ママとパパのリレーエッセイ
ー第80回ー
C-Cafe菊地さん


現在子供もいない、仕事でもあまり子供との関わり合いもない僕がここに書くとなると自分の少年時代のことになってしまう。
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僕の家は色々と周りとは違っていた。

中学生まで家にはテレビがなく、そのためテレビゲームというものに全く縁がなかった。

しかし友達と遊ぶとなると、週の何日かは友達の家でテレビゲームをするという日があった。もちろんそこでは一緒にやってもいても勝つことはできないし、続かない。そのせいでテレビゲームが全く面白く感じられなかった。
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しかしある日たまたま友達の家が使えなく、僕の家にゲーム機を持ち込んでやることとなった。

その日からしばらくの間そのゲーム機は僕の家に置かれることとなった。それと同時に僕の生活はゲームを中心に回り始めた。

朝は5時頃に起き、学校に行くギリギリまでゲームをやり、放課後は友達と家でゲームをやり、夜は親が寝るまでゲームに没頭した。
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この日々は寝る時間もご飯を食べる時間も煩わしく感じ、ご飯を食べる時にはゲームの電源を落とさずに一時停止したまま数分でご飯を流し込むという感じだった。

朝も起きた瞬間に布団から飛び出しコントローラーを握った。とにかく上手く、強くなりたかった。

すると1週間後には敵なしの状態になっていた。1週間前は相手に片手でやられてしまうような少年が目を閉じて相手を倒していた。
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私は後にも先にもこの数週間の様に寝食を忘れるほど何かに没頭し、短期間であれほど上達したことはない。

ある対象に対してあの時私が味わった感覚を大人になるまで継続することができたら歴史に残る何かを残せたのかもしれない。

自分がやっていることに無条件に没頭し、技術や、感覚が磨き上がっていく。そんな少年の頃に味わった感覚をこれから先私は味わうことができるのか。
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やる気とか、地位とか、給料とか、評価とかそういうものではなく、無条件の中にある自分の心が歓喜するものに出会うことはできるのだろうか。

今回これを書かせて頂いたことにより懐かし感覚に再会できたことに感謝して締めさせていただきたいと思います。


御精読ありがとうございました。

C-Cafe菊地
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2009年10月号