力を抜いて,ゆったりと・・・・


第22回 浜文子さんとの出会い


■一本の電話
1月19日の「bloom」完成披露上映会も近づいたある日、一本の電話がかかりました。
浜文子さんの本を出版しているグランまま社の方からでした。
「bloom」上映会に浜文子さんと行きたいので申し込みたいと言うことでした。
電話を受けてくれたIさんは、浜文子さんの名前を知らず、「満席で、5時からの追加上映しかお受けできない状況です。」
と説明しました。先方は、浜文子さんは、子育ての本をたくさん書いている方で、新聞で紹介されている映画の内容は、
浜さんに是非みていただきたい内容だと、おっしゃっいました。

実は、私は以前、浜文子さんのお名前を、あるインターネットサイトでお見かけしていました。
推薦図書の欄に載っていて、たくさんのご著書があることは知っていたのですが、未だ読んだことはありませんでした。
本の説明文から想像する内容は、今の若いお母さん方に読んでほしいようなものだと想像がつき、「bloom」」上映会のときに、
講演をお願いするのにどうだろうかと漠然と考えていたことを思い出しました。
結局上映会のときは、映画製作関係者のパネルトークが良いだろうということになり、講演者を探すことはしませんでした。
そんなわけで、浜文子さんのお名前は存じ上げていたので、何とか特別にお二人の席を確保することにしました。

■予期せぬ再会
「bloom」上映会当日、受付を担当してくださったIさんが、「浜文子さんがお見えですけど」と、私を楽屋まで呼びに来てくださいました。
客席にご挨拶に行くと、無理にお席をお願いしたのでとおっしゃって、抱えきれないほどのご著書をいただきました。
少し話をしていると、浜さんが、しげしげと私の顔を見て、「もしかしてあなたは?」と、おっしゃいました。
そして、私も、25年ほど前、私の仕事先に、かわいらしいお子さん2人を連れて、毎週いらしていたお洒落で素敵な浜さんを思い出したのでした。
予期せぬ、再開。四半世紀を一挙に跨いだそんな気持ち、懐かしさと、この過ぎ去った時が交錯したのでした。

 「bloom」完成披露上映会とパネルトークは、何とか無事に終了しました。思ったよりも安産だったのだけれど、映画の中で
「出産後、泣くと思っていたけれど、あまりの大変さに涙も出なかった。」といっていた人がいたけれどそんな心境でした。
私は、何度もこの上映会が無事に終了する事を想像しては、込み上げるものを感じていましたが、当日は、それころではなく、
終了後浜さんとお話しする時間も持てないままでした。

前置きが長くなってしまったけれど、浜さんとの出会いというか、再会は、こんな風でした。

■「生まれたのは私」
浜さんからいただいたご本を、帰ってから、ぱらぱらとめくくりながら、拾い読みをしました。
母となったものから、母となるものへの慈しみに満ちた言葉が溢れていました。
その中に、私は、「生まれたのは私」という言葉を見つけ驚きました。
「bloom」のスタッフが、キャッチコピーのアイデアを出し合い3時間もの議論の末決めたコピーが、浜さんの本の中にすでにあった
のですから。
私は、これらの本は、言葉をしっかりと噛締めながら読まなければいけないと思い、まずは、「育母書」を寝る前に少しずつ読みました。

■浜文子さんの「育母書」
初上映の後も、スタッフ向け上映会、問い合わせへの対応、母親向け上映会、父親向け上映会、他団体主催の上映会と息つく暇もない忙しさでした。ずいぶん時間がかかってしまったけれど、ようやく読み上げ、浜さんの浜さんらしい愛に満ちた自然な子育ての話に安心と安らぎを覚えました。
浜さんのお子さんは、うちと同じで、お兄ちゃんと妹という一男一女すので、余計に私の子育てと重ねあわせて楽しめました。
浜さんは、子育ての様々な問題や課題を本や知識で何とかしようとせずに、自分の感受性でしっかりと受けて止め、
無垢な子供のこころに向き合った育児をされていました。
育児には、方法もなにもないし、本当に一人一人が違う人間なのだから、一人一人に真剣に向き合うしかないのだと言うことが、
読んでいると良くわかりました。
何かと言うと、本に頼っていた私は、もっと早く浜さんの本に出会っていたらと残念に思たのでした。

■あの子たちに会いたい
浜文子さんの「育母書」の中で、とても好きなところがあります。
「あの子たちに会いたい」というタイトルの文です。
一日だけ神様が願いを叶えてくれるとしたら、あの子達が小さかった日に戻りたいと書いてあります。
私も、大きくなってしまったうちの子ども達が、こんな私でも、母として掛け値なしに慕ってくれ、
三人で色々な楽しい遊びをして過ごしたあの日に、一日だけ戻りたい、そして、二人を私のひざの上に乗せて抱きしめたいと、
今そう思います。

■人生で大切なものは何かを教えてくれたのは・・・
楽しかったり、嬉しかったり、苦しかったり、迷ったり、不安になったり、様々な感情を体験し、自分も鍛えられる子育て、
子供が教えてくれた、人間本来の姿、自分勝手な大人の世界の時間の流れを修正できるのは子供の力をもってしか出来ないのではないでしょうか。
欲を出して、あれもこれも効率よくと思ってしまう、忙しい現代社会に住むわたしの時間を止め、人生で大切なものは何かを
教えてくれたのは、確かに子供たちだったのです。

浜文子さんは1月19日の上映会のあと、お礼のお葉書を下さいました。
わたしは、お手紙を書こうと思ったけれど、途方もなく長くなりそうだったので、思い切ってお電話をしました。
懐かしい声、25年を一っ跳びして、あの頃のように楽しくお話しすることが出来ました。
これからも私の活動を応援してくださるとの、心強い言葉がありがたく、疲れた身体に染み込んだのでした。

 

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nana


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