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第64回 『子どものこころは食卓で育つ』を読んで

■子どもと食事の大切さについて

寒さも日ごとに増し、お鍋のおいしい季節になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
このエッセイで、食事の大切さについて、折に触れて書いてきましたが、『子どものこころは食卓で育つ』(桐渕壽子 文芸社)という本を、偶然書店で見つけました。
著者の桐渕壽子さんは、農学博士で長年食物学の研究を続けてきた方です。
また、子育てをしながら、仕事も続けた経験もあり、専門家としてまた、主婦、母親としての視点からも食事の大切さ、とりわけ子どものこころの育ちと食事の関係を専門的な知識も交えて、わかりやすく書いています。
読みながら、私自身のこれまでの経験を顧み、共感すること、納得することばかりで、ぜひ今子どもを育てている方々に読んでいただきたいなあと思いました。

■家庭はこころの教育の場

この本は、10年以上前に書かれています。
きっかけは、1997年の神戸の少年の殺傷事件など凶悪な事件が続いて起き、今もなお大きな問題となっている「いじめ」がますます陰湿になりなかなか解決できないことに著者が心を痛めてのことでした。
「こころの教育」が盛んにいわれさまざまな対策がされていますが、なかなか改善されません。教職員の研修などよりももっと大切なことは、家庭での食事だと筆者は考えています。

事件を起こした子どもたちがなかなか心を開かないのは、人間対人間の関係をうまく作れていないということが原因です。現代の家庭での子どもの教育のひずみがここにあります。
親と子が本音で話せる場が必要なのです。明るい食卓を囲んでの食事が最もよい対話の場となるのです。「ああ、おいしかった」という気持ちになったとき、人のこころは自然に開きますし、話も弾みますよね。
著者は、家庭での食事が、「身体的な健康ばかりでなく、人々の心をなごませ、家族とのつながりを豊かにし、社会を明るくする」と言っていて、わたしも全く同感です。

■現代の食事の問題

戦後の食糧難の時代は、終わり、空腹を満たすことが先決ではなくなり、栄養のバランスや食生活を楽しむ余裕が出てきたのが、昭和30年ころのことだそうです。
食糧事情が安定してくると、欧米型の食生活にあこがれを持ち、ご飯中心の高炭水化物中心の食生活から脱して、たんぱく質を多くとるようになり、バランスが取れた食生活になってきました。
それが、昭和55年頃で、「日本型食生活」と呼ばれるたんぱく質、脂肪、炭水化物、エネルギー栄養素のバランスにおいて、諸外国に比べて理想的な状態の食生活となりました。
つまり、日本人の食生活は、健康的なはずなのです。
しかし、人々は忙しくなり、外食産業が発展し、ファミリーレストランやコンビニができ手軽に食事をとれるようになりました。
統計によると家庭で食事する人が1/3、外食する人1/3、中食(コンビニなどの利用)1/3だということです。
そして、好きなものを好きな時に、好きなだけ食べるという食生活の結果、ビタミン不足やカルシウム不足がおきているそうです。
食べるものは豊富にあるのに、栄養のバランスの悪さが、問題になっています。
また、栄養面だけでなく、家庭での食事の機会が減ることによる、精神面での影響が大きいことは言うまでもありません。

■忙しいときは忙しいなりに、料理が下手な人は下手なりに

著者は、お子さんがお一人で、三人家族。子育てをしながら、仕事を続けてこられました。お仕事柄食生活の重要性をよくご存知なだけに、知恵と工夫を凝らしながら、家族との食事を大切に暮らしてこられた様子が綴られていました。
忙しいなら忙しいなりにやれる範囲でというスタンスが感じられます。
離乳食づくりに始まり、幼児食の時期のことや、お弁当作りの工夫、留守中の家族への配慮など、参考になることもっと若いころに知っておけばよかったこともたくさん記されていました。
繰り返して書かれているのは、家庭はリラックスできる場、食事をしながらの他愛ない会話こそが子どものこころを育てているということです。

