサイトに充実しています。
JSTバーチャル科学館 惑星への旅 http://jvsc.jst.go.jp/universe/planet/
ザ・ナイン・プラネッツ http://www.cgh.ed.jp/TNPJP/nineplanets/

冥王星は、アメリカの天文学者トンボーによって1930年に発見されました。当時はまだ観測の技術も今に比べると未熟だったので、冥王星は地球より大きな、立派な惑星であると考えられていました。だんだん観測技術が進歩してくるにつれて冥王星の本当の大きさがわかるようになり、今では地球の月よりも小さいことがわかっています。

そして技術の進歩により、冥王星の近くにたくさんの小さな天体が見つかり始めました。1992年のことです。観測を続けてみると、同じような天体がどんどん見つかります。これらの天体をエッジワース・カイパーベルト天体(EKBOs)と呼びます。そして2003年にはついに冥王星より大きいと考えられる天体(2003UB313)が見つかったのです。この天体を見つけたグループは、「第10惑星を見つけた!」と大々的に発表しました。しかし天文学的には、どんな天体を惑星と呼ぶか、という正式な決まりがありませんでした。決めないままにしておくと、立場があやふやな天体が増えてしまう、ということで、今回天文学者の集まりであるIAUが「惑星とは何か」ということを正式に決めることにしたのです。

ここで決まった太陽系の惑星の定義は、簡単に言うと次のようなものです。 (1)太陽の周りを回っていて、(2)十分に重くて丸い形をしており、(3)自分の軌道の上から他の天体を掃き散らしてしまったもの。冥王星の場合、その軌道の近くにEKBOsがたくさんあるので3つ目の基準を満たさず、惑星ではない "dwarf planet" という仲間に分類されました。この分類の日本語名は、これから日本の研究者たちが相談して決めることになります。

太陽系。クリックすると大きい画像がひらきます。
The International Astronomical Union/Martin Kornmesser

冥王星が惑星から外されてかわいそう」という声もありますが、そうではありません。冥王星は、その近くにあるたくさんの天体の代表格として、天文学の進歩を象徴する大切な存在として、これからもずっと太陽の周りを回り続けるのです。

より詳しくは、国立天文台の解説ページ http://www.nao.ac.jp/info/20060824/index.html をご覧ください。
(松)
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2006年9月号

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使用している画像はblue-greenさん,M+KBOXさんなど素材配布サイトからお借りしています。