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力を抜いて,ゆったりと・・・・

第8回 子どもをめぐる事件に思うこと

■一家でワールドカップ観戦
 4年毎のワールドカップ、子どもと見ていると、4年前8年前12年前とさまざまな思い出がよみがえって来ます。
ドーハの悲劇の時、まだサッカー観戦とまでは行かなかった息子もすっかりサッカーオタクと化し、
一次リーグ敗退のジーコジャパンにいっぱしの事を言い、門前の小僧をしていた娘もイケメン鑑賞にとどまらず、
しっかりサッカーファンとなってしまいました。ブラジル戦は一家4人揃って見ましたが、さて4年後家族は、どこで誰とW杯観戦をしているのでしょう?

■秋田の事件 
 世の中一見平和そうなワールドカップの話題と平行して、なんだか子どもを巡る暗いニュースが続いています。
秋田の米山豪憲君の事件。畠山鈴香容疑者が繰り返しニュースの画面に映るたび、なんともいえない嫌な気分になります。
 鈴香容疑者が子どもをネグレクトしていたことがワイドショーでさんざん話題にされ、夕飯が毎日カップ麺だったと報道されるや、カップ麺=ネグレクトという図式が出来てしまうらしく、どうしてこうも短絡的になるのかと不思議になりますが、幼稚園児のお母さんの間では、カップ麺を食べさせることはネグレクトになると思う人がいるらしくて、おちおち「今日はくたびれちゃったから、カップ麺にしちゃおうかなあ〜」なんて冗談にもいえない雰囲気なのだそうです。
 この事件は、貧しさの連鎖、鈴香容疑者の家庭環境、生育暦、またその親の家庭環境、生育暦と深い関わりがあり、これまでたどって来た彼女の人生を考えると、単に鈴香容疑者個人の批判を繰り返してもこういった事件の再犯を防ぐことはできないと思います。とても難しい問題です。犠牲になった子どもには何の罪もないと思うと気の毒でなりません。

■奈良の事件 
 また、痛ましかったのは、奈良の事件です。一見幸せそうな医者の家族に突然起こった事件です。
秋田の事件とは全く土壌が違うエリート家庭の事件ということになります。
この高校1年生の男の子は、頭もよく小さい時から親の言うことをよくきく素直な良い子であったのだろうとニュースを見聞きしながら思いました。逃亡先で見つかった時に、所持金はゼロで袋のなかに、ティッシュと歯ブラシを持っていたそうです。
しかも、ワールドカップ見たさに上がりこんだ家には、靴がきちんと揃えてあったときくと子どもを育てた経験のあるものは、何か胸にずきんとするものを感じずにはいられません。
 学校でも友達思いの優しい子だという生徒達の証言をきくにつけ、継母と異母兄弟という家庭に居場所がなく、勉強だけで繋がっている父との関係、素直に自分の気持ちを父親に言えず、勉強が出来ない自分は父親に認めてもらえない、愛されないと思い悩んでいたのだろうと思います。やさしい子であったがために、勉強をしない、学校に行かないなど思い切った反抗が出来ず、
毎日不満を沢山こころの中にためていたのでしょう。日々追い詰められて行った少年のこころの葛藤を思うと、たまらない気持ちになります。

■この家庭の親子関係
 子どもの素直な心から、お父さんに憧れて医者を志し、中学受験までは、自我の目覚めもなく親の言いなりになって、受験も成功したのでしょう。親子で合格を喜び、親自身も自分の子育てに疑問を持つどころか、自信をもち、息子の自我の目覚めを無視して、指導を続けたのだと思います。お父さんの書斎がICUとよばれ集中勉強室だったらしのですが、ICUということばに、背筋が凍りますし、出来ないと殴ることもあったときくと、一種の虐待と言えるでしょう。

 この父親は多分息子がここまで追い詰められているとは夢にも思わず、起きてしまった事件の大きさに今は戸惑うばかりだと思います。医者であり、子どもの精神的な発達段階について、知識があるはずでなのに、自分の子は思い通りになるし、子どもの指導をすることが、愛情であると思っていたのだろうと思うと残念でなりません。今目の前にいるこの子がどんな気持ちでいるのだろうと、ほんの少しでも考える気持ちの余裕が親の側にあれば、こんな事件は起きなかっただろうし、幸せな家庭が築けただろうにと思いますが、
 医学部入学という目標達成=良い子育てと思っていた親には、息子の悩みを感じ取ることが出来なかったのでしょう。
 この事件をニュースでみて、ヒヤリとした受験生の親が多分日本全国に少なからず存在すると思います。
またこういった事件の連鎖が起こらないことを祈るばかりです。

■大人の仕事
 まだまだ学歴偏重がある日本社会、学歴はないよりはあったほうがと思うのは親心だけれど、勉強は沢山ある子どもの資質のほんの一部であること、運動能力や音楽や絵画の才能、または持って生まれた良い性格なとと同列な物であることを、親は忘れてはいけないと思います。もって生まれた大切な資質を生かせて初めて人は幸せになれると思います。
忙しい毎日であっても、一日に一度は、「うちの子、今日はハッピーだったかな?」って思う時間を持ちたいし、子ども時代を幸せに過ごせるよう見守るのが大人の仕事だと思います。
 もちろんわが子だけでなく地域の大人たちが、毎日温かい目で子どもを見守ることが大切です。

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nana


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2006年7月号

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