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力を抜いて,ゆったりと・・・・

第5回「食で育む家族の絆」


■家事の中で一番大変なのは・・・・
毎日子育てや家事に忙しいお母さん、家事の中でなにが一番時間がかかるり大変だと思いますか?
掃除や洗濯は省略しても命に関わりませんが、食事の支度だけは絶対に省くことが出来ません。
家で調理せずに、買ってくる、外食する、宅配など手を抜く手段はありますが、子どもや高齢者、病人が家族にいると、その食事の準備は重要な仕事です。
そして、一日3回食事の支度にかかる時間は、買い物から入れると個人差もありますが、一日のかなりの時間を費やしています。そしてそのことは、あまり普段意識されず、家族は食事の時間になると、自然にご飯が並んでて当然とばかりに大変さは分かってもらえないのが現実のようです。

■昔と今の食生活と家庭崩壊
まだ日本が貧しくて生活のペースがのんびりしていた頃は、お父さんは夕方には家に帰り、家族揃っての夕飯というのが一般的でした。
食事も今のようにご馳走ではなく、お母さんが工夫をした野菜中心のヘルシーなメニューでした。
お父さんはお仕事をしているからと、おかずが一品多いなんていう家もあったでしょう。
当時のお父さんは一家の中心で、ちょっと怖い存在でしたが、確かな存在感が家庭内にありました。
今の日本の平均的なサラリーマン家庭では、お父さんが夕方家族と一緒に食事をする家というのは、残念ながら、ほとんど聞いた事がなく、リストラにあって初めて家族団らんの楽しさを知ったなどという声を聞くくらいです。ゆったりとした時間の流れの中で、食生活が営まれていて、豊かな時間の流れがあったのだと思います。

そして今はどうでしょう。時間に振り回される忙しい現代人のニーズに合わせて、コンビニがあちらこちらに出来、一人暮らしの人の冷蔵庫やキッチン代わりになっているといわれています。
また外食産業も盛況だし、デパ地下やスーパーのお惣菜も充実し、家庭で料理をしなくても何でも買ってくれば間に合うような便利な時代になりました。

一人暮らしなら仕方ありませんが、家族がいてもその便利さから、好きなものをそれぞれが、好きな時間に勝手に食べる家庭があると聞きます。
両親は仕事で忙しく、子ども達もそれぞれお稽古事、塾、部活と忙しい生活をしていると、生活時間がそれぞれ違ってしまいそんな結果になってしまうのでしょう。
一人で食事をすることを、孤食と言うそうですが、なんだかゾッとするほど寂しい言葉です。

そんな生活の結果、家族内の会話が少なくなり、コミュニケーションがうまく行かず、親子や夫婦の不和、家庭崩壊などといった事態に陥るケースが多いのです。

家族の誰かが病気をしたり、怪我をしたりし、またリストラにあうなどがないと、忙しさの流れが止まらず、休むこともままならない人が私の周りにもいっぱいいるようです。


■食事の支度で家族の絆を
この家庭崩壊への流れを変える手っ取り早い方法は、家族で何か美味しいものを一緒に作ってのんびりと食べるということだとわたしは思います。

料理はいつもお母さんの仕事とばかりに、お母さんばかりが忙しく立ち働いて、お父さんと子ども達は、座って待っているというお家もまだまだ多いと思います。
手伝ってもらうとかえって時間がかかるから、自分でやっちゃったほうが早いからとか、何かやってと家族に頼むと嫌がられたり、喧嘩になるから面倒臭いなんて思っていませんか?

家事の中で一番時間と手間がかかる、食事の支度を家族と一緒に出来たら、家族も少しずつ自立しますし、何よりも楽いことです。
面と向かって言えないことも、何かをやりながらだと、案外本音が話せたりするもの。

出来るだけ、小さいうちから、ちょっとしたことでも子どもに(あまり手伝わないパートナーであるなら、もちろんその方にも)やってもらう習慣をつけておくと、最初は大変でも後々ぐっと楽になります。
ご飯を炊けるようにしておく、タイマーがかけられるようになるともうしめたものです。
いまどきご飯も炊けないパートナーは、失格ですよね。

