出席レポート
2010年3月7日(日)、三鷹市立第四小学校視聴覚室で開催されたNPO法人文化学習協同ネットワークさん主催の教育講演会にうかがいました。 |
講師は、教育ジャーナリストであり、安倍内閣時の教育再生会議の委員もなさった品川裕香氏。 本題に入る前に、「心理学・医学的なアプローチとは全く違うものです」とすごく強調されていたのですが、お話をうかがって、強調されていた意図がよくわかりました。 研究だけでなく、子どもたちにたくさん取材された中からのお話は、胸にズシンと響きました。 皆さんは「特別支援教育」という言葉から何を思い浮かべますか。 「特別支援教育」は、「クラスにいる気になる子のなかから発達障がい児を見つけ出し、その子を取りだして、その子に応じた支援・指導をすること(配布資料より抜粋)」と思いませんか。 正直、私もそう言われたら、「そうだと思います」ときっと答えます。 でも、それは完全には正しくないのだそうです。 特別な子どもだけに特別な支援をするのではなく、全ての子どもに一人ひとりに応じた配慮と支援というものが、根底になければならないのです。 |
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さて、 ハリウッドスターのトム・クルーズや、ヴァージングループの会長リチャード・ブランソンなどは、ディスレクシアという障がいを持っています。 品川先生は、彼らを例に挙げ、「彼らを障がい者だと思いますか」と聞きました。 みなさんはどう答えますか? 会場で、「障がい者である」と答えた人は一人もいませんでした。 そして、その理由については(様々でしたが)、「障がいではなく個性ではないか」という意見、「社会参加ができているから」という意見が多かったです。 ですが、品川先生は、きっぱりと「これは障がいです」とおっしゃいました。 「個性」というような言葉を使うならば、「個性」ではなく「特性」であり、「個性だからいいんだよ」として取り扱うものではないと。 |
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LDやADHDなど、発達に課題がある子どもたちも、本人たちは、「ちゃんとできたほうがいい。できるようになりたい」と思っているのだ、という先生の言葉には、目が覚める思いでした。 ついつい、「しょうがないよね!」とか、「できないものは無理しなくてもいい」と普通に思っていましたから・・・。 発達に課題がある子どもたちが持つ特性(機能不全)は、それに応じた教育や指導を受けることで、機能障害化せず、社会参加ができるのであるから、居心地のいい状態(普通学級では、いじめられたり、孤立化もしがちだけれでも特別支援学級ではそれがない)をつくるだけでなく、子どもたちの力をあげ、社会にソフトランディングできるようにしてあげなければならないということでした。 だって、社会は優しくないのですものね! 学校を出てしまったら、大人になってしまったら、そこで自分の力で生きていかなければならないのですものね・・・。 |
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支援(指導)する側は、発達的な課題からの視点に立ち、それぞれの特性を見極め(なぜできないのか?視覚の問題なのか?聴覚の問題なのか?認知特性に偏りは?記憶は?情報処理は?)、それに見合った対応をすることが肝要であり、また、子どもたちについては、特性に応じた基礎学習をするとともに、メタ認知(ごくラフに言うと、自分を一次元上から見ること)能力をあげる、つまり、自分がどうなったらどうなる、そうなったらどうする、ということを学習していくということが将来の社会参加を見据えたうえで大切なのだそうです。 | |
そして、もっとも大切(たぶん(^_^;))なのが、 それらは、障がいのあるなしにかかわらず、全ての子どもにとって同じであるということです。 不適応を起こすのは、発達的な課題のある子だけではありません。 また、不適応を起こさないまでも、それぞれの子どもはそれぞれにいろいろなものを抱えているでしょう。 家庭の事情や、生育の問題・・・・大人の側が「発達的な課題からの視点」を持ってみると、様々なことが見えてくるはずですよね。一人ひとりの子どもたちがそういった中で自分の力をつけていく、それが本当の「みんなちがってみんないい」! また、LDの子どもたちには、授業の配慮は現在もあるけれどテストは同じであること(=悪い結果が残る)を例に挙げ、授業中に配慮をするだけではなく、テストの時間を25%延長する・問題を読んであげる・答えは口頭でよい・別室受験するなどの配慮をすることが有効で、さらには、診断がついていない子どもたちにもそれらを選べることができるようにすることや、モジュール授業を導入するなどの具体的な案も挙げられていました。 「診断」ということでは、早期診断について、診断するだけで療育につなげていない現状のこと、それから、本人のアイデンティティが確立する前に診断名を告げてしまうと、セルフラベリングをしてしまうことなどのお話も印象的でした。 このほか、セルフ・エスティーム(自尊感情)のこと、子どもの問題行動は子どもからのSOSであること、メタ認知能力をあげるために有効な策、乳幼児にすべきことなどなど、あっという間の3時間でした。 始まる前は、「今日の講演会は長いわ・・・(*´-д-)フゥ-3」と思っていたのですが、もっともっと聞きたかった! そして、学校の先生がたに一番に聞いてもらいたかったです。 |
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今日の講演会は、特定非営利活動法人 文化学習協同ネットワークさん。 文化学習協同ネットワークさんは、子どもの発達支援・若者の自立支援・コミュニティビジネスという3つの事業、つまり、子どもから大人までの一貫した支援を行っている法人です。 子どもの発達支援としては、不登校の子どものための居場所づくりや、学習のサポートなどをしていらしゃいます。詳しくはホームページをご覧になってみてくださいね。
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2010年4月号 おでかけレポート
reported by ryuryu