ママとパパのリレーエッセイ
ー第8回ー
TADさん

ボーガコーシン

 私は海の近くで生まれ育った男なのですが、実は昔から海より山の方が好きでした。ですから、三鷹に住んでいる今は、手入れの行き届いた公園や森林に気軽に行けるので嬉しく思っています。
 武蔵野ならではの樹木いうとクヌギとかコナラとかカシ類。こうした木々が見られる井の頭公園や小金井公園に広がる雑木林は、自然そのままに育っているナチュラルな林だと思われる方もいるでしょうが、実はそうではないんですね。クヌギやコナラが20年から30年たつと切り倒します。その切り株から新たな芽が何本も芽生え、若木に育っていく。
 
これを"萌芽更新(ぼうがこうしん)"と言うのだそうです。雑木林が常に若々しく健康な姿でいられるように管理しているわけです。
 私は、家庭のなかで子供がだんだん育っていくのを見ていると、萌芽更新みたいだなと感じることがあります。何をするにも親の手を借りねばならない新生児。どんな人でも、ここがスタートですよね。それから、自分で立って好きなところへ歩けるようになって。言葉を覚え他人と意志疎通ができるようになって。個性がはっきりしてきて悩んだり迷ったりもするようになって。やがて親の身長を追い越すほどになって家から自立する…。親からいろんなものを吸収して大きくなっていきます。  

 子供が親をはじめ家庭や学校や同じ生活圏に住む人々などからいろいろな影響を受けて育っていく様子は、雑木林のなかで若い芽が日光や水分や養分を吸収して幹を大きくし枝葉をひろげていくのと似ているように思えます。
           
ところで、私の家は娘2人ですが、次女が知的障害者です。7歳までまったくコトバを話さなかったのですが、小学校に入って半年ほどした頃からぽつりぽつりと単語が出るようになりました。まずはやっぱり、パン!とかママ!とかですね。まるで小さな若木の枝から1枚また1枚と葉が広がっていくみたいに、ちっちゃな口から1つまた1つと新しいコトバが出てくるのでした。私は「ああ、言葉だものなあ。コミュニケーションの葉っぱみたいなもんだなぁ」と思ったものです。
 

 さて最後に、日帰りで行けて気持ちが和む雑木林をご紹介します。井の頭公園なら御殿山エリアのイヌシデ・コナラ・クヌギの林。小金井公園なら小平口のバードサンクチュアリの林、「となりのトトロ」のモデルになった森の1つとして知られる東村山の八国山緑地、八王子にある都立小宮公園の雑木林ホールなどなど。アップダウンの多い山歩きよりずっとラクなので、小さな子供連れでも大丈夫です。テーマパークみたいな派手さはありませんが、たまに雑木林を歩くのもいいですよ。
 


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