第51回 今どきの家族の食事事情に思う
■食生活が乱れているというけれど・・・
食生活が乱れているという話は、最近ずいぶん耳にしますし、食育の大切さがあちらこちらで語られています。
近所のコンビニやスーパーでいつでも手軽に調理をしたもの買ってくることが出来、お湯をかけるだけのカップ麺も種類が豊富、60代以上の方でもお好きな方が多いと聞きます。
20年ほど前とは、ずいぶん食事情が変わってきているとは思っていました。でも、テレビなどで料理番組も人気だし、これほどまでとは思っていませんでした。
最近、「家族の勝手でしょ! 写真274枚で見る食卓の喜劇」(新潮社)という、現代の食生活について調査結果をまとめた本を読みました。
120世帯、一家族につき、一週間三食の記録を274枚の写真入りでまとめたものでしたが、現代の家族の姿が食を通して浮き彫りになっており、大変興味深いものでした。
今の20代から40代の子どもがいる家族が、どのような食生活をしているのか?私の想像をかなり超えている状況を知ることができました。
■食の優先順位が低い?
大ざっぱな感想としては、今の子育て世代の親たちは、食についての関心が低いということがよくわかりました。
つまり食生活が、最重要項目ではないので、後回しにされ、コンビニやスーパーの総菜など、それぞれが好きなものを手軽に調達してすましているということです。
いつでも何かしら食べるものがあるから、楽な方に流され、このような状況になったのでしょうか。
食事の支度が面倒だという声がとても多く、出来るだけ、手を抜けるところは、抜こうとしている様子がよくわかりました。
■家事のなかで一番時間がかかるのは、食事の支度
家事の中で、食事の支度が一番時間がかかるものです。献立を考え、買い物をし、下ごしらえ、調理、配ぜん、食事、後片付けとたくさんの段階と手間がかかります。
これを買ってきたものですませば、食器すら使わず、後片付けも捨てるだけ。
あるセミナーで聞いた話ですが、夕食は毎日ファミレスで家族それぞれが好きなものを食べるという共働き家族もあるとのことです。
食事を家でするよりも、外食にすれば、食事の支度や片づけに取られる時間を、別のことに使えますし、家族と話す時間も取れますから、忙しい人が、時間を作るための苦肉の策?と捉えることもできます。
家での食事も、お皿の数を1枚でも少なくするように、おかずは大皿でそのままみんなでつついて食べる。
大皿も面倒だと、フライパンや鍋ごと食卓にのるというのは、もはや一般的だそうです。
ラジオの番組で、ある芸能人の方が、「家はお箸は食堂みたいに全員同じものを箸立てに入れてある。」と話しているのを聞き驚きましたが、お箸どころか、ご飯茶碗や汁椀も各自専用のものを使う習慣は薄れつつあるようです。
食事は、もう生活の中心になる大切なことではなく、他のもっと優先順位の高い、その人にとって大切なことに時間を使うようになっているようですが、はたしてそれで良いものかと考え込んでしまいました。。
■20年ほど前の我が家のことを思い出してみると・・・
我が家の子育て時代の食事がどんなだったかといわれると、キチンとしていましたと胸を張って言えるほどのことはできず、今でもちょっと後ろめたい気持ちが残っています。
夫が時間的に不規則な仕事でしたので、家族そろっての食事は、週末でなく、不規則にやってくる休みの日以外はありませんでした。
そのせいもあって、普段の夕飯は、子どもに合わせ5時ごろに、簡単にさっさと終わらせていたように思います。夫は、何時帰ってくるのかわからなかったので、その時々で別に作っていました。
何を作っていたかは、ほとんど覚えていませんが、子どもが小さかった頃は、白身魚とか、ゆでた野菜とか大人が食べたいものは、なかなかメニューにできず、いつになったら、自分が食べたい大人の味のメニューを食べられるのだろうなどど思っていました。
ハンバーグなど肉類が食べられるようになり、少しずつ食事らしくなっていったと思います。
当時は、まだ、私自身料理の初心者で、お魚の種類もよくわからず、何をどう調理するといいか、料理本や生協のチラシなどを見ながら、あれこれ考えていました。
毎日いろいろ工夫しながら、子どもも大人も喜ぶメニューが少しずつ増え、家族の好みや定番料理が出来ていきました。
■一日30品目を目安にしていたことも
子育てを始めた頃は、食べ物が身体を作るから、食べ物を管理する主婦の責任は大きいと思っていました。
栄養のバランスや、健康のために一日30品目を取る事を目安にするとよいと聞いて、一日に食べたものを書き出して数えていたこともありました。
