第32回 子どもと過ごす,大切な「今」
■時の流れを振り返る3月
寒い日と暖かい日が、交互に訪れながら、確実に春になってきました。
何度も書いていますが、3月は子どもの成長を振り返る季節です。下の子どもが大学生になって早1年。考えてみるとあと何年一家揃って暮らす日があるのでしょうか?
最近江國香織さんの新しい長編『左岸』を読みました。親子3代にわたる、約50年ほどの時の流れを描いています。舞台は、福岡、東京、パリ。
福岡の家から物語が始まりました。主人公茉莉とその母喜代、そして娘のさき、それぞれが突拍子もなく個性的で、魅力的で、小説でしかありえないような展開なのに、妙に現実味を感じさせるストーリーでした。すっかり江國ワールドを堪能しました。10月に市内の小学校の一日家庭教育学級に江國さんがゲストでお話しされたときに、大ファンである娘と聴きに行き、この作家の佇まいに触れたこともこの読書を思い出深いものとしました。
江國香織さんは、ご自身がこの仕事以外、私に出来ることはないと話しておられたとおり、物語を考えるために生まれてきた、天性の作家だと感じました。
先に娘が読んだのですが、感想を語り合う時間も楽しく、二人で5年前に旅行したパリの思い出も蘇りました。
『左岸』で展開した50年の家族の歴史、その中の中心となる場所としての福岡の家、それらと私の人生をひきくらべながら、今は住む人もいなくなった夫の実家に残された物の数々に小さなため息をつき、少し感傷的な気持ちになっています。
小さな子どもを育てている時間は、その当時は、長く、長く感じられましたが、過ぎ去ってからは、もう戻ってこないその時間が愛おしいばかりです。
気がつけば、我が家も親子で暮らすのは、多分あと数年です。
■群馬からの電話
先日、群馬に住む、2児のお母さんからお電話をいただきました。
昨年6月に前橋で、個人企画の「bloom」上映会があり、その時に「bloom」を観た方でした。映画を観て、とても感動し、もっと多くの人に観てほしいと思い、ご自分も上映会を企画したいと考えたのだそうです。
その思いを実行に移せないまま、2歳8か月と小学校1年生の二人の男の子との生活(大変さが容易に想像できますが・・・)に忙殺されていました。
下の子に手がかかり、お兄ちゃんを、いけないと思いながらも叱ったり我慢させたりの毎日で、自分が嫌になりそうだったといいます。
ある日、下のお子さんが早く寝てしまい、久し振りにお兄ちゃんとゆっくり絵本を広げたそうです。その本は、日野原重明先生の「いのちのはなし」でした。
読みながら、感動し、ふと、長男とのこの時間は「今」しかないと、「貴重な時間」を感じたそうです。
そして、「自分自身貴重な時間を過ごさせてもらえていると感じた瞬間、急に「bloom」を再度観たいと思ったのです。私も観たいし、他の人へも観せてあげたい。」と、その方は、後に上映会の企画書に書いてきました。
■花開く想い
その企画は、みるみるうちに形になり、この3月13日に花開きます。小さなグループでの上映会ですが、数人の仲間で、チラシづくりなど準備を進めているようです。
上映後は、おしゃべり会や、そのあとランチに流れるプランも出来ていました。あまりの盛り上がりに、その方のおかあさまから、子育てがおろそかになるのではと、心配の声も上がったとか。私たちが映画製作に一生懸命奔走した頃を思い出しました。
「友人と企画進めている中でも 普段気付かない点を知ることができ なんかこの企画とても意味あるものです。」と途中経過を知らせてくるメールにこちらも嬉しくなりました。
子どもを育てている「今」だから、子どもとの時間を大切にしたい、でもその想いを共有できる友達との自主的な活動の企画にワクワクする時間を過ごす、そのどちらも大切なことだと思います。お母さんが元気でいきいき、にこにこしていると、子どもも安心してこころが安定するものです。
核家族で子どもと孤独な育児をしていると、とても息苦しくなってきます。3月は、一つの節目、4月からの新しい生活の中に、なにか自分自身がワクワクできることを探してみませんか?
何も大きなことをする必要はありません。子どもとの「今」を大事にしながら、自分の出来る範囲で、一歩をふみだしてください!陰ながら応援しています。
「子育ての悩み相談しましょう」コーナーにエッセイを連載中です。みなさまのご意見ご感想をお待ちしています。
子育てをしていて、嬉しかったこと、驚いたこと、困ったこと、つらかったことなど、子育てをして感じた様々なことを、みんなでおしゃべりしてみませんか?
子育てコンビニでは、毎月「みんなで作ろう子育てコンビニ」という集まりを開いています。子育てコンビニのスタッフ以外は毎回新しい方の参加があり、いつも同じメンバーの集まりではありません。
悩み相談に行くほどでもないけれど日ごろ気になっていることなどを、みんなで話してすっきりすることもあるようです。どうぞお気軽にお出かけください。
皆様のご参加やメールでのお便りなどお待ちしています。
nana
2009年3月号