HOME>コラム>三鷹のハハヂカラ(母力)!>ネット古本屋が始まったチカラ!
昨年の春、古本市のチラシを置いていただくために、あるレストランを訪ねたときのこと。ちょうど、ママ猫の古本や開業から1年弱、古書市イベントなどにも出始め、一見、活発に動いているようで…心の中には、もやもやコンプレックスを抱えていた頃のことだ。 |
いったい何がコンプレックスかと言うと、本の仕入れ。 最初の頃はまだ良かった。古本屋を始めようと決めた頃、あちこちで「古本屋をやろうと思うんだ―」と話していた。友人に話すことで、必ず実行に移せるよう、自分で自分を追い込むため(笑)。そうしたら、何人かが「ちょうど絵本を整理しようと思っていたから、取りに来て〜。お金なんかいいよぉ〜」と言って、絵本をたくさん放出してくれたのである。 申し訳ないと思ったが、資金が少ないなか、本当にありがたく、「じゃあ、出世払いで(^^)」と、友だちの好意に甘えさせてもらうことにした。そして、絵本の仕入れにお金がかからなかった分で、古本市や古書店などを歩きまわり、猫に関する本などを買い集めることができた。 が、商売として続けていくには、どんどん本を仕入れていかなくてはならない。コラム3回目でも書いたが、開業するにあたり、古書店での修業をせず、ネット古書店開業セミナーを受講しただけで、始めてしまった。本当は古書組合に入るつもりでいたのだが、入会金や出資金など加入時に必要な金額がン十万円! 「なんだよ、なんだよ。高級料亭の一見さんお断りみたいなもんか? こんなにかかるなら、その分で本を買ったほうがいいじゃん」と、入会するのをやめてしまっていた。 では仕入れをどうするか。買取や、古書店開業セミナーを受講した会社のネットワーク内での入札でまかないたいところだが、実際にはこれだけでは足りない。古本市や古書店などを歩きまわって買わざるを得ない…。 |
冒頭の、レストランに古書市のチラシを持っていった頃は、この買い集めて歩く行為に、「こんなことでいいのかな」とまったく自信が持てず、もやもやしていた時期だった。「個人の古書店なんだから、自分の目を通したセレクトショップだと思えば、こうして1冊ずつ選んで買っていていいんだ」などと言い聞かせてはいたものの……。 この店には開店当初から通っていたこともあり、オーナーとも親しくさせてもらっていた。チラシを渡したとき、コンプレックスのことを話したわけではない。でも、「どう?」と聞かれ、「うーん、なかなか思うようにはいきませんが、まずは3年、できることはやってみようと思います」と答えたら、にっこり微笑まれて、「3年? いやいや、5年だね」と。 「小さな店がチェーン店と同じことをやっていたら太刀打ちできない。だとすれば、ママ猫さんが選んだ本はおもしろいね、ママ猫さんが薦める本なら買ってみようじゃないかと思ってもらえるようにならないとね。それには3年じゃまだまだ、5年かかる」と、優しい笑顔ながら、きっぱりと言い切られた。 「5年かかりますかー」「かかるね(笑)」 |
昨年、その店はオープン10周年を迎えていた。ていねいに作られた料理はとてもおいしいし、私の記憶では開店当初からにぎわっていたイメージがあるし、着実に1年1年を積み重ね、いわゆる成功事例、堂々たる10年だと思っていたら、悔しい思いをしたこともあれば、自分たちの信念を曲げなきゃいけないかと心が揺れたこともあると言う。 でも、曲げなかった。曲げてしまったら、存在価値がなくなってしまうと唇を噛みながらも、自分たちが提供したい場や料理といったものを守り、貫いてきたそうだ。 そして一言。「10年たって、これから本当に自分たちがやりたいことができる」 うーん、10年か。5年の倍になってしまった(笑)。 でも、前の仕事の時にどうだったかと振り返ってみたら、その業界での基盤づくりに3年、それが広がり、深くなって、信頼関係が築かれて、本当の意味で仕事がおもしろくなってくるのには10年かかったような気がするなぁ〜と気がついた。 一度、そうした経験を経たあとに古本屋を始めたので、ついつい結果を急ぎ過ぎていたのかもしれない。なんだ、まだまだこれからじゃん。そう思ったら、気が楽になり、コンプレックスも悪くないな、コンプレックスがあるから頑張れるっていうこともあるしね、と思い、今に至る。 |
もうすぐ開業から丸2年を迎えるのだが、この間には、他にもたくさんの方と出会い、関わってきた。その人が他の方を紹介してくださったり、一緒に何かをやらせていただいたりした。不思議なことに、迷ったり、もやもやしていると、そのことを話すわけでもないのに、たまたま、そのタイミングでお会いした方がヒントとなることを話してくださることがある。その言葉はすとんと私の心に落ちてきて、それを糧に、考え、進んでいくことができる。 自分だけで考えていると限界があるし、ひとりよがりになってしまう危険性もある。人と人のつながり、ご縁…本当にありがたく、幸運なことだなぁと思うのと同時に、人と話すことって大事!だと、しみじみと感じている今日この頃である。 |
■ママ猫の古本やさんからのお知らせ
ママ猫の古本やさん
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2015年5月号