普通の日が無理だたら、週末だけでも大丈夫。

野菜の皮むき、大根おろし、コロッケのジャガイモつぶし、とんかつの衣つけなどなど、子どもに仕込んでおくと、調理法も覚えるし母親は楽できるし、一石三鳥くらいの効果はあります。

調理がまだ無理な場合は、食器を出したり、お箸を配ったりという配膳の仕事も子どもたちは自分の仕事となると嬉々としてやります。

勉強!勉強!とお尻をたたくより、何か家のお手伝い、自分の仕事を用意する方が、ずっと子どもは成長します。

家族と一緒に料理をするといっても、難しいレシピの大そうな料理をする必要は全然なくて、季節の野菜を茹でただけとか、旬のお魚を塩焼きにしただけとか、素材そのものが美味しければ、「焼いただけなのに、こんなに美味しいんだねえ。」などと会話も弾みますので、何でも良いのです。

例えば、冬だとサトイモを皮ごと茹でて、アツアツのところを剥きながら、ごま塩をかけていただくと、煮物とは違った美味しさですし、アルミホイルで包んでオーブンで焼いただけの、サツマイモの美味しいこと!
一手間かけてスイートポテトにしてもいいのですが、そのまま焼き芋でも充分です。
夏の庭先販売のもぎたてのトマトを冷やして食べるのも格別です。
そんな風に季節のものを素材そのものの味を楽しんでいただくと豊かな気持ちになれるものです。

■好き嫌いを知る
人間には必ず好き嫌いがあります。好き嫌いなく何でも食べることは、理想ですが、誰でも好物はあるし、苦手なものがあっても当然だと思います。

毎日食事をともにしていると、家族の好きなもの嫌いなものがわかってきます。
毎日の献立を考える時に、家族の顔を思い浮かべ、栄養のバランスとそれぞれの好き嫌いと照らし合わせて、不公平にならないようメニューを決めるのも私の日課です。

お誕生日だけでなく、なんだか元気がない時には、その家族の好物を用意すると、へこんでいても元気になるので不思議です。

私が子どもを産んで、慣れない母親業に疲れていた頃、里帰りをしました。
帰った日食卓には母の作った「冬瓜の葛かけ」がのっていました。
帰る途中の電車の中で、食べたいなあと思っていた料理だったので、びっくりしたのを覚えています。もちろん母に作っておいてと頼みもしませんし、地味なメニューなので私の好物と公言したこともありませんでした。
なのにどうして母は私がそれをその時食べたいとわかったのか、今だに不思議で仕方がありません。
なんだか母と気持ちが通じたような、母の愛情を感じた瞬間でした。
そして母の手料理で育児疲れも癒され元気になったのは言うまでもありません。

■口福から幸福へ
美味しいものを食べると、口福になり、こころも身体も健康で幸福になれるというが、私の料理の先生の持論でした。
先生はお弟子さんのお誕生日にそのお弟子さんが、その時食べたいだろうと思うものを何百ものご自分のレシピの中から2〜3品料理されるそうです。
「え〜!どうして分かるんですか?」と毎回不思議がられるほど、それがいつも的中するそうです。
先生の一人一人のお弟子さんに対する愛情の深さを感じます。

「今日のご飯は何?」と言いながら帰ってくる家族に、「○○よ」と答え、「やったー!」なんて返事が返ってくると、あーよかったとこちらも嬉しくなります。

美味しいものを食べている時は、
それまで機嫌が悪かった人も一瞬にして幸せそうな笑顔になるのは、皆さんも経験からご存知だと思います。

どこか家庭内のコミュニケーションがうまく行っていないなあと感じていたら、先ずは食事から変えてみませんか?
週末に一緒にメニューを考えて家族で料理をすることもひとつです。
また普通の日は家族の顔を思い浮かべて、今日は何が食べたいかなあと想像する。
そうやって作った料理は、きっと愛が伝わるものだと思います。
そこからきっと楽しい会話が生まれることでしょう。

食事は毎日のことだから、家族で関わり、絆を深めることを是非お勧めします。


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昨年10月から、「子育ての悩み相談しましょう」コーナーにエッセイを連載しています。
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nana


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2006年2月号

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