第68回 子ども・子育て支援の意義と必要性
■子ども・子育て支援新制度フォーラム
桜の開花が早かった今年、入学式まで桜は待ってくれなかったようですね。
平年よりも寒さが厳しかった冬ともさようなら、季節とともに新しい気持ちになれるときです。
今年度から準備期間に入る、「子ども・子育て支援新制度」について、1月頃から何度もフォーラムや勉強会が開かれています。
3月10日にも、内閣府、文部科学省、厚生労働省主催の「子ども・子育て支援新制度フォーラム」が、虎の門の日本消防会館で開催されました。
三鷹市長もパネルディスカッションに参加されるということで、私も新しい制度について情報収集を兼ねて行ってきました。
■子育ては、のど元過ぎれば・・・
このエッセイでも、新制度の話が続いていますが、子育てを始めたばかりの方や、これまで、子育て支援にあまり関心のなかった方々にとっては、新しい制度をどうしてつくらなければいけないのか、疑問に感じる方も多いと思います。
わたし自身も、もし子どもを産み育てていなかったならば、また子育て支援の市民活動に関わるチャンスがなかったならば、それほど気に留めなかったかもしれません。
昨年「みたか・みんなの広場」という市内の様々な市民活動団体で構成する組織の立ち上げのとき、上野千鶴子さんに講演をお願いすることができ、お会いするチャンスがありました。
構成団体がそれぞれどんな活動をしているか紹介したのですが、その時、上野さんに「子育て支援活動をしている方々は、のど元過ぎれば・・・という感じで、子育てが終わったら他の活動をする方が多いのに続けていらっしゃるのですね。」と言われました。
子どもたちが成人して時間がたつにつれ、その言葉が身に沁みるようになって来ています。
「のど元過ぎれば熱さを忘れる」という言葉のとおり、子育ては確かに大変だし時間もかかるけれど、ある程度大きくなってしまえば、どんどん楽になるということを身をもって体験した今、この活動を続ける意味を自分に問うことも多くなりました。
子育ては、時代によって変わること、変わらないこといろいろあるけれど、現役であることとそうではないことの間には大きな隔たりを感じます。
でも、「のど元過ぎて忘れてしまえば・・・、または終わったのだから・・・」とそのままにしておけば、次の世代はまた同じことを繰り返すのではないかということへの危機感があります。
市民活動の素人ながら10年以上続けてきたのだから、これまでの経緯を、これからの方々に伝えなければと思っています。
■仕事と子育てのバランス
わたしが、子育てコンビニの活動を始めた13年ほど前を思い起こすと、子育て支援とは何かも知らず、今自分たちができることから実践でやり始め、それが結果的に支援という言葉と結びついてきました。
自分自身が、子育てを始めたころ、子育てと仕事は、大変かもしれないけれど、なんとかクリアできるものと漠然と思っていました。
妊娠を知った時も、仕事と両立するつもりで、いろいろ調べて、準備万端整えたつもりでした。
産んだ後も、早く産休が終わって仕事復帰したいと本気で思っていました。
でも、復帰してみて、それがどれだけものかと思い知るまであまり時間はかかりませんでした。
自分のこれまでの価値観が音を立てて崩れたようなそんな感じすらしました。
何日も眠れずに、どうするべきかを悩み、とりあえず一度仕事を辞める決心をしたのです。
今振り返って、仕事を辞めたことについて、後悔はありません。わたし自身の当時の環境と自分の性格を考えると、両立は不可能だったということが今はわかるからです。
今から25年以上前は、そんな時代でした。
転勤が多いパートナーをお持ちの方や、障がいや病気がちのお子さんをお持ちの方、高齢者と同居している方など、家庭の事情がそれぞれにあります。
これまでは、ほぼ女性が、”子育て”や”介護”を担ってきました。
それが女性の生き方をかなりの部分で制限してきたことは否定できません。
これから、子どもを産み育てる若い世代には、そのような悩みを持ったり二者択一を迫るような社会ではいけないのではないかと思います。
そのために必要なのは、やはり新しい制度と社会全体の理解だと考えています。
■「本当にかわる?日本の子育て」
フォーラムに話を戻すと、内閣府匿名担当大臣(少子化対策)森まさこさんのご挨拶があり、その後「子育て支援に新たな時代を迎えて」という題で、大日向雅美先生の基調講演がありました。
そして、子育てブログが好評のくわばたりえさんのトークショーが20分ほどあってから、パネルディスカッションと続きました。
コーディネーターは、NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事長奥山千鶴子氏、パネリストに三鷹市長清原慶子氏、全国認定こども園副代表理事古渡一秀氏、くわばたりえ氏、マギー審司氏というメンバーでした。
テーマは、「本当にかわる?日本の子育て」でした。
■子育ては、「楽苦美」です!
