第17回 舌は健康のバロメーター


舌は全身の鏡
 例えば、風邪を引いて病院に行くと、「はい、舌を出して下さい。」と、まずは舌を診察することからはじめることがあります。 

 これにはちゃんとした理由があります。

 舌そのものの異常や病気がある場合もありますが、舌は「全身の鏡」とも言われ、健康状態が反映されやすい場所だからです。

 健康な舌は、形が萎縮したり腫れたりしない適度な大きさと厚みで、適度に潤い、表面は薄い赤色を呈し、うっすらと白い苔(舌苔:ぜったい)に覆われています。しかし、健康状態の変化に伴いその外観や色調が変化して異常を認めることがあります。

 まずは、健康な舌の状態を知り、毎日舌をチェックしてみましょう。


舌の構造と色
 舌は横紋筋という種類の筋肉でできており、粘膜で覆われています。その表面は糸状乳頭(しじょうにゅうとう)、葉状乳頭(ようじょうにゅうとう)、茸状乳頭(じじょうにゅうとう)、有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう)という4つの舌乳頭とよばれる突起が存在します。そして糸状乳頭以外の乳頭には、味を感じる細胞である味蕾(みらい)が存在します。
     
 舌の背面の中央には一面に淡い白色の細い糸状の小突起である糸状乳頭が存在し、所々に点々と赤色の茸状乳頭、葉状乳頭があり、舌の付け根の近いところに逆V字型に有郭乳頭が並んでいます。時々有郭乳頭を舌癌ではないかと心配されて来院される方がいますが、誰にでもある正常な組織です。

 舌は血管が豊富で粘膜に覆われているため、舌そのものの色は血液の色によって左右されます。
正常な場合は薄い赤色を呈し、貧血の場合は白く、逆に濃縮されている場合は深い紅色となります。
また、舌苔の程度や舌乳頭の状態によって表面上の色が変化します。


舌苔(ぜったい)
 舌の表面の粘膜上皮は食べ物が接触したり、歯と触れ合ったり、談話などによって剥がれます。粘膜から剥がれた上皮に、細菌や食べカスなどが糸状乳頭に絡み付いて舌苔となっています。

 舌苔は、疲れている時や代謝が悪い時などに厚くなったりします。過剰なものは口臭の原因になります。また、逆に舌苔がまったくないツルツルとした状態も健康ではありません。ビタミンやミネラル不足など、栄養状態が悪い場合などから舌乳頭が萎縮(いしゅく)した状態です。


舌の変化

苺舌
川崎病や、溶連菌感染症などによりイチゴのように舌が赤くなり、粒々ができます。特に溶連菌感染症場合は放置していると、急性糸球体腎炎などの合併症を併発する恐れもあるので専門医を受診しましょう。

地図状舌
糸状乳頭の萎縮や消失した赤色の部分と正常な粘膜とが混在するために、地図のような模様が出来ます。日によって地図様の模様の位置や形が変化し、数週間から数ヶ月で消失する場合もありますが、長い間続くこともあります。また出たり消えたりを繰り返すこともあります。原因は不明ですが、特に心配する事はなく、時に痛みやしみるといったことがありますが、見た目上のこと以外には特に治療の必要はありません。

溝状舌
舌背表面に多数の溝がみられます。溝状舌の原因も不明ですが、遺伝性があると言われています。
自覚症状はなく、味覚も障害されないことが多いです。しかし、溝が深い場合に不潔になりやすく、二次的に炎症を起こして痛みや軽度の味覚障害を訴えることがありますが、それ以外は治療の必要はありません。

平滑舌
ビタミン不足や鉄欠乏性貧血などの原因によって、舌の表面の舌乳頭が萎縮してしまい舌の表面全体がつるつるになって赤くなる状態になります。舌全体がひりひりしたり、刺激物を食べると舌にしみて疼痛を伴います。原因となっている状態の改善と舌の炎症が悪くならないようにするために処置が必要です。

この他にも専門的には見るポイントはまだまだたくさんありますが、気になる場合はまず専門医の診察を受けましょう。


まずは普段からのチェック!
 体の状態は日々変化するものです。それと同時に舌の状態も日々変化しています。毎日診ていると、身体の調子によって舌の状態が変化していることが判ります。

 まずは子供の舌を観察してみて下さい。子供の体調を管理する意味でも、子供の舌を診るということを日課にされると良いでしょう。健康な状態を保つために、毎日舌をチェックしてみてください。
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2006年12月号