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ママとパパのリレーエッセイ
ー第121回ー
大門由起子さん

「子育てというフィールドワーク」
 
子どもがいると、なかなか映画を観に行けない。夫婦で行くのには、だれかの助けがいる。今は、DVDという手があるかもしれないが、ビデオもなかったあの頃…

 結婚する前、付き合っていたころに「スターウォーズ」公開。二人で観に行って、オープニングで素直に大興奮。
 
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次の「帝国の逆襲」のときは結婚する直前で、当然一緒に観に行って、ハリソン・フォードが凍ったままで終わってびっくり。次はまだか?と待っているうちに、結婚して子どもが生まれ、その子がつたい歩きを始めたころ、やっと「ジェダイの復讐」(ジェダイの帰還)公開だった。
 これは当然観にいかなくちゃ!しかし、二人いっしょはちょっと無理。というわけで、まず夫が観に行って、バトンタッチして次が私、という体制。 
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 まだかなまだかな?と家で待っていると、やっと帰ってきた夫が、「うちの子みたいなのがいっぱい出てきたよ」と一言。

「え、子ども?」
「観ればわかるから」

 と観に行って、納得した。帝国の基地がある星に住む、ジェダイとともに投石などの原始的な作戦で戦う、毛むくじゃらの種族。 
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小さくてむくむくしていて、わけのわからない言葉をもごもごしゃべり、何かしらの意図を持ってごそごそ動いて、コロッと倒れる、倒れても這ってのしかかってくる、これはうちにいる!
その時は、種族の名前はわからなかったのだけど、イウォーク族というらしい。そう、種族が違うということか。しかも尊重せねばならぬルールや価値観があるらしく、物事を先にすすめるには、交渉技術、演技、そして想像力という、高度な外交力が必要となる。
 
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せめて、相手の言うことが解るようになれば、と思っていたけれど、この種族、こちらと同じ言葉をしゃべるようになれば、ますます紛争の火種が増える。そう、ますます腹が立つ。そこを押さえると奥歯がすり減る。

とまあ、親としての義務感、プレッシャーをひとまず脇におき、外交力を試されるゲームと思うことができれば、子育てもそこそこ楽しい、と思うしかない。
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ただ、このイォーク族、ちょっとしたことで倒れてしまう、弱い種族なので、注意も必要なのがつらいところだ。 

その後、第2子が生まれ、その子が夜中にもぞもぞと這い始めたとき、私たちは、ナウシカのオーム(王蟲)が来た、と思ったのだった。

今度は虫かよ!
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