力を抜いて,ゆったりと・・・・

第49回   「イクメンの時代」に思う



■梅の香りが漂う季節
寒かった冬も終わりを告げ、梅の香りが漂い本格的な春が待ち遠しい今日この頃です。そんな中、テレビや新聞をにぎわしているのは、若者が起こした事件。時代が人を作ると言いますが、このような恐ろしい事件が起きる今の日本社会や、事件が起こった背景に目を向けずには居られません。

このエッセイでは、子育てや子育て支援について考えてきましたが、今回は、最近頻繁に目にするようになった「イクメン」という言葉に注目してみました。

これから始まる、卒園、卒業、入園、入学のシーズン、一昔前は、お母さんだけというケースが多かったのですが、最近では、夫婦揃っての出席が当たり前となっていたり、子どもの運動会のために会社を休むお父さんも多いときいています。子育てが母親の肩にのみ重くのしかかっていた頃と比べると、男性の育児参加が活発になってきていることは、本当に喜ばしい限りです。

■「イクメンの時代」
先日、日本女子大で”「イクメンの時代」〜女性のキャリアと子育て支援を考える〜”という講演とシンポジウムが開催されました。育休を取った首長として有名になられた、成澤廣修文京区長の基調講演があり、その後パネルディスカッションが行われました。パネリストは、それぞれの地域で男性の育児休業と子育て支援にリーダーシップをとってきた、成澤廣修文京区長、山田正人横浜市副市長、中山一生龍ヶ崎市長、コメンテーターに日本女子大学教授でワークライフバランスの研究で有名な大沢真知子氏という顔ぶれでした。

■リーダーが率先して育休をとらなければ、社会は変わっていかない
基調講演で、成澤廣修区長は、結婚9年目にして授かった長男の誕生に際して育児休業宣言をしたことについて、その理由に「@こどもにいっぱいの愛情を注ぐ」「A産後8週以内の母体へのサポートの必要性」をあげ、「家族が大切だ」ということを強調されていました。

本来区長は特別職なので、育休制度はないのですが、文京区では、区長の育休宣言がきっかけとなり、男性職員の育休取得がしやすくなることを狙っているそうです。文京区での男女共同参画の意識を結婚観、子育て観、政策への女性の参画などについて数字を交えながらお話しされ、区長などリーダーが率先して、育休の普及をすすめていかなければ、社会は変わっていかないのではないかと述べられました。

女性の社会進出のためではなく男性も親として子育てに真正面から向き合うことの必要性、専業主婦、専業主夫も否定はしない、育休は選択肢と捉え夫婦で話し合って決めることが大事だということ、「個人」のキャリアより「家族」の絆を取り戻そうと呼びかけられていました。

最後に、実はイクメンという言葉が嫌いで、一日も早くこの言葉がなくなってほしいと思っているとのこと、頼もしいと思います。

■男性も家事の最終責任者に
また、山田正人横浜市副市長は、大学の同期で職場も同じ奥さまとの間に最初の双子のお子さん生まれた時に初めて、両立の難しさを感じたのだそうです。

その時は、奥さまの方が育休をとられたそうですが、3人目の妊娠の時、このままではとても産めないと言われ、「子どもの命より大切な仕事はない」と当時の通産省課長補佐という中間管理職の立場で育児休暇を取得、当時では相当珍しいケースでテレビ新聞にも取り上げられ話題になりました。そのことを書いた「経済産業省山田課長補佐、ただいま育休中」(文春文庫)があります
家事育児をメインでやった経験から、男性でもお手伝いや参加というスタンスでなく、最終責任者として家事育児をやるようになるまでの苦労話を伺いました。

本当に平等な夫婦関係の中での子育ては、理想の形に見えました。

龍ヶ崎市の中山市長は、市長になった時に2番目のお子さんが出来たのだそうです。出産前後の2週間の育休を取り専業主婦になられた奥さまのサポートをされたということでした。

2010年1月に、子育て環境の向上・充実を重点施策の一つに掲げ市長となった中山氏は、昨年9月に育児休業条例を制定しました。市長は、ご自分の体験を大切に今後も子どものために何が出来るか考えたまちづくり、子育て世帯が引っ越して来ることがまちの活性化につながると考えていました。

■ワークライフバランスって?
パネリストのお話しの後、コーディネーターの大沢真知子教授が「イクメンの時代背景」という題で、女性の労働力率と出生率の関係、共働き世帯の推移、男性の個人所得分布の推移女性の個人所得の分布、ダグラス=有沢の法則による夫の所得と妻の働く率などグラフを使って女性の労働についての時代の推移を説明されました。

70年代以降女性が自立していく時代の波の中、女性が働いている国の方が、出生率が高くなっているそうです。オランダでは、パートタイム就労が増えており、働くことだけが生きることじゃない、経済的に豊かでもこれでよいのかと、生き方を考えるようになってきているといいます。

二人で働いてどんどん時間がなくなることに疑問をもち、仕事、出世より時間の使い方、働き方を考えるようになってきているようです。

先進国では、人は働き方が、自分の生き方とマッチするものをもとめており、女性が男性に合わせる今の働き方から、女性が男性の働き方を変える時代へと変わっているようです。

ワークライフバランスと今あちこちで言われています。仕事と生活のバランスと一言で言っても、日本の男性の今の働き方をみていると、そんなこととても不可能と思えてきます。しかし、今回の3人のイクメンパネリストたちの奮闘ぶりをきくと、共働きの時代に、いろいろな生き方を自分たちなりに見出し、役割分業をして、夫婦協力して子どもを育てていくことが今後は可能になるのではないかと思えてきました。

少し前に話題になった、宇宙飛行士の山崎直子さんのご家族のことを思い出しました。新しい時代のモデルのように思います。
ワークライフバランスとは、自分の好きな生き方を夫婦で助け合いながらやっていくこと、そしてそのためには、夫婦で話し合うことが一番大切だというお話し納得しました。

■変化は気がつかないところで少しずつ起きている
なかなか時代が変わらないと歯ぎしりするような気持ちになることもありますが、10年スパンで見てみると、変化は気がつかないとことで少しずつ起きている、男性の育休もだんだん当たり前のことになっていけば、社会がかわっていくのではないかという大沢先生のまとめに明るい希望を見出しました。

大沢先生のワークライフバランスについてのご著書を読んで、仕事と子育てを夫婦で協力して楽しくやっていくために、これからの世代に必要なものは何なのだろうかと考えてみたくなりました。


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nana


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2011年3月号

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