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【第2回】 転機の鍵は、子ども、兄と父の死、自分の体力、東日本大震災
子どものこと、家族が亡くなったり、体力が落ちたり(笑)…誰にでも起きること。それがバタバタと続き、そこに東日本大震災という要素も加わり、どうやら先々の生き方を変えないといけないらしいと思うようになったのが、5〜6年前からのことである。いろいろなことを考えて出た結論が、テレビの仕事を辞めて「古本屋になろう」だった。


12年前、今で言う“妊活”のために、いったん離職。幸いにもほどなく子どもを授かることができたが、いろいろあって、すぐに復職はせず、子どもが幼稚園の年長になった年の10月、仕事を再開。久しぶりの現場復帰はやはりうれしかった。

その後、子どもは小学校にあがり、そして年があけて2月のこと。子どもが風邪→嘔吐下痢系→インフルエンザと立て続けに感染症にかかり、その月は半分も学校に行けなかった。

具合が悪くてぐったりしている子どもの横で、キリキリと仕事をしている自分。「うーん、これは…」とさすがに気になりつつも日々が過ぎていき、ようやく元気に登校できるようになった頃に――東日本大震災が起きた。


主人は宮城県の出身である。主人の実家も親戚の家も、被災はしたものの大きな困難はなく、あの大惨事のなか幸運なことだったと思う。しかし第二の故郷と言っても良いほど大好きになっていた東北の惨状は心に大きく突き刺さった。

そして実は、その2年前の夏に兄を亡くしていた。

前回のハハヂカラで、以前、兄が大病をして入院していた時のことを書いた。その時から10年以上たっていたので、再発ではないということだったが、舌ガンであることがわかり、そこからわずか7カ月で亡くなってしまったのである。

10数年前、病床で兄が“予見”したとおり、世の中はインターネットの時代になっていた。便利にはなったが、ネット社会への違和感もあった。ネットの存在が、テレビの制作現場をずいぶん変えてしまったことも感じていた。


そうは言いつつ、もともと好きな仕事である。兄が亡くなったあとも楽しく続けていたのだが、2月に子どもの病気、3月には東日本大震災があって、心の中はもやもや、もやもや。

そして同年7月末、兄の三回忌を無事に終えて安心したのか、三回忌の2週間後に父が脳梗塞で倒れ、意識が戻ることはなく、そのまま亡くなってしまったのである。


そこからが大変だった。父が亡くなったあとの諸々、兄に続いて父まで失ってしまった母の心のケア。仕事も休めない。家のこともある。そういう年齢なんだな。母はいずれ介護の必要も出てくるかもしれない。先々のことを考えざるを得なくなった。いろいろなことが頭の中をめぐり、この先、自分がどうしていきたいかを、ぐるぐる考え始めた。

そうして半年ちょっと考えて、出た結論が、「古本屋になろう」だった。


私の友人に「キッチンにいる時が一番幸せなの」という人がいる。料理をしたり、掃除をしたり、家のことをするのが大好きな彼女は専業主婦である。節約も上手。とても素敵な生き方だと思う。

…が、私には彼女のような生き方は無理(笑)。人にはできることとできないことがあって(…言い訳だけど)、私には“仕事もする”人生のほうが似合っていると思うのだ。

また、次の仕事を考えたとき、自分ひとりでやる仕事を考えた。大きい範囲でみれば、ひとりでできる仕事なんて無いのだが、最小単位は自分ひとりにしよう、と。そのほうが、時間を都合しやすいと考えたからだ。


で、なぜ、古本屋かと言えば、それまで、ライターの仕事では雑誌や書籍を作るほうの立場だった。テレビの仕事では、番組制作に必要な資料として膨大な量の本や雑誌、論文等を読んできた。過去の歴史をひもとかなければならない場合、都立中央図書館や国会図書館にこもって、古い本を積みあげて勉強した。

自分で商売を始めるということは、なまやさしい話ではないこともわかっていた。だとすれば、自分ができることは、前職で一番自分の身近にあって、私の仕事人生を支えてきてくれた「本」を扱う仕事、古本屋しか考えられなかった。

10数年前、病床の兄が「いつかハワイに移住して、アロハのネットショップでもやるかな」とつぶやいた時の会話も、頭の中にあった。当時は、まさか、自分がネットの古本屋をやることになるとは思わなかったけれど。


【プロフィール】
ママ猫の古本やさん
■イベントのご案内■
三省堂書店神保町本店「冬の古書市」に出店します。
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・1月23日(金)〜2月9日(月)
・場所:三省堂書店神保町本店8階特設会場にて
・営業時間:午前10時〜午後8時(最終日は6時閉場




2015年2月号

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