力を抜いて,ゆったりと・・・・


第41回   子どもを預ける



■新年度スタート
桜の花が満開になり、新年度がスタートしました。
この時期、不安と希望がまじりあい、なんだか落ち着かない気持ちになる方も多いかもしれませんね。
ゴールデンウイークに向かって、これからどんどん暖かくなってきます。寒さで固くなっていた身体も新たな活動の場でのびのびと力を発揮する準備をしているように感じます。
気温の上昇に合わせて、親子で活動の場を広げていきましょう。
さて、今月は「預ける」ことについて考えてみます。

■初めて子どもを預けたとき
妊娠したと知ったときから、母と子はずっと一緒です。出産で身体が2つに分かれてからも、最初のうちは、よほどの理由がない限り、母子は一緒に過ごします。
もうずいぶん昔になり、記憶も定かではありませんが、長男を産んでから、3か月の産休を終え職場復帰した時が、わたしが、初めて子どもと長時間離れた時だったように思います。
それまでは、ずーっと、ずーっと一緒だったし、子どもについて生まれたその日から、何から何まで知っているのは私以外にいないという自信がありました。
保育所に入所したとき、当時何も知らなかったわたしは、預けるのがとても不安で、ミルクのことやら、オムツ替えのことやら、自分が普段やっていることを事細かにメモに書いて、「こんな風にやっていますので、よろしくお願いします。」と言いました。
すると保育士さんが、「わたしたちのやり方で保育をしますから、お任せください。」とおっしゃり、預けるというのはお任せすることなのだと気がついたのでした。
そして、後ろ髪を引かれるような思いで、職場に向かいました。出産する前には、想像もできなかった、胸がキューと締めつけられるようなせつない気持ちを味わいました。仕事中におっぱいが張ってきた時も同じ気持ちになりました。

■在宅子育て
その後、半年ほどで、わたしは退職し、自宅で子どもを育てるようになりましたが、預けて仕事をしていた時とは、また違った苦労が待っていました。
預けていた時は、子どもと向き合う時間と、仕事に行っている時間が、きちんと分かれていたので、仕事の間は子どものことが頭からすっぽり抜ける時間を持つことができていました。
これは、今思うと、一種のリフレッシュになっていたように思います。
ところが、自宅で24時間切れ目なく過ごす生活は、子どもが眠っている時間以外は、四六時中神経を子どもに向けていなければならず、気が抜けません。
他の大人の目があると、何でもないことも、新米ママにとっては、わからないことだらけ、これで大丈夫なのかという不安もいっぱいで、すっかり疲れ切ってしまいました。
昼間は、同じマンションで同学年の子どもを育てているお母さんたちと知り合いになり、一緒に過ごすようにしたり、自分なりにこの難局を切る抜けようと工夫しましたが、正直、時々精神的にどうしようもなく、つらくなることがありました。

■子育て支援サービス
わたしが子育てをしていた20年以上前は、自宅で子育てしている親のための託児のサービスはほとんどありませんでした。ベビーシッターという言葉は、なんとなくおしゃれな響きで存在しましたが、実際に利用している人は身近にはおらず、たいていは親族に頼っていて、実家が遠い人はお手上げでした。
0〜3歳の母親の8割が自宅で子育てをしているということから、10年ほど前から、お役所も在宅子育てへの支援に力を入れるようになり、親子の居場所として、おやこ広場や、保育園の開放などが始まり、民間託児施設など短時間の預け先も増えてきました。
それでも、自分の用事のために、子どもを預けることに抵抗を感じる母親が多いと聞きます。
自宅で子どもを育てていると、それも初めての育児だと、どうしても力が入り、母親が面倒を見なければいけない、自分の子のすべてを知っておかなればなどと思いがちですが、早晩子どもは、親から離れていくもの。
他人にお世話をしてもらったり、他人の中で成長することもとても大事です。

■預けることは、子どもにとってもプラスになる。
先日、ショートステイのことで三鷹市内の児童養護施設「朝陽学園」を取材した時に、興味深いお話を伺いました。
ショートステイは、母親の病気や、冠婚葬祭などで、子どもの面倒を見ることができない場合に利用する制度ですが、「育児不安」という理由での利用も出来るということです。
子どもが落ち着かなかったり、夜泣きなどで昼夜逆転の生活になったり、母親が精神的にも肉体的にもつらくなっている時に、お子さんを預けることで、母子が一時離れて過ごしリラックスできます。
子どもを預けるのがかわいそうとつい思ってしまいがちなのですが、そこには、思わぬ効果があるそうなのです。
生活場面において、学園の子どもたちと同じ生活をするので、学園児童の刺激を受けて、普段自宅では行わない事が出来るようになる場合があるといいます。
たとえば、朝陽学園では、自分でできる事は自分で行う事になっています。その為、食器洗いは小学校に上がった児童からおこない、布団のあげおろし、リンゴの皮むきについてはこどもがやりたがったら年長児からさせているそうです。
幼児になると、活発で運動神経のよい子は、学園の幼児のほとんどが補助なし自転車に乗れるのに刺激されて、自転車の補助輪が取れることがあるそうです。
またお風呂でも、学園幼児は自分で洗える箇所は洗うので、それを真似て洗髪などが一人で出来るようになったりして、親御さんがその成長ぶりに驚かれることもあります。
職員だけでなく、中高生たちから可愛がられたり、甘えたりできる環境なので、子どもの気持ちが落ち着く様子も見られます。特に一人っ子の場合、年齢の違う子どもたちが一緒に生活する学園では自然に下の子の面倒を見る習慣があるので、
それに刺激されて、自分より小さな子どもの面倒を見ようと努力している姿をよく目にするということでした。子どもは周りを見ながら育つのですね。
そのほか、家庭ではわからなかった、発達の遅れなどに保育士さんが気づき、早めに対応できるというメリットもあります。

■毎日元気に子どもと過ごすために
このように、子どもを一時的に預けることは、母親が身体を休めたり、用事を済ませたり、リフレッシュできるだけでなく、子どもにとってもプラスになることがたくさんあるのです。
安心して預けられる施設を選べば、子どもを預けることに罪悪感を持ったり、子どもがかわいそうと感じる必要はありません。
お母さん(または子どもの養育に関わっている方々)が、毎日心身ともに元気に子どもと接することが大切ですから、子育て支援のさまざまな制度を積極的に、上手に利用されることをお勧めします。
かわいい子どもと過ごす大切な一時期、がんばりすぎず、多少忙しくても気持ちはゆったりと、あなたらしく子育てしてください。


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nana


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2010年4月号


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