力を抜いて,ゆったりと・・・・


第54回 10年前にタイムスリップ 





■懐かしいお顔
先日、ある行事のお手伝いで、近所の小学校にお邪魔した時、懐かしいお顔を拝見しました。
娘が小学6年生の時の校長先生が、偶然、別の用事で学校に見えていたのです。
今は、退職されて、教育センターお仕事をされているようでした。
わたしの頭の中は、10年前のこの場所にタイムスリップしていました。
というのは、この校長先生については、とても印象に残る思い出があったのです。
そのことを、今日は少し書いてみたいと思います。

■娘の小学校時代の思い出
現在大学4年生の娘は、小学校の時、いわゆる不登校児でした。完全に行かないわけではありませんでしたが、本当に気まぐれに登校するような状態で、年間の出席日数はとても少なく、成績も付けられないという有様でした。
普通6年生の時の楽しい思い出と言えば、自然教室です。
この年は、台風か何かの影響で、夏に一度中止になり、秋に開催されました。
つまり、2回お誘いのチャンスがあったのです。
先生方は、出来ればクラス全員参加を目標に、娘が行けるようにいろいろと工夫をし、行けるように誘ってくださっていたと記憶しています。

わたしも、心の中では、「小学校生活の思い出の自然教室だから、行けるといいなあ。」と願いながらも、どうするのだろうと、じっと見守る日々でした。
自然教室の全体説明会が、体育館であり、その日、娘は登校していました。
行く気になったのかなあと、心密かに喜んでいたところ、電話のベルが鳴りました。
出てみると、担任のS先生。
「Kちゃんが、お家に向かって全速力で走って帰っていましました。お母さん、お家で待っていてください。」とのこと。
どうも、説明会の居心地が悪かったのか、脱走を図ったようでした。
どんな顔で、娘を出迎えたのか、もう覚えていませんが、不登校生活ももう長く、カウンセリングを受けた経験も豊富でしたので、とりあえず、叱ってはいけない、受け入れなければと、「よっぽど嫌だったんだね。」と笑って迎えたのではと思います。

娘の前では、平静を装っていましたが、心の中では、「どうして、みんなと同じことが出来ないのだろう?わたしが、わがままに育ててしまったのではないだろうか?」と、折りにふれては、悩んでいました。

この子は、このまま学校に行かずに育って行くのだろうか? 学校というレールに乗らない人生もあるのだろうから、そういう覚悟もしておかなければと自分に言い聞かせていました。
この頃は、いつも気持ちが落ち着かず、心の中に重い石を抱えているような感じがして、毎日がとても辛かったです。

■夫婦で校長面談
当時の校長先生のお顔を見て、10年前のあの頃のことがまざまざとよみがえってきました。
結局行けなかった自然教室も終わり、卒業式に向かって準備を始める頃、校長先生から、夫婦で面談をしたいという知らせが来ました。
いわゆるお呼び出しのようなものだと思います。
学校に行かない子どもを育てているので、どのような家庭環境か実際に子どもの両親に会ってお話しをしたいということなのでしょう。
多忙だった夫と日程を調整して、夫婦でドキドキしながら校長室に伺いました。

教育センターの教育相談に私自身が、何年も通っていることなども含め、娘の毎日の生活の様子や、今後の進路についてなど、お話ししたと思います。
その時先生は、「お二人がしっかりとお子さんを見ていらっしゃるから、心配しなくても、あの子は大丈夫ですよ。」とおっしゃってくださいました。
わたしたちは、親の育て方などにご注意をいただくのではと心配していたので、拍子抜けしたと同時に、今の苦しい状況を理解してくださることに感謝しました。
そうはいっても、このままの状態がずっとづづくかもしれないという不安が重くのしかかっていたので、きっと暗い顔をしていたと思います。


■思わぬところで近況報告
さて、わたしの用事も終わり、ふと見ると、先生の方もお仕事が終わられたようなご様子で、近くにいらっしゃったので、帰り際に思い切ってお声をかけました。
多分覚えていらっしゃらないだろうと思いましたが、先生の記憶力は素晴らしく、覚えていてくださいました。
娘が、今はすっかり元気になり大学生活を送っていることをお話した後、「そう言えば、Kちゃん、自然教室は、行けたかしら?」と。
やはり、説明会を脱走したことが、先生の記憶に、鮮明に残っていたのでしょう。

「あの子は、ヘナヘナっとした不登校児ではなく、元気な不登校児でしたから、大丈夫だと思っていました。もう大学生ですか・・・」と感慨深げな先生。
「そうおっしゃられても、当時はとても不安でした。」と、わたし。
「良い話しを聞けて良かった。」と、先生はとても嬉しそうでしたので、こちらも思わぬところで近況報告が出来てラッキーだったなあと思いました。
先生が、親として未熟だったわたしたちを、批判せずに認めてくださったことは、わたしたちの親としての自信につながったのではと有難く思います。

■親の思うように、子どもは育っていかないもの
ほんの10年ほど前のことですが、振り返るとずいぶん昔のように感じます。
大人の10年は、それほど変化がありませんが、子どもの10年の成長は、本当に大きく、改めて当時を思い出し感無量になりました。
そして、子どもは、親が思うようには、育っていかないなあと、今更ながら思います。
こんな風にとかあんな風にとか、良くも悪くも親は、色々考え、期待もしますが、子どもは、見事に裏切るものです。

どんな風に裏切ってくれるのか、楽しみに子どもを育てるのも悪くないかもしれません。
目先の結果を追うのではなく、5年10年という長いスパンで子どもを見ることも大切かなと思います。
あたたかくそばで見守って、応援しているよというオーラを出し続けることくらいしか親にできることはありません。
子どもの人生を親が生きることは出来ませんから。

多くの方に見守られ、励まされて、わたしたち親も子どもたちも、これまでやって来れたのだなあとつくづく感じた一日でした。

最後に、子どものことで何か困っていたり、悩みがある時は、わたしもかつて通った教育センターの「教育相談」他、市内には沢山相談するところがあります。
このコーナーでも紹介していますので、ひとりで悩まずに、電話をして足を運んでみてくださいね。
きっと相談員の先生方が力になってくださると思います。


 「子育ての悩み相談しましょう」コーナーにエッセイを連載中です。みなさまのご意見ご感想をお待ちしています。
  
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nana


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2011年11月号

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