力を抜いて,ゆったりと・・・・



第40回   日本の子育てと、海外の子育てと

■新年のご挨拶
新年あけましておめでとうございます。
今年も”力をぬいてゆったりと”エッセイを書き続けていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、民主党マニフェストの「子ども手当」についての議論が絶えない昨今ですが、欧米主要先進国の中でも高い合計特殊出生率をキープしているフランスでは、手厚い経済支援がされています。フランスの家族給付は、いわゆる児童手当も含めて30種類もの手当があり、概ね所得に関係なく支給されています。
わかりやすく言うと、無職のシングルマザーでも4人の子どもを育てていける経済支援を受けられる制度が整っているということです。
制度については、ここで詳しく述べることはできませんが、フランスやイギリスで子育てをした経験を書いたエッセイを何冊か読みましたので、今月は、その感想を書いてみたいと思います。

■フランス、イギリスの子育てのレポートを読んで
読んだ本は、『パリの女は、産んでいる<恋愛大国フランスに子どもが増えた理由>』(中島さおり)『パリママの24時間 仕事・家族・自分』(中島さおり)『子供の生きる国 産んで育てて、ニッポン、イギリス、フランス』(薗部容子)『世界一ぜいたくな子育て 欲張り世代の各国「母親」事情』 (長坂 道子 )『フランス父親事情』(浅野素女)『フランス家族事情―男と女と子どもの風景 』(浅野 素女) など、フランスに関するものが多かったのですが、島国日本で暮らしているとどうしても、自分の周りのことのみに目が行き、よその国、違う世界や常識が見えなくなっていることに沢山気づきました。

もちろん、出生率が上がっていて、子育てしやすいといわれるフランスでも、母親たちの苦労や悩みがないわけではなく、それぞれ精一杯頑張っていると感じます。
出産後の育児休暇、職場復帰などの支援システム、婚外子やシングルマザーへの偏見のなさなど子どもを産みやすい制度が整っていることが、出生率上昇の裏付けであることは明らかです。
それに加えて、子育て中に経験する生活上のこまごまとした違い、たとえば、日本人に比べて乳幼児の育児のやり方がかなり大雑把なところなど、とても新鮮な驚きでした。

■育児常識のちがい
『子供の生きる国』を書いた薗部容子さんは、東京、ロンドン、パリで出産育児を経験し3人のお子さんを育てています。
外国では、無痛分娩は当たり前というのは、よく聞く話ですが、出産後病院で指導される沐浴の仕方が、各国で全くちがっていて面白かったです。
日本の沐浴は、ご存知の通り、ガーゼのタオルをかけて、直接お湯が赤ちゃんにかからないように、耳からお湯が入らないように、そーっと耳をふさいで、首を支えて入れますよね。
まるで儀式のように注意深く真剣にやりませんでしたか?
ところが、フランスでは、寝かせて石鹸をたっぷりつけて、抱き上げ、深めのシンクのようなところに連れて行って、ペダルを踏むと蛇口からシャワーが流れ、それを頭からかぶせる。
しかも泡を流した後、大根か白菜の水を切るように、縦向きにザザッと水を切るのだそうです。
また、イギリスでは、生後一日目のあかちゃんも大人用のバスタブで入れ、大人は、バスタブの外にひざまづいて、赤ちゃんを横抱きにして、シャブシャブと揺するのだそうです。
しかも、耳もふさがず、顔も水中に一瞬くぐらせるそうで、筆者の薗部さんも目からうろこ以上に、自分なりの「育児常識」を覆されたそうです。

健診しかり、出産しかり、入院中、退院後の子育て支援しかり、離乳食しかり・・・産前産後だけでもこんなに違うものかと読んでいてとても興味がそそられました。

■日本の子育ては手間をかけている?
海外の事情のレポートを読んでいて、感じたのは、日本人は、一般的に子育てにとても丁寧で時間をかけているということ。
これは、決して悪いことではないのですが、イギリスやフランスの母が、離乳食に瓶詰めの種類を増やして、今日は手間をかけたと感じている時、日本のまじめな母は、本を見ながら、ニンジンやカボチャのの裏ごしなどを丁寧に作ってる。
朝、イギリス、フランスの母(または父)が、パンとソーセージとヨーグルト程度のランチボックスを作っている時、日本のほとんどの母は、赤黄緑と色どりを考え、おかずを何種類も入れたり、中には、キャラクターのデザインにのりを切ったりする人もいて、とても手の込んだお弁当を作っています。

また、これらの本によると、イギリスやフランスは建物の中でも靴の生活ですが、子づれで集まるような場所で、子どもが床におもちゃを落としたり座り込んだり、またはハイハイする可能性がある場合でも、子どものコーナー用のシートを敷きません。敷いてあったとしても、そこをトイレに行ったりする靴で歩いているのであまり意味がありません。
そう言えば、パリで上映会をした際の会場で、母親たちは全員日本人だったのですが、赤ちゃんのためのシートなどはありませんでした。
落としたおもちゃをなめたりする可能性があると思いましたが、フランスでは、それが習慣なのだと思いました。

また、イギリスでのエピソードでしたが、プレイグループに参加した時、大人も土足で歩くラグの上に落ちたバナナを生後7〜8か月の赤ちゃんが食べたのを目撃したそうです。
驚いていると、「大丈夫だよ、あの月齢なら、破傷風の予防接種も終わっているだろうし」という友だちのコメントだったそうです。
こんなにも考え方が違うとは???

■さまざまな角度からの子育てへ理解や支援が必要
細かいところに話題が行ってしまったので、本筋に戻します。
これらの本はフランスとイギリスの体験ですので、一般論にはなりませんが、その中で感じたのは、日本では、基本的な子育てや、人生についての構えが違うような気がしてなりませんでした。
文化の違いと言ってしまえばそうかもしれませんが、今、少子高齢化にあえいでいる日本、今までの考え方では、行き詰まりは解消されないと感じています。

「子ども手当」の支給だけで、少子化が改善されるほど単純な話ではないと思いますが、女性の一生で子どもを産み育てる時期は、長くても15年。
そんな、ライフサイクルを考えた、さまざまな角度からの子育てについての理解が必要であり、その上に社会の支援制度ができていかなければいけないと感じています。

福島少子化大臣が、先日フランスを訪問したとの記事を新聞で読みました。
ダルコス労働・家族・連帯相と会談後の記者会見で、育児手当や保育所の充実など子育て関連の公的財源の多くを引き受けるフランスの「家族手当基金」をモデルに、総合的な「子ども基金」の創設を模索したいとの考えを述べられたそうです。
税金だけに頼らず、企業負担なども入ったこういった基金の創設も急務だと思います。

色々な意味で社会が変わり始めていると感じる、2010年の年頭です。
パリのSOSママクラブとのつながりもできましたし、フランス、イギリスだけでなく、さまざまな国々の子育て情報にも目を向けながら、子育てしやすい環境作りについて今後も考えていきたいと思っています。


 「子育ての悩み相談しましょう」コーナーにエッセイを連載中です。みなさまのご意見ご感想をお待ちしています。
  
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nana


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2010年1月号

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