もうすぐ長女が四歳になろうとする六月の夕方。長女と手をつなぎ、ベビースリングから顔と手をのぞかせた次女を首からぶら下げて、コンビニから歩いて帰る道すがら。車が通らない道に入り、ビーチサンダルで先を走る長女。「こけるから気をつけろ」とひと声。聞かない娘。しばらくして「どたんっ」、大きな音とともに、「わー」というそれよりさらに大きな泣き声。「ほら、言わんこっちゃない」と、別に驚きもせず、長女を起こして抱きかかえる。「いたいのいたいの、とんでゆけー」、まだ泣き止まぬ娘にかまわず、そのまま手をつないで歩き出す。 このなにげない日常が、とても幸せなことだと思う。
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子が生まれると親となる。というよりは、自動的にならされると言った方がいい。出産立ち会い。新しいいのちを抱いた瞬間。まだよく見えない目で、抱かれている先を見つめる我が子を見つめ返す。この瞬間、親となったという実感より、何ともいえない不思議な気持ちになったことを憶えている。
自分が子を授かってはじめて分かる。わたしの両親も最初から親ではなかったということを。子からすると、親は最初から親の顔をしていて、何でもできる存在に思うかもしれないが、実際は決してそうではないということも知る。分からないことだらけだ。 |
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