第7回 『親子再生 虐待を乗り越えるために』
■三鷹市子ども家庭支援ネットワークとは?
今月のエッセイは今年の2月に発売された一冊の本を紹介したいと思います。
三鷹市の子ども家庭支援ネットワークについては、『みたか子育てねっと』子育てコンビニサイトの、相談コーナーに詳しく載せました。三鷹市では様々な機関が連携を取って、子どもや家庭の問題に取り組んでいるのです。そういう体制が取られていることは知っていても、現実はどうなっているのか、どのようなケースがあり、どのように対応解決されているのかを知るチャンスはほとんどありません。
1997年に子育て支援センターが三鷹市に開設され、元保育士だった佐伯裕子さんは、相談員として異動されました。そこから、「ひとりじゃないよ、私たちがいるよ」と、子どもたちの育ちを支えるために、お父さんお母さんに心から寄り添い問題解決に努めてこられたのです。
三鷹市家庭支援ネットワークの歴史とそこで繰り広げられた親子の物語が、この『親子再生 虐待を乗り越えるために』です。テレビのニュースでも頻繁に報道されているように、児童虐待は増え続けています。一人でも多くの子どもを、痛ましい状況から救い犠牲者を出さないために、虐待を受けている子どもの発見に、三鷹市の保育士、保健師、医師、教師、相談員たちは、出会いのあった親子を暖かい目で見守り続け、少しでもおかしいと感じたら、ネットワークを活用し情報交換をしています。
この本には佐伯さんが取り組まれたケースが沢山出てきます。長い年月をかけ、じっくりと親子に寄り添い、再び前向きに生きる力を得るまでに関わった支援者が、各ケースの最後に載っています。
【このケースにおける主な支援者】子ども家庭支援センター・母子自立支援印・総合保健センター・児童相談所・警察・中学校・弁護士・生活福祉課・病院・精神科開業医・女性のこころの相談室・精神保健福祉士・臨床心理士・民生児童委員他
といった具合です。どんなに多くの人が一つの家族を見守っているのかがよく分かります。
■児童虐待の背景と解決のために
虐待を受けた人が大人になって自分の子を虐待するという虐待の連鎖という事実もありますが、わたしは、ひとつひとつのケースを読みながら、これは非常に特殊な家庭に起きることではなく、一つ間違えば、どんな家庭にも起こりうることではないかと感じました。 ケースに出てくる親子の話や佐伯さんの対応に胸が熱くなることもしばしばでしたが、自分の子育てを振り返ったり、客観視する助けにもなりました。
児童虐待の背景には、現代社会の大きな問題である「孤独な子育て環境」ですと、佐伯さんも書いておられるように、毎日深夜まで仕事をする夫、その夫を幼い子を抱えて独りで待つ母親。本来楽しいはずの育児がつらいものになっている現実があります。
みんな一生懸命なのに、歯車があわない、色々なことが噛み合わなくなる夫婦や家族、その犠牲になる子どもたち。つらいと感じたとき、困ったときは、とにかく外に向かって助けを求めること、こころを開いて話せる相手を持つことが何よりも大切です。
「安心して微笑む子どもたちの輝く瞳」それを見るためには、まずお父さんお母さんが元気にならなければいけないということを、常にこころに抱いて、佐伯さんは辛抱強く、それこそ体当たりで様々な難しいケースの親子に寄り添ってこられました。決められた枠にこだわらない援助の仕方は、これからの援助者へのヒントに満ちていると思いますし、現在問題を持つ方にとっては、どんな援助を受けられるかを知り、現在直面している自分の問題を解決する糸口が見つかるかもしれません。
昨年子育てコンビニが企画した三鷹ネットワーク大学の講座に、佐伯さんを講師にお願いしました。お忙しいのでほとんど打ち合わせはなかったのですが、私達が考えた講座の全体のタイトルは「ママはひとりじゃない〜めざせ!ノンストレス育児」でした。そして、佐伯さんの講座の後、何名かがファースト・ノックをされたそうです。「ひとりじゃない」佐伯さんならわかってもらえる、こころを開いても大丈夫と感じられたのでしょう。「ちゃんと繋いでおいたから大丈夫だと思うよ。」と後日あの素敵な笑顔で仰っていました。
『親子再生 虐待を乗り越えるために』(佐伯裕子著 島沢裕子編 小学館 )を読むと、、三鷹にはこんなに素晴らしい子ども家庭支援ネットワークがあるということを知りとても心強く思います。何か困ったり、悩んだりしたときには、市内の相談先のどこかにファースト・ノックをしてくださいね。そこにはあなたを支援してくれる誰かが待っていて、暖かく迎えてくれるはずです。
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nana
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2006年6月号
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