ママとパパのリレーエッセイ
ー第88回ー
たまぽんさん

この4月に1歳の長女マナがめでたく保育園に入所した。
慣らし保育1日目、お迎えに飛んで行くと母の不安をよそに、わが娘は保育士さんにあやされながら、いつもの癒し系えびす顔でいた。
クラスの他の子(ほとんど男の子)は「ギャアアアー(訳:おっぱいぃぃ〜〜〜)」と
張りさけんばかりに泣いているのに。
保育士さんに言われた。
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「マナちゃんはねぇ、空気を読んでるんですよねぇ。他の子が泣いてるから、泣いちゃいけないって」。
確かに、マナは生まれて間もない頃から、空気を読んでいた気がする。
兄・ムーが叱られて泣いて、手がつけられない状態になるとピタリと泣き止んだりしていた。
しかも、最近では着替えやオムツ替えの時、声かけすると協力的なそぶり?を見せたりする。
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一方、その兄、3歳のムーは全く逆で「空気が読めない」。
「早くごはん食べなさい!」「手洗いした?!」「ホラ、早くパジャマ着て!!!(怒)」
と毎日、毎日同じことを言われてもなかなかやれず、ボーっとして、宇宙のどこかと交信しているようなときもある。仕舞いには「いいかげんにやらないと、どうなるかわかってるの!!!!!!」と、どやされる始末。
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この違いはなんなのか?

一般的に、「女の子は育てやすい」「二番目は育てやすい」と言われるが、
果たしてそれだけ?と思っていたときに、『男の子の脳を伸ばすのはどんな親?(著:篠原菊紀)』という本が目に入ってきた。
その本によると、男と女の脳で差があるのは左脳と右脳の間にある脳梁の部分だと言われるており、この部分が太い女のほうがコミュニケーション能力が高いという説があるらしい。
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また、女の子ほうが左右の脳をバランスよく使う傾向があり、男の子は使わない脳の部分は沈静化し、偏った脳の使い方になりやすい、とのことだった。

だから男の子は何かをしだすと、のめり込む傾向があるらしい。
遊びに熱中しすぎて、どんなに大きい私の声さえ、耳に入っていない(というか無視している)ということが日常茶飯事であることの理由がわかった。そうか、それは、脳のせいなんだと。
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それをダンナに話したら、ダンナも新聞を見ながら生返事。

「聞いてないでしょ!」と問い詰めると、「あぁ、ごめんごめん」と悪びれるでもなく、そのまま新聞に目を向けたまま。そう、これも脳のせい、脳のせい・・・・・・と呪文のように唱えてみたが、そう簡単に片付けていいのか?
それじゃあ、まるでどろぼうが警察につかまっても、どろぼうだから仕方ないじゃんと言い訳しているのと同じ(?)じゃないか!
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しかし、前述の本によると、訓練次第で「空気が読める」ようになるらしい。
それは、ガミガミいうのではなく、声を発せずに子供とコミュニケーションをとることで、何をいいたいか想像させる方法。いわばジェスチャーゲームみたいなものだ。

そこで、早速お風呂上りに、いつもどおり裸踊りをして、なかなかパジャマを着ない息子に、口をキュッと真一文字に結び、指で「パジャマを着なさい」とジェスチャーでしてみた。
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これに息子は一瞬「?」顔になったが、そのあとすぐに「ママも、へんな踊りしてるみたい〜♪」と、再び踊り始めた。
が、負けずに何回もジェスチャーで指示してみたが、全然伝わらない。
悄然とした私は「もういいかげんに、パジャマ着ろ!少しは空気読め!!」といって思わず息子にゲンコツを食らわしていた。
すると、息子は泣きながら、空気をつかもうとして椅子に駆け上がり、一言。
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「ママ〜〜、空気ってどうやって読めばいいのぉ・・・・・・」

その姿を見て、私は泣き笑いしそうになった。

空気が読めなくても、まぁ、いっか。
息子のたくましい想像の世界を大切にするのも悪くない、と思った出来事だった。
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2010年6月号