30品目となると案外大変で、全然足りない日もありましたが、足りないときに乾燥わかめをちょっと入れる、冷ややっこ、納豆、もずく、めかぶなどを一品増やす、ごまをふるなどの手間のかからない工夫を覚えたのもこの頃でした。
洋食にすると、材料の数が少なくなるので、和食が良いことがわかりました。
お味噌汁の具の種類を増やすと、材料の数が増えるので、具だくさんのお味噌汁を必ず付けて、野菜をたっぷりとる習慣がつきました。
■つらい子育て中の食事の支度
子育て中の食事の支度は、母親も調理経験が豊富でないこともあり、一生懸命作っても、子どもは気まぐれで、食べたり、食べなかったり。好き嫌いや、わがままを言ったりされると、疲れてやる気がなくなることも度々でした。
でも、子どもの反応を見ながら、よく食べたメニューは、定番にし、人気がなかったものは、消えていきました。
たとえば、栗ご飯は、季節の物だからと思い、手間暇かけて作っても、さっぱり人気がなく、がっかりしたものです。家ではもう作っていません。
朝ごはんも、キチンとしなくてはと、お味噌汁、卵焼きなど準備したこともありましたが、朝の時間は家族ばらばらだし、食べ残しを見ると腹が立つし、無理に食べさせるのもストレスになるので、しだいに、パン、果物、野菜、ハム、卵、ホットケーキ、シリアルなどから、食べたいものをきいてそれだけを用意するようになりました。
こんな調子なので、我が家の食事は、昔の日本の家庭の食生活に比べるとずいぶん、家族の勝手で、だらしがないものだと感じていましたが、今ではこの程度は、一般的で、むしろ調理については更に手を抜く傾向にあるようです。
■時代のせいと割り切ってもよいのでしょうか?
ここ10年ほど、パソコンや携帯電話の普及で、便利になったのは良いのですが、生活のスピードが早くなり、多くのことを一度にこなさなければならなくなってきています。
現代の親たちが、食事の支度に手間をかけず何をしているかというと、主婦であってもパートなど仕事に出ているということもありますが、携帯電話やパソコンに向かっている時間が長いようなのです。
家の中がネットカフェ状態という表現は、当たらずとも遠からずと言えそうです。
これを時代のせいだと割り切ってしまってよいのでしょうか?
成長期の身体を作るのは、食べ物だし、大人でも病気をしない元気な身体を作る基本は食なのですから、時間がなくて外食をするにしても、出来あいの総菜を利用するにしても、食や調理についての知識を身につけることを怠ってはいけないと感じました。
便秘の親子がとても多く、それが、野菜不足であることに気がついていないケースが多いというのも驚きました。野菜ジュースを飲ませているから、野菜を取っていると思っている人もいるそうです。
各自が好きなものを、好きな時に、好きなだけ食べるといった食生活をする人たちが増えると、生活習慣病が多くなることは避けられません。
■食を通したコミュニケーションで、心も身体も健康に
便利になったものを、手間や時間のかかる作業に戻すことは、至難の業です。
手間をかけることが楽しく感じられる工夫が必要だと思います。
若い世代に向けて、普段より少し手間をかけて作ったものを、お皿にきれいに盛りつけて、いただくという楽しみを広める活動でも始めなければいけないのかなと考えています。
料理教室ではなく、何人かで一緒に美味しいものを作って、配膳して、おしゃべりしながら、ゆっくりと楽しむ、または、手作りの一品を持ち寄るパーティーをやることも調理をする意欲につながるかもしれません。。
何より、美味しいものが好きになってほしいですね。
洗いものの小皿が増えても、そんなことは、ちっとも気にならないくらい、味だけでなく、目でも楽しむ食事を知ってもらうことが必要かもしれないと、274枚の写真を見ながら思いました。
最後に、この本を読んで、ちょっと希望が持てたのは、男性陣の変化。それは、料理好きのお父さんが増えていることと、夜中に帰って奥さんに食事を作らせるお父さんが今はもう化石になっていることでした。
時には、家族も調理に巻き込んで、わいわい言いながら、食事の準備をし、家族そろって、おしゃべりしながらの夕食は、本当に楽しいものです。
食を通じたコミュニケーションで、心身ともに健康でありたいものだとしみじみ感じました。
「子育ての悩み相談しましょう」コーナーにエッセイを連載中です。みなさまのご意見ご感想をお待ちしています。
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nana
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