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【第10回】 負のエネルギーとの戦い
私は普段より何でもそつなくこなす「器用な人」と言われていますが、実は自分はどっちかというと容量の悪い人間だと思っています。学生の頃からテストの準備が苦手で、試験に出そうなところに山をかけて集中的に要領よくなんてことはできず、いつもの通りの勉強ばかり。まわりの情報に目を向けるよりは、興味のあるところや疑問が湧くところを深く掘り下げるほうでした。それでも何とか良い成績を収めたのはそれなりに真面目?だったから? いや、勉強がただ楽しかったからかも知れません。中にはあまり興味を持たない科目もあったりして、当然そういう科目はそれなりの成績しか出せず、けっして秀才と肩を並べることはなかったほうかも知れません。


それに比べて主人はというと、まるで反対の勉強の仕方をしてきたようで、深く考えたりしつこく探求するのは苦手らしく、コアルーバッグのアイデアについても興味が湧かなかったみたいで、出願当初から反対されました。そんなアイデアのどこに価値があるんだ?とか、今までとは違う畑で上手くいくわけがないとか、失敗するかもしれないとか、挙句は、一番苦しいときに「いい加減やめたら?」とか・・・。


その否定的な考え方はマーケットにおいても同じで、バイヤーの方からは説明がややこしい商品だねとか、伝えるのが難しい商品だからどうかねとか。日本という堅実で誠実な国柄もあってか、いや韓国も似たようなものかも知れませんが、新しいアイデアや新しいマーケットは大体そのような局面に出くわすのが宿命かも知れませんね。


そんな負のエネルギーとの戦いには、思った以上の時間を要しました。まず実績はあるの?の世界になるのです。初めてのものが実績などあるはずも無いのに、世間は実績を求めてその実績こそがもっとも信頼すべき情報だと考えるのです。人間はそのような負のエネルギーに大きく左右され日々気持ちが揺れるものですね。失敗するかもしれない、まったく消費者に理解してもらえないかもしれない、という強い不安に駆られ信念や確信を持てるようになるまで長い時間と経験を要するのです。いや、もともとあった確信さえもいつの間にかどこかに行ってしまったように、根底から揺れる日々が続いていました。


先日、最近話題になりつつある「ミドリムシ」の「ユーグレナ」という会社の社長のセミナーを聞いたことがあります。非常にユニークな方で面白い内容のセミナーで、腹を抱えて笑いを抑えられないぐらいの方でしたが、その方もまさにそのような経験をされたようです。売り込みに営業に行くと「実績は?」と言われ、「いや、御社が初めてです」と応えても、また「実績は?」と言われる日々で、なんと500社目でやっと「面白い、一緒にやりましょう」と言ってくれた会社さんに出会えたそうです。その方は理工系の方だったので、営業をこなすことで確率を高めていける、という理論を数式で説明してくれました。文系の私にはその数式はよく理解できませんでしたが、やはり営業というのは大変なんだなと思いました。発明品の開発を多く手がけたある先生のお話もこれに通じるようなもので、「アイデアは一瞬、生産は一日でもできるかも知れないが、営業は毎日のこと」とおっしゃるのです。


ある日ある有名なブロガーがブログに紹介した商品が口コミで広がり・・・とか、あるテレビ番組で紹介されてから火がついて・・・とか、まるで夢のような神話のような話をよく聞きますが、私は自分が今までやってきた中で思うに、その一言で収まるような現象を起こすまでには、氷山の下のとてつもなく大きな水面に浸かっている部分があっての話だとしか思えません。


しかしながら、頑張って周りを説得したり続けて発信をしていくうちに、少しずつ要領と確信は固まるものです。挫折や諦めはやれることを十分やってみてからで遅くないと思います。ただ、いくら良いアイテムでも広まるまでの時間は間違いなく長くかかるもの、ましてや経験もない個人が子育て片手に事業を起こしたなどの状況だと、その2倍も3倍も想定しなければならないのです。私は、発明家や開発者がよく間違えるように、自分のアイデアの可愛さゆえに、そこまでの長いタームで考えることをしていなかったし、反対する人の気持ちが理解できずもがいていたのでした。


負のエネルギーはまんざら悪いことばかりをしてくれるわけではないような気もします。なぜなら、最初から誰もが賛成して応援してくれるようなものだとしたら、最初のうちは上手くいくかも知れませんが、途中で何かに躓いても立ち直り方が分からなかったり、詰めの甘いまま進めて大きな壁にぶつかったり、「ほらね」みたいな気持ちばかりが大きくなって「感謝」の気持ちに欠けがちなのも人間の弱さゆえのことだと思います。

そして、負のエネルギーとの戦いの中で、人を憎んだり世の中を否定的に捉えておしまい、ということも良く陥りがちなパターンですが、人も時も移ろうということを忘れてはいけないと思うのです。実際自分の場合もそうですが、最初から反対をしていた主人も今では必要な助言や情報をくれたりしていますし、保留というあいまいな言葉を残していたバイヤーたちも「前向きに検討しましょう」とか「見積もりお願いします」とか言ってくれます。人はそれぞれ違う経験から現在地に至ったものですので、最初から自分と同じ気持ちや同じレベルの話ができるわけでは無い。だからこそ冷静に自分の気を強くもって努力することが大事かなと思います。


蛇足ですが、気を強く持つことと我が強いこととは、まったく違いますよね。他人の言葉に聞く耳は持ちながら自分の意志や勘を大事にしていくことが大事です。「勘」というと非常にあいまいな感じですが、実は「勘」というのは膨大なデータや忘れかけていた経験さえもすべて材料にして割り出した右脳の優れた賜物! これを大事にして、他人からではなく自分からの負のエネルギーともしっかり向き合う必要があると、時間が経つにつれ思えるようになりました。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

コアルー公式サイト
http://www.coaroo.info/


2014年3月号

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