第44回 “孤”が広がる社会に思う
■連日の猛暑が続く夏休み
今年は、例年にない猛暑、熱中症にならないように注意を呼び掛ける報道が続く中、小さなお子さんを育てているお母さん方本当にご苦労さまです。
暑い中、プールやおけいこ、お出かけと毎日子どもたちのパワーに付き合って夜はぐったりだと思います。
子育ては、休みなしのハードワーク、家族への気遣いも色々大変だと思いますが、ご自分のことも時には労わってくださいね。
■この先の人間関係を危惧する事件の背景にあるのは・・・
この夏、大阪でのネグレクトの事件、行方不明の高齢者の問題と、立て続けにこれから先の人間関係を危惧するような事件が続いています。
一つ一つの事件には、それぞれ背景や、環境がありますが、そこに共通して横たわっているのは、当事者のどうしようもない孤独ではないかと思います。
昭和やそれ以前の時代の、家父長制の親子関係、親せきや隣近所との付き合いを嫌い、他人への干渉をお互いに最小限にしてきた結果なのでしょうか。
■子どもと一緒に広げた人間関係
私自身も、地方の旧家で育ち、狭い人間関係に辟易し、自由を求めて都会に来たように思いますが、子育てをするとなると、そんなことは言っていられませんでした。
結婚してから、子どもがいない間は、夫の両親とは、年に2回ほどしか会いませんでしたが、子どもが産まれてからは、わたしが望む望まないにかかわらず、どんどんわたたちのプライバシーに、夫の両親は入ってきました。
今は、そのありがたみが、よーくわかりますが、若かった私は、自分たちでなんとかなるから大丈夫と、ちょっと迷惑だと思ったり、憂鬱だったりしたものでした。
2人の子どもを育てている間、夫の実家との毎週の食事、誕生日、七五三、クリスマスなどの行事、休暇の旅行など、それまでの他人行儀なバリアは、子どもによってすっかり崩れていきました。
意見が違いぶつかることもありましたが、20年以上の歳月を経て、子どもたちの思い出の中にしっかりと生きている祖父母となりました。もちろん私自身も実の親以上に義父母との思い出を多く持っています。
もしも、わたしが子どもに恵まれていなければ、夫の両親との関係は、疎遠だったと思いますし、お互いに孤独だったかもしれません。
同様のことは、地域での生活にもありました。
マンションでの子どもを持つ親同士の付き合いをスタートに、幼稚園、小学校と地域の方々とのつながりをもち、困った時に助けられたり、助けたりしながら、子どもたちは育っていきました。
子どもがいなければ作れなかった人間関係が広がりました。
■効率性から遠い子育て
コンピューターが普及し、調べ物や、書くことや、人と情報交換することが瞬時にでき、何でも効率を重視する現代社会ですが、効率性から一番遠いのが、子育てではないでしょうか。
子どもを育てることは、本当に手間暇がかかり、しかも思い通りにいきません。試行錯誤を繰り返していくうちに、様々なことに気がつき、知らず知らずのうちに自分も成長していたように思います。
そして、思い通りにいかない代わりに、思いがけない喜びや発見をもたらしてくれたのも子育てでした。
何もかもが、便利な世の中で、一番人間が動物であることを思い知るのが、子育てだと思います。
もっと自由に、もっと便利に、もっと楽にと、欲望の赴くままに暴走しそうになる大人に、人間本来の姿を気づかせてくれたのが子どもの存在でした。
子どもと過ごした時間の流れは、確かに緩やかで、豊かでした。
■人と人をつなぐ”線”が必要
今、親、子、孫と繋がっている”線”が、切れ、”孤”という無数の点が社会の中に広がっているような気がしています。
人は、死を迎える時は一人ですが、母親の身体からへその緒に繋がって、生まれてくるのです。
そのことを、普段わたしたちは、すっかり忘れて暮らしているのではないでしょうか。親と子の関係は、切ってもきることができません。
人間関係の基本単位である、親と子のつながりを、もう一度見つめなおすこと、何かそこに問題があるのなら、解決する方法を考えること、
そこからスタートしなければ、豊かさの中で個人の自由を尊重した結果、”孤”という点が広がる現代社会に人と人をつなぐ”線”は生まれないのではないでしょうか。
一緒に暮らしていても、顔を合わせれば、喧嘩をしたり、いがみ合ったり、また会話のない家族もあると言います。
家族という繋がりは、すべての人間関係の基本です。
朝顔を合わせたら、「おはよう」そして、なにかしてもらったら、「ありがとう」と声をかける、それだけでも、気持ちのつながりはできていきます。
もちろん、近くに家族がいない人も多いと思いますので、血縁だけでなく、地縁も友だち関係も大切です。
誰か一人で良いのです。あなたのことを、良く知っていて、困った時に相談できる人をつくること、また自分も誰かのそういう存在になること、
そうすることで、少しでも社会が変わっていくのではないでしょうか。
おせっかいは、嫌われると遠慮しないで、声を掛け合うことが大切だと思います。
毎日、新聞やテレビから流れてくるニュースを見ながら、わたしもこれからは、周りに嫌がられても、「おせっかいおばさん」を目指そうと密かに決心した夏です。
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nana
2010年8月号