ようこそ!アロマの世界へ
日本ハーバルアロマセラピスト協会認定 アロマテラピーアドバイザー リフレクソロジスト
崎谷明子(saki)さんによるアロマエッセイです
第28回 飲む香りの効能
源氏物語に出てくる光源氏の子である薫の君という男性は、生まれながらにして体の内から良い香りを発していたため、薫の君と呼ばれたということです。そのため、光源氏ほどの美はなかったものの、その香りゆえ美しい女性たちの心を一身に集めました。それに対抗しようと、匂宮は薫物をいつも濃厚に衣類に薫き込めていたということですが、とても薫の宮には及ばなかったそうです。 さて、香りが女性を惹きつけるためかどうかはわかりませんが、昨年の7月に某メーカーから、食べると体から香り成分が発散するという男性向けフレグランスガムが発売され、予想以上の人気で生産が追いつかず、販売を休 止したほどでした。 今年の春リニューアルされ再発売されたそうですが、さらに香りの成分を増量し香りを高めたという事。そこで疑問に思うのは、ガムを噛むだけで本当に体から香りがするものなのかどかということです。 メーカーに直接取材をしたサイエンスライターの尼崎太郎氏の記事によると、答えはYESでした。 実験は、手に専用のビニール手袋を着けた状態で、香りのガムを食べて一定時間待ち、手から放出されたその袋の中のガスの成分を機械で調べるという、とてもわかりやすい方法。 香りの成分によって放出されやすいもの、そうでないものという違いはあるものの、例えばバラの香りの成分である「ゲラニオール」は体から放出されやすく、ガムを食べ始めてから1〜2時間で発散量はピークを迎えるとのことでした。 発散量がどのくらいで、香りがどのくらいまで漂うのか?疑問は残るのですが、それでも確実にガムの香り成分は体から発散されるということはわかりました。 実際口から取り入れる香りの商品は、このガムが初めてというわけではなく、女性向けキャンディーもあれば、ローズオイルなどをカプセルに詰めたサプリメントなども販売されていますので、やはりそれなりの効果があるのでしょう。かくいう私もローズオイルのカプセルを以前飲んだ事がありますが、ただ自分の香りというのは意外と本人はわからないため、それがどの程度の効果を発揮していたかよくわからなかったのですが・・・ 香りを口から取り入れるという事は、実は古代から行われていました。体身香(たいしんこう)という言葉をご存知でしょうか?中国の隋唐時代の医学を集大成した『医心方』によると身体を芳しくする方法として記されているものです。これもやはり外から香りを付けるのではなはなく、丸薬状のものを内服することで、身体の内から芳香を漂わせるというものです。丁子、麝香、かっ香、霊陵香、青木香、桂皮、甘松等を混ぜ合わせて細かによく搗き砕いて粉末にして、蜜を加えて作るそうです。この丸薬を3日間、12個服用を続けると口中が芳香を放ち、5日目には体から香気がし、10日目には着ている服に香りが移る。そして、20日目には、すれ違う人も気がつくほどの香りを、25日目には手や顔を洗った水に香気が移り、1ヶ月後は、その芳香が抱いた赤ん坊にまで移るほどになるといわれています。日本でも、鎌倉時代に入る前後には、体身香を服用していたといわれています。そして、体身香は体内から良い香りを発するだけでなく、様々な芳香植物に含まれている薬効成分を体内に取り入れることで薬のような役割も持っていたとも考えられています。 芳香成分を体内に取り入れて香りを発するかどうかは微妙なとこですが、その薬効成分が体に良い影響を与えることは少なからず期待できます。 アロマテラピーで使用される精油も実はフランスなどでは医師の処方のもとカプセルにつめて薬として服用することがあります。でも、残念ながら日本では精油はあくまでも雑貨扱いですので飲用はできません。もし芳香植物を口から取り入れたいということであれば、やはりハーブがお勧めです。お料理に使ったり、ハーブティにしたりしても良いですが、ハーブを細かい粉末状にして、市販のカプセルに詰めればお手製のハープサプリメントとして服用できますので、ご興味があったら是非試してみて下さい。 また、バッチフラワーレメディといって、香りの成分ではなく植物のパワーを体に取り入れるという方法もあります。 これは1936年にイギリスのエドワード・バッチ博士によって考案された心や感情のバランスを取り戻すための自然療法です。野生の植物に心や感情を癒す不思議な力があることに注目したバッチ博士は、長い年月をかけた研究の末、38種類からなるバッチフラワーレメディを完成させました。 バッチフラワーレメディは以下の2つの方法から作られています。 「太陽法」 花が最も美しく咲いているよく晴れた日を選び、ガラスのボールに清流から汲んできた水かミネラルウォーターを入れ、太陽光に当てて花が持っているエネルギー(波動)を転写します。 「煮沸法」 鍋に花や葉がついた小枝を入れ、全体がひたるくらいまでミネラルウォーターを入れて煮出します。 この2つの方法で抽出された液に同量のブランデー(日本ではグリセリン)を加えたものが母液となり、市販されているストックボトルに詰められたレメディには保存料30ml対して、2滴の割合で母液が入れられているということです。これを1日4回以上服用するということです。 残念ながらこのバッチフラワーは科学的にその効果が解明されているわけではありません。目に見えないエネルギーですので、その実証は難しいのでしょう。 薬のように副作用があるわけではなく、日常的なストレスの解消に効果があるということですので、薬を飲むほどではないけれど・・・という方にはよいのかもしれません。ただし、類似品などもあるそうですので、必ず信用できるお店で購入することをお勧めします。 いずれにしても、体内へ取り入れる物というのは、私たちの心と体を作る元になるものです。もし芳香成分を体内に取り入れても、普段の食生活が悪ければその効果は期待できないかもしれません。またストレスが多いと汗の臭いも変わってくると言われていますので、そんな時は精神面をケアするほうがよいのかもしれません。 体内から良い香りを発すること、それは夢ではないかもしれませんが、やはりそれには自分の日常生活にも気を配ることが大切なのでしょう。 |
2007年10月号 |