夢を手放したことに対する後悔は、不思議なことに全くなかった。
妊娠中は今思い返しても、人生の中で最も幸福な時間が流れていた。自分の役割、目的は、実にはっきりしている。迷いは一切ない。妊娠するまでは、数ヶ月に一度休みがとれるかどうかの状況だったが、堂々と、休むことができる。揺るぎない安心感と安定感の中にあった。
オムツから産着、お宮参りのときに着るベビードレス、帽子、おくるみ、よだれかけ・・・今まで針と糸を持ったことがなかった私が、やがて産まれてくる子どものために、せっせと手縫いで作り始めた。
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産まれてからは、一日中息子に話しかけ、ベビーカーを押しているときが一番幸福に感じる女に豹変した。
子育ては、驚きと発見と自分自身との闘いで、もう投げ出したくなるほど疲れるのだが、それでも面白い。私自身が、忘れていた赤ん坊のときからの人生を生き直しているような、そんな気がするのだ。仕事を持ちながら、喘息の持病がある二人の子どもの5回の入院を乗り切るのは、決して楽ではなかったが、予期せぬ事態に強いのか、元来のマゾ的性格が幸いしたのか、いろいろひっくるめても子育ては面白いと心底思う。
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