力を抜いて,ゆったりと・・・・


第53回 小・中一貫教育 



■義務教育9年間の区切り方
9月末の大きな台風が過ぎた頃から、急に秋が深まり、気温の変化に体調を崩している人も多いようですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今月は、先月のテーマ「コミュニティースクール」に引き続き、小・中一貫教育について、考えてみました。
都市部では、中学受験をする子どもたちも多く、私立の中学のほとんどは、中・高一貫教育をしています。それを考えると、小・中一貫というのは、どうもすっと馴染めないという方も多いのではないかと思います。
義務教育9年間の学校の区切り方、つまり学制については、いろいろと研究がすすめられているそうですが、一番良い区切り方については、結論がまだ出ていないということです。

■小・中一貫教育導入の背景
しかし、三鷹市では、市立の小中学校は、全校、小・中一貫校になり、7つの学園が誕生しました。
以前市内のある会議で聴いたお話しによると、小・中一貫教育導入の背景には、中学入学後の課題があったのだそうです。
いわゆる中一ギャップ、見えない段差と呼ばれるものがあって、子どもたちの中には、中学入学後の学習や生活の変化について行けず、不適応を起こすケースが多くみられました。
その結果、不登校、学習意欲の低下、いじめの問題が出ていたのだそうです。

平成22年8月の文部科学省の統計で、全国の不登校児童生徒数を学年別にみると、6年生が7540人で、中学1年生が、約22384人となっており、中学入学後に学校に行けなくなる子が急に増えている様子がはっきりと数字に表れています。
小・中一貫教育導入の背景には、中学一年時に急激に増加する不登校の問題があったのです。

また、小学校と中学校の連携についても、小学校間、小学校と中学校間の情報の連携や行動の連携に学校側は限界を感じていたようです。
生徒の問題について、相互で責任転嫁があったり、より深い交流や連携の必要性がありました。

そのような背景の中、連携から一貫へシステムが整えられていったのです。
そして、その成果として、三鷹市では、中学に入ってからの不登校の生徒数が減っているということでした。

■三鷹市の学校教育理念とは
各学園は、学園の子どもたちの義務教育9年間に小学校も中学校も責任を持つ、また義務教育9年間に地域も責任を持つというのが、小・中一貫、コミュニティースクールの考え方です。

三鷹市の学校教育の理念は、
・質の高い教育の提供をどこの学校に落ちても保障する(義務教育9年間に責任を持つ)
・地域全体で「共に」子どもを育てる

また、三鷹市立小・中一貫教育校の目的は、義務教育全体の中の学習内容や指導を、各学年間や小・小、小・中間を円滑に接続して行うことにより、子どもたちが、「確かな学力、豊かな人間性、連続した学びの中で、人間力・社会力を形成し社会における自立した一人の人間に成長」することです。

カリキュラムについても、小1〜中3の9年間のカリキュラムで、小・中の系統性や接続のポイントを考えたものとなっているそうです。

■地域で大人に見守られて、子どもが一人前の人間に成長し巣立っていくこと
なんだか、固い話しになってしまいましたが、子どもが、保育園、幼稚園から小学校に上がり、毎日遊んでばかりいたのに、急にお勉強が始まります。
ひらがな、カタカナ、漢字を覚え、足し算、引き算、掛け算と進んでいきます。
うちの子は大丈夫かしら、ちゃんとついて行けるかしらとどの親も心配になりますよね。

うちの子どもたちが小学生のころは、ゆとり教育と称して、教科書も薄く、宿題も少なく、総合学習の時間が設けられました。
この時間は、国際化や情報化をはじめとする社会の変化をふまえ、子供の自ら学び自ら考える力などの全人的な生きる力の育成をめざし、教科などの枠を越えた横断的・総合的な学習を行うためのものでした。

しかし最近は、ゆとり教育の弊害で、学力が低下していると言われ、教科学力が重視され始めています。
総合学習の時間が学力向上に寄与しないのではとの意見や、テストの点数重視よりも総合学習の時間が担う役割が重要との見方もあり、さまざまな意見が交わされているようです。

何が子どものために良いのやら、世の中の流れに親も振り回されてしまいそうです。

”ゆとり”とか”脱ゆとり”などの言葉に惑わされずに、子どもたちが、いわゆる昔でいう「読み、書き、そろばん」的な基礎学力をしっかりと身につけることがまず大切だと思います。
学力だけでなく、こころも体も成長し、自分の進べき道をみつけて、一人前の人間に成長し巣立っていく、その過程を、学校と地域が一体になって見守っていくことが今求められているのではないでしょうか。
さまざまな機会を通して、地域で、多くの大人に関わってもらって成長した子どもは、社会に出た時に、きっと良い人間関係を築ける人になっていると思います。

■小・中一貫、コミュニティースクールの意味
最近は、地域での子ども会活動なども少なくなり、ご近所づきあいもほとんどなく、地域の人間関係が希薄だと言われています。
テレビや新聞を見ると、子どもの虐待やいじめ、家庭内暴力などの事件が絶えず、家庭崩壊ということばすら聞かれます。
子どもたちは、社会の宝ですから、地域の大人が守っていかなければいけません。
子どもたちに関わる大人が増え、学校、地域社会が健全になるならば、今のこの悲しい状況は、必ず改善されて行くと思います。
小・中一貫、コミュニティースクールを通して、学齢期の子どもがいない地域の方々も、学校に関わり、顔の見える地域社会を一緒に作っていくことが出来れば、きっと少しずつ、社会が良くなっていくのではないかと淡い期待を感じているところです。


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nana


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2011年10月号

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