ママとパパのリレーエッセイ
ー第107回ー
山猫アキコさん

こんにちは。山猫アキコと申します。下連雀6丁目でカメラマンの夫と「山猫写真館」という写真館をやっております。現在1歳3ヶ月の娘がいます。三鷹市には昨年11月に引っ越してきまして、写真館は今年の3月にオープンしました。出産、子育て、引っ越し、お店のオープンと新しいことが重なって、この一年はとても忙しい日々を送ってきました。ふぅふぅ息切れしてしまうこともしばしばですが、家族やご近所の皆さん、そして娘の笑顔に支えられ、なんとか毎日を頑張って過ごしています。
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ところでみなさんは個人経営の、街の写真館にどういったイメージを持っていますか?
なんとなく古めかしい色調のモヤモヤ〜としたバックに、緊張した面持ちで並ぶ家族…。そんな昭和のムードを感じさせる家族写真、それはそれで味があってアリだと思います!
うちの実家にもいくつかそんな写真があります。

が…、それってみなさんの普段生活している姿からはかけ離れていないでしょうか?
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山猫写真館ではみなさんの持っている普段の素敵な表情や、家族の関係が浮かび上がってくるようなお写真を撮りたいと思っています。そのためにお客様は一日三組まで、じっくり時間をかけてお写真を撮らせていただきます。はじめは緊張しているお客様も、徐々にリラックスして生き生きとした表情を見せてくれたときが、山猫店主と私のなによりの喜びです。
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私自身、子供を持ってみて思うのは、この小さくて大切な存在の、今の姿を特別な形で残しておきたい、できれは最高の状態で…!ということです。そんな気持ちを持って山猫写真館を訪ねてくださったお客様にお応えしたく、勉強の毎日です。

山猫写真館ではこれまで赤ちゃんから100歳のおじいさんまで、いろんな世代の方をお撮りしてきました。その中でも最も「いろんなことが起こる」撮影は、2歳から6歳くらいまでのお子さんの撮影だと思います。
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じ〜っと固まってお母さんとしかお話しない子、写真館内をず〜っと走り回っている兄弟、いわゆる「イヤイヤ期」真っ最中の子、何があったのか入店のときにすでに大泣きしている子…お父さん、お母さんも途方に暮れてしまっているような時もしばしばあります。しかし、どんなお子さんが来ようとも、絶対に最高の一枚を残すのが我々、山猫写真館の使命です!

「うちの子、いつも写真に写るとき悲しそうな顔なんです〜」
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「兄弟のどちらかが動き回っていて、まともに全員が写っている写真がないんです〜」

といったお母さんの声もよく聞きます。そんなお子さんの最高にかわいらしい姿を残してあげたい!日々、汗をかきながら、撮影に挑んでいます。

たくさんのお子さんと接してきて思うのは、どの子もそのときの気持ちにしたがって素直にその状態を表している、ということです。
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なんだか知らない人がいて緊張する…、大きな明かりがある…、あそこにあるおもちゃで遊びたい、おなかがすいてきた、衣装がきつい…。うちの娘も人見知りをする方なので、心を閉ざしているお子さんには、いきなり歩み寄らない方がいいということはなんとなくわかります。そんなお子さんにはゆっくり、静かに歩み寄って徐々に心を開いてもらう工夫をするようになりました。
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また、とにかく動きまわってカメラの前に立っていられない子に落ち着いてもらう工夫、方向感覚がないお子さんにポーズをとってもらう方法なども、経験上生まれてきました。
時にはお父さんお母さんにもお手伝いいただいて、その子らしいかわいらしい表情やポーズが、自然に表れてきたときには、私たちも自分の子を見ているような幸せな気持ちになります。
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これらはもともとお子さん相手の撮影マニュアルがあったわけでなく、山猫店主とわたしの独自の経験から生み出してきたものなので、どなたがやってもうまくいくとは限らないですし(かなり、独特、だと思います…)、わたしたちにしてみてもこうすれば絶対!というものでもありません。ただ、ああでもないこうでもないと現場で考えて産み出されたということに大きな価値があるような気がしています。
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思えば35歳で出産するまでかなり気ままに自由な暮らしをしていました。女の子ひとり育てるだけでこんなに大変なのかと、娘の月齢が低いころは毎日一緒に泣いていました。子育てをはじめたことで、今までに感じたことのない苦労や辛さを知りましたが、同時に緩やかに多くの人と思いやりを持ちあえることも知りました。今、わたしが写真館の仕事に一所懸命取り組めるのは、やはり娘の存在が大きいと思います。
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娘がいることによって、たくさんの家族のみなさんと繋がりあえていると思うのです。忙しい時には娘をどこに預けようかてんてこ舞いになってしまうのですが、それでもわたしたちの写真館は、娘の存在なしでは成立していないでしょう。彼女がお店にいない時もありますが、それでも「看板娘」として、わたしたちの心の中のエンジンになっているのです。
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最後に、ひとつお知らせを…。山猫写真館では毎月絵本の読み聞かせの会を開いています。娘が9ヶ月の時からはじめたのですが、そのせいか彼女は今、絵本大好きな子に育っています。写真を撮る予定がなくても気軽に遊びに来られる場所を目指していますので、みなさんどうぞお出かけくださいね。
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