ママとパパのリレーエッセイ
ー第16回ー
へちょこさん

 はじめまして。「へちょこ」と申します。
  皆さんの中にも、この春、ご自分またはご家族が新しい環境に入った方がいらっしゃることと思います。我が家の長男も、ぴっかぴかの小学1年生になりました。親子ともに初めての学校生活にとまどいながらも、毎日楽しそうに通っている姿を見て、子育てのステージが一つ上がったことを実感しています。
 学校というのは苗字で呼ぶところなんですね。自分の頃もそうだったのでしょうが、何だか新鮮なものを感じます。幼稚園ではもっぱらニックネームか名前に「くん」「ちゃん」をつけて呼ぶものでしたから。家庭訪問にいらした先生が息子を呼ぶのを聞いて、「ほほぉ…学校教育の場に入ったのねぇ…」と、しみじみしてしまいました。 
  そういえば4年近く前、長男の幼稚園を決めるために見学に行き、幼稚園の子供たちが上履きをはいているのを見たときにも、やはり「ほほぉ…」と感じました。家庭ではもちろん、すくすく広場などの遊び場でも裸足が基本ですよね。保育園も裸足ですし、文科省と厚労省の管轄の違いというか、「教育」と「養育」という位置づけの違いを象徴しているような気がしたものです。あっという間に見慣れてしまいましたが。
 ともあれ、こうして子供たちは日々成長し、やがて親の手を離れていくのですね。言われ慣れていることではありますが、「大好き!」とくっついてきてくれるのは、あとわずかな期間しかないのでしょう。私もそれまでに「自分の世界」をきちんと作っておかなければ! …少しあせり始めています。 
 話は変わりますが、私は、中学生の通信講座の添削指導員をしています。担当は1年生の作文です。初めは、自分の子供がまだ小さいこともあり、「中学生」というものに過度の期待を寄せてしまっていて、「こんなことしか書けないのぉ?!」と頭を抱えていました。が、最近では、「こんなことしか書けないのが普通なんだ」ということを悟り、「提出できて偉いっ!よしよし、いーのよ、少しずつ身につけていけば。」という大きな心で答案と向かい合うことができるようになりました。ちなみに、自分の子供にもこういう気持ちで接しないといけないんだということもわかりましたが、それはまた別の課題ですね。反省。
 それはともかく、答案を見ていて気になることがあります。それは、子供たちの書いてくる「字」です。薄い字、小さい字、なんとも元気のない字が多いのです。
 我が家の長男は前述のように1年生で、毎日2つほどの文字を習って帰ってきます。また、幼稚園の年長さんの次男はちょうど「字」に興味を持ち始めたところで、お兄ちゃんに対抗して、目下ひらがなの練習中です。ふたりは、マス目一杯に力強く字を書きます。はみ出しそうな勢いの、生き生きとした、字を書く喜びにあふれている字です。
 きっと、あの中学生たちも、このころは同じように元気な字を書いていたことでしょう。6年の間に大変なことや辛いことがあったのかしら、それとも今何かを悩んでいるのかしら、とつい気を回してしまいます。妙にちんまりとまとまっている内容の作文だったりすると、「点数なんて気にしないで、思ったことを書いたらいいのよ!」と無責任に思ってしまったりもします。「本当に思ったことをのびのび書いている作文」に得点をあげられなくて、ジレンマを感じることもしばしばですが。
 
 私も含めて多くの親たちは、つい、自分の子供の年齢に該当する問題にばかり目がいきがちですが、自分の子供もヨソの子供も、みんなニコニコしながら育っていける環境を作るのが、「親」というよりも「オトナ」としての義務ですよね。目の前の子育てにジタバタする時期をやっと乗り越えかけてきた今、視野を広げていく必要があるのだと強く感じます。ゆとり教育の問題や、子供が巻き込まれる事件などに関しても、「今まさに直面している当事者」以外の視点も大切なのではないでしょうか。

 

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