■満腹感でなく満足感を得られる食事

お腹がすいているときは何を食べてもおいしく感じますが、それは一瞬で、その場しのぎのあるものでお腹いっぱいになってもなんだか不満が残る経験をしたことがありませんか?
わたしは、家族の事情で一人の食事が増え、家を長期間留守にすることも多くなり、冷蔵庫の中にあるものを始末しよう何も考えずに食事の準備をしたことがありました。
ご飯とおかずが何かしらあれば、一人分だし何とかなると思っていたのです。
その日冷蔵庫にあったのは、しらす、ネギ、卵、大根、長いも。おまけにデザートの果物もりんご。
全体が白い食事になってしまい、自分でもビックリして、悲しい気持ちになりました。
栄養や味についてはあまり問題はないと思いますが、見た目が味気なく、お腹はいっぱいなのに、満足感のない食事でした。。
それでも一緒に、ああだこうだと言いながら食べる家族や仲間がいれば、きっとこんな食事でも悲しくはならなかったかもしれません。
食事は、空腹を満たすだけでなく、食器や配膳などの見た目や、彩り、食卓を一緒に囲む人との会話などで、こころも満たしてくれるものだという良い経験になりました。
また満腹感でなく満足感のある食事をすると、間食をしなくなるのだそうです。

■栄養のバランスの悪さを解消するには

料理が好きな人は、あまり心配いらないのかもしれませんが、最近では、ファストフードやコンビニで手軽に食事を済ませられるせいか、食事作りが苦手だったり、面倒に感じる人が多くなっているように感じます。
以前このエッセイの”第51回 今どきの家族の食事事情に思う” で取り上げた本『家族の勝手でしょ!―写真274枚で見る食卓の喜劇―』も、そんな現状を映し出していました。
著者が、何をどう食べたらよいかわからないという学生とのやり取りなどから気づいた栄養のバランスの悪さをどのように解消するかのアドバイスは、とてもわかりやすく参考になります。
これは、本当に基本なので、参考までに紹介しておきます。一人暮らしの娘にも教えようと思います。

@三食きちんと食事をする。
A一日のうち、肉か魚か卵料理をどれか食べること、同じものが続かないようにこれを繰り返す。今日豚カツを食べたら明日は魚(煮たもの、塩焼、洋風、中華風何でもよい)次は卵料理(オムレツ、親子丼)などというように。
B野菜をできるだけたくさん食べること。生野菜のサラダもよいが、いためたり、ゆでたおひたしのようなものが多く食べられる。
Cできたら果物を必ず食べる。
D家でビールなどを飲むときは、スナック菓子はやめてチーズなどにすること。
E牛乳は、毎日200mlは飲むこと。
以上を実践したら、数か月でこの一人暮らしの男子学生は、体調がぐっと良くなったそうです。
栄養素のこととか、一日30品目とか考えていると、難しくなってしまうと思う方には、とりあえずこの6項目を実践することから始めると良いかもしれません。


■食べることが好きな子どもに

自分のことだけ考えていればよかった独身の頃から、結婚して子どもを育てることで、私自身も食についての考え方が変わり知識が増えたことは事実です。
そして、今一番強く感じるのは、食べることで家族のきずなができ、育ったということでした。
『子どものこころは食卓で育つ』という本のタイトルのように、家族と食事をすることや家族のために食事の支度をすることが今でも一番の楽しみであり、幸せを感じるときです。
食事をしながらのなにげない会話が、何よりも大切で、こころのつながりを作るものという著者の考えにわたしも大賛成です。

さまざまな家庭の事情で、家族そろっての食事が難しいときでも、子ども一人で食事をさせないように、一緒に食べなくてもそばにいて話し相手になるとよいというのは、小学生以上の子どものいる父母には参考になる意見だと思います。
つきっきりで食べさせないといけない時期を過ぎて、子どもが一人で食べられるようになると、つい食べ物を与えっぱなしで安心しがちではないでしょうか。

食事をすること、食べることが好きな子どもに育てることが、良い家庭の基礎になり、子どものこころを育て、キレやすい子どもや、いじめをする子どもをなくしていくことにつながり、社会を明るくしていくと私も思います。
毎日の小さな積み重ねですが、三度が無理でしたら一日一度でも食事を家族と一緒に楽しむことで、こころが豊かになるならば、こんなにいいことはありませんね。
自分のできる範囲でやってみませんか。
この本の後半は、料理が苦手な人にもすぐにできる、簡単でおいしいレシピでいっぱいでした。

■「今日のごはん何にする?」

子どもや夫との会話がないと悩んでいる人がいますが、そんな時にわたしは、「今日のごはん何にする?」と聞くことをおすすめしています。
どうせ「何でもいい。」という答えが返ってくるとあきらめないで、そんな時には、「○○ちゃんの好きな、△△にする?」とか、相手の好きなものを把握しておいて、聞いてみると会話が続きます。
ちょっと大げさですが、わたしは、食べ物の話題で家庭の危機を何度か救われたような気がしますので、試してみてください。
食を大切に考えることは、家族のつながりも強くするし、人生を豊かにすると思います。


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nana


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2012年12月号

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