「食べたいならお店でたくさん買ってこようか?」
「ひっこは、この苺が食べたいから。赤くなるのを待ってる。」
そうして、病中病後を家で過ごす間、ひっこはうきうきと苺を眺めながら、赤くなるのを楽しみに過ごしました。
苺の苗は2鉢だけ。赤くなるのはゆっくり、1粒づつ。もういいかな?まだ青いかな?葛藤しながら熟すのを待って、踏ん切りがついたらむしって食べる。
「あー、すごくおいしいっ!」 |
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ひっこは頑固で根気強い。私とはぜんぜん違う。
「よかったねー」
やっと熟した苺を、「半分食べる?」と差し出してくる。
ひっこは気前がいい。私とは全然違う。
「いいよー、ひっこが食べなよ」
あんまり嬉しそうなので。あんまり楽しみにしてるので。もうすぐ苺が花だけになりそうなので。追加で苺の苗を2鉢買ってきました。 |
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ひっこ曰く、
「もういらない。今度はサミットで”あまおう”買ってね。」
あれ?なんかやっちゃった?どこで失敗したかな。でも、苺は2鉢だけでよかったらしい。苺、いっぱい収穫できたら嬉しいのにな。あと、2鉢あったら、しばらくなくならないじゃん。
やっぱり、ひっこは私とは全然違うなぁ。
ひっこと生活していると、時々、”育児”してる事を忘れます。
私自身がひどくわがままでマイペースなので、ひっこの存在が、気兼ねない同居人みたいに感じられたりするのです。 |
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なので、生活に支障がない事だと、対して問題にしなくなったり無関心になったりする事があるのです。いや、もちろん、無意識なんですけど。でも、それって、ひっこがまだ子供だという事を忘れそうになる事でもあるのです。子供アイデンティティーをむやみに踏みにじった?かもしれない。
苺の失敗の原因を色々考えてみた。
1.食欲がでたので、苺をたくさん食べたくなった。なので、すぐに食べられない苗はいらない。
2.苗の見てくれが気にくわなかった。おいしそうな実がならなそうとか? |
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3.特に理由はない。・・・・。
何せ、4歳なので、細かい理由を聞いても要領をえない場合が多い。っていうか、理由があるのかも定かじゃないよね。と怠け者の私はすぐに思ってしまう。色々考えても、憶測だし推測だし、何が正解かはわからないんだけど。
ひっこがもりもりと、”あまおう”苺を食べてる時に言ってみた。
「えーと、この2鉢は、”私の苺”って事でいい?ひっこは食べちゃだめだよ。いいかな?」 |
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「いいよー」
ひっこあっさり了承。なんだよー。食べたいって言ってもほんとに絶対あげないからね!私の苺なんだから。
鉢の中の1番大きな苺にねらいを決めて、赤くなったらすぐに食べるぞと決意する。苺はなかなか熟さない。ビニールかけたら早まるかな?と、試行錯誤する。色はまずまずだけど、触ってみるとちょっと固い。つまんでみると裏側が白っぽい。まだまだまだまだ。早く早く早く。今日こそ食べるぞ。 |
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「あー、すごくおいしいっ!」
私の苺、最高。
「よかったねー」
苺ミルキーを食べながらひっこが言う。
「ひっこも食べる?ちょっとだけあげようか?」
もったいないけど、特別に分けてあげるよ。
「いいよー、お口にミルキー入ってるしー」
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ちょっとつまんないけど、いらないならいいや。自分で食べるし。私の苺だし。次に赤くなりそうなのはどれかな?鉢をのぞき込んでる私の横にひっこがよってきて、同じように鉢をのぞく。
「ひっこの苺ももうすぐ赤くなるのあるね。赤くなったらひっこのもあげようか?」
「ちょうだいちょうだい!私の苺も赤くなったらひっこにあげるから。交換こしよう。」
ひっこの苺の方がおいしいけどねー、とひっこは減らず口をたたきまくった。
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ひっこの苺を絶賛する口が止まらない。うるさい。負けずに、なんか苺がおいしいって幸せだよねぇ〜とか適当なことをぼそぼそしゃべってたら、
「”幸せ”って何?」と子供の定番みたいに聞いてきた。
めんどくさかったので、それは形而上学的な問題でぇ〜とか難しそうな言葉を言ってごまかしたら黙った。黙ってミルキーを食べた。
それは今日の事ですが、晩ご飯を何にするか悩んでいました。
「お鍋にしたいんだけどさ、鍋っていうとパパがすんごくいやがるんだよねー」 |
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野菜はいっぱいとれるし、おいしいし、栄養あるし、材料は切るだけだし、後かたづけは楽だし、冬は暖房いらずだし、最高じゃんねー。週1くらいならいいじゃんね。毎日お鍋でもいいよねー。なんでパパは嫌がるんだろうねー?わっかんないわー。
ひっこは、うーん、とうなって
「形而上学的(けーじじょーがくてき)な問題なんじゃない?」
と言いました。
ひっことの生活は、めんどくさいけど、すごく楽しいです。 |
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