3時間もの長いフォーラムをここで詳しく報告することはできませんが、大日向先生は、少子化を巡る日本の現状で、結婚、出産、子育てを若い世代は望んでいるのにかなわない理由として、雇用の不安定や仕事と子育ての両立の困難さ、子育て支援の質や量の不足、家族や地域環境の変化などをあげておられました。
1990年の合計特殊出生率1.57ショックから、国をあげて様々な施策がされ、たくさんの会議を重ねて、子ども・子育て支援新制度の創設に至っています。
これまでの取り組みと、これから新しい制度でどうなっていくのかを話されました。
会場に向かって「子育ては楽しいですか?つらいですか?」との問いかけがあり、ご自分の経験を振り返り改めて「子育ては、楽苦美です!」と現役世代を励まされました。
ご自身も仕事をしながらの子育ての大変さに「いつになったら楽になるのだろう」と思っていたけれど、周りの方々に支えられ、上手に甘えることも覚えて乗り切ってきたこと、
そして、「いつかゆとりを持てる時が来る」と当時お子さんをお世話してくださった子育ての先輩からかけられた言葉を今はご自身が伝えているということでした。
■子育て支援の意義や必要性
パネルディスカッションは、子育て真っ最中の、お笑いのくわばたりえさんやマジシャンのマギー審司さんが、固くなりがちな雰囲気を笑いで和らげていました。
清原市長は、これまで進めてこられた市民参加のまちづくりを子育ての視点からお話しされ、新しい制度のもとでは、市民の声とりわけ表に出にくい声なき声が反映されることが大切だと言われました。
認定こども園についての古渡氏のお話から、認定こども園は、地域のネットワーク拠点ともなることや子どもの居場所の確保につながることもわかりました。
森まさこ大臣もご自分の子育て経験をご挨拶で話され、大日向先生も清原市長も子育ての時代を振り返って体験を語られました。
普段は、このような場でプライベートなお話はあまりなさらない方々と思いますが、会場と気持ちの共有ができてとてもよかったと思いました。
またマギー審司さんが、育児に疲れてイライラしている奥さんとコミュニケーションを取る良い方法として、一日1回10秒でも奥さんをギュッと抱きしめると良いという話をされると、くわばたりえさんが、「わたしも一日中子どもと二人きりで、夫とはすれちがいで話もできなことがある、10秒じゃたりない1分でも抱きしめてほしい」と言いながら、涙声になるシーンもあり、
小さな子どもを育てることは、楽しいけれど、ひとりではつらいし、助けがほしい、そしてそのことを大きな声で言ってもいいのだというメッセージになりました。
くわばたりえさんの、「100点ママをめざして一人で頑張りすぎて自分を追い込んでいたけれど、今は0点にならないママをめざしている」、「パパや周り人たちのちょっとした協力が嬉しいし助けになる」、「ママにとって毎日が楽しく思えることが子どもにとっても幸せだ」という子育て真っ最中の生の声は会場のお母さん方の胸に響いたと思います。
子育て支援の意義や必要性が、今やっと大きなムーブメントになりつつあります。
だれでもこれまでやってきたことだから、一時期のことだし終わってしまと忘れてしまうから、あまりにも日常的なことだからと重要視されなかった子育て支援ですが、”介護”と同様家庭だけで支えられるものではないことが社会の共通認識になるといいですね。
日本の子育ては、本当に変わるのか、そのターニングポイントに来ているように思います。
みなさまのご意見ご感想をお待ちしています。
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子育てコンビニでは、毎月「子育てコンビニひろば」という集まりを開いています。子育てコンビニのスタッフ以外は毎回新しい方の参加があり、いつも同じメンバーの集まりではありません。
悩み相談に行くほどでもないけれど日ごろ気になっていることなどを、みんなで話してすっきりすることもあるようです。どうぞお気軽にお出かけください。
皆様のご参加やメールでのお便りなどお待ちしています。
nana
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2013年4月号