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【第3回】 シンプルさゆえに難しい?
コアルーバッグのベルトの仕組みについては、今まで多くの方々に高く評価していただいてきたと思います。その評価の真ん中にあるのは、やはり一本の紐で多くの問題を解決したというところだと思います。

既存のショルダーバッグの見た目や使い方をそのまま残せる構造であること、マルチでありながら付替えたりしまったり出したりの面倒な作業が要らないということですね。そういったことで、たくさんの生活のイライラ〜例えば自転車に乗ると後ろからカバンがすとんすとんと落ちてしまう、電車では周りを気にしながら前に前にとリュックでもショルダーでも必死に抱える、いちいち下ろさないと中身が取り出せない、などなど〜が解消されます。

コアルーバッグがあればそのときそのときの「助かる!」という「共感」が得られるのです。たかがカバンだけれども誰かの役に立っているという自負心が作る側に沸いてきます。


しかし、カバンはベルトの魅力だけでは十分ではありません。消費者に選ばれるまでもう一つクリアしなければならない本体の問題があります。つまり良いデザイン、良い素材、良い作り、そしてさらにそれらに見合った値段設定ができていないといけません。

デザインのことを悩んでいると、幼稚園のお母さんから「うちの幼稚園にバッグデザイナーさんがいるの知ってる?」と声を掛けられました。帆布シリーズの多くをデザインしてもらった赤峰清香さんです。6月のNHK「すてきにハンドメイド」の講師を務めて著書本も出ているのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません

。彼女は天然素材が大好きで、紺色がまた大好きで、コアルーベルトに相応しいシンプルなデザインを好んでデザインしています。一見単純そうに見えるシンプルさに凝縮された美しさは、デザインのことに疎い自分でも強く惹かれる何かを感じることができました。


実は、コアルーベルトは構造デザイン的な位置づけをされるらしく、あ、自分もデザインをしたんだと、後から知りましたし、このシンプルなデザインを練り上げるのに、日本のおんぶ紐からインスピレーションを受けていたことも後から気がつきました。

着物を着る女性も身近には少ないのでドラマの中でしか見たことがないのですが、紐の先を口にくわえ、さささっと肩から背中に襷を回して結び、仕事モードに入る日本の女性の凛々しさには、私のような外国人の目からすると「美しさ」そのものです。そして長い帯紐をくるるっと回して子どもを上手におんぶする日本のおばあちゃんの姿を友人宅で拝見したとき、複雑な構造でありながら一つの役割しかこなせない様々な現代のグッズと対照的に見えて強く感銘を受けたものです。このシンプルさの魅力に自分はいつの間にか虜になっていたのです。



でも皮肉なことに、このシンプルさは一歩間違えると「単純」なために難しいということもあるんだなと、サンプル作りや製品作りを進めながら驚きました。

工場さんは必ずこのベルトの作りを2,3回間違えます。向きを反対にしたり捻じれたままの仕上がりになってしまうのです。既存のショルダーバッグやリュックの作りが頭にしっかり入っているからこそ、ちょっとした変化の効用を理解できなかったり作りを変えられなかったりするんですね。

そして清香さんのシンプルな曲線の再現が意外と難しいらしく、仕上がったサンプルをチェックしながら、二人で「違う・・・」と首を横に振ってしまったりすることも良くありました。職人さんとの付き合いも浅いのに、何度も何度も直しをお願いするのは、本当に申し訳ないなあと思いつつも、何度も何度も頭を下げてもう一回もう一回とお願いをしました。岡山の職人さん、本当によく付き合ってくださったと感謝しています。


もう一つ見逃せないのは、素材のシンプルさです。帆布の中でも多用したのは倉敷帆布という日本が世界に誇るものです。綿素材の平織りというシンプルな織り方を帆布というのですが、糸の太さや染め方によって実にたくさんの種類の布が生まれますし、水がかかるとぎゅっと目を縮めて中に水を通さない天然防水と呼ばれる機能が備わっているのです。中でも倉敷帆布の織り方は、精巧で綺麗! 使えば使うほど馴染んできて自分化しますし、汚れても穴が空いてもなぜかカッコよく見えるのだから不思議です。所々かすれたり色あせたりしても気にならないのが、人工の素材との違いでしょうか。

商品の自慢話ばかりになりましたが、身近なモノを単なる道具としてではなく、文化も作り手の思いも、常に創造していきたい、というコアルーの情熱を、まずは身近な方々にお伝えしたいと思います。よろしくお願いします。


*お知らせ*
コアルーバッグの多くのデザインを手がけてくれた バッグデザイナー赤峰清香さんが、先日、
NHKの「すてきにハンドメイド」 という番組の講師に出演し、
ワークショップを弊社主催で行うことになりました。
日時: 7月6日(土) 7月8日(月) 10時〜4時
会場: ニコハウスSolar Gallery吉祥寺
(コピス吉祥寺A館4F)
参加費: 5000円(材料込み)
詳細は、コアルー公式ブログをご覧ください。

コアルー公式サイト
http://www.coaroo.info/


2013年7月号

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