第79回 「訪問型子育て支援・ホームスタート」をご存知ですか?
■いよいよ桜の季節
大雪のせいか、いつもより長く感じた冬でしたが、白モクレンも見事に咲き始め、東京でも桜の開花宣言がでました。
卒園、卒業、そして入園、入学と子育ての節目を迎え、子どもの成長を改めて振り返り胸を震わせた方も多いかと思います。
本当に子どもの成長には、我が子でなくても感動を覚えます。
2月4日に三鷹市公会堂別館さんさん館で、「家庭訪問型子育て支援・ホームスタート」の講演会が開催され、NPO法人子育てコンビニも協力団体としてお手伝いをしましたが、今月は、そのホームスタートという取り組みについてご紹介したいと思います。
■訪問型子育て支援ボランティア
ホームスタートは、約40年前にイギリスではじまった訪問型子育て支援です。日本でも10年ほど前に紹介され支援活動が始まっています。
このしくみは、未就学児が1人でもいる家庭に、研修を受けた地域の子育て経験者が訪問する「家庭訪問型子育て支援ボランティア」です。
「週に一回2時間程度、訪問し、「傾聴」(気持ちを受け止めながら話を聴く)や「協働」(育児家事や外出を一緒にすること)をする新しい家庭訪問型子育て支援ボランティアのしくみです。」(ホームスタートジャパンパンフレットより引用)
引っ越してきたばかりだったり、初めての子育てだったり、小さなお子さんを育てていて周りに頼れる人がいない、家のなかにこもりきりになって心細い思いをしている子育て家族をボランティアのホームビジターが訪問し、親子と一緒に時間を過ごしたり、時には一緒に公園や子育てひろばに外出するなど、昔だったら実家のお母さんやお姑さん、またはご近所のおばさんがしていたようなことをするといったしくみです。
ホームスタートの仕組みについて詳しくは、ホームスタートジャパンのサイトhttp://www.homestartjapan.org/ をご覧いただければと思います。
■どうして今ホームスタートが必要なのでしょうか?
10年以上前から、子育て支援の活動をしてきましたが、現代社会は、子育てに向いていないし、子どもを初めてもつ家族にとって、とても厳しい環境だということがとてもよくわかりました。
このエッセイでもその子育て環境を何とか良くしようとさまざまな取り組みがされてきたこと、そして少しずつですが改善していることをレポートしてきました。
しかし、先日埼玉で起きたネット上の仲介サイトを通じてベビーシッターに預けた2歳男児が亡くなるという事件にも表れている様に、経済状況が厳しい中子育て中の主に母親の就労環境はますます過酷にになっています。
ワーキングマザーのための保育施設の問題はさておき、在宅で子育てしている家庭についてもまだまだ整えていくべきことが多々あります。
先日、虐待防止に関する勉強会に参加しましたが、”子どもの事故の7割が家庭内で起きている”事を知り、家庭の養育支援の重要性を強く感じました。
事故予防には、原因へのアプローチ、人へのアプローチ、環境へのアプローチと3つのアプローチがあるそうです。
事故を予防するには、親や個人の責任を問うのではなく、社会の責任として、事故を予防出来るようなアプローチをしていく必要があるという事です。
わたしたち素人は、妊婦さんや未就園児の保護者対象の事故防止の勉強会をしなくてはとつい思いがちでですが、子どもの事故防止についての教育的なアプローチは、効果が少ないわりに大変なのだそうです。
倒れてもお湯がこぼれない電気ケトルや指をはさまないクローゼット扉を普及するなど、事故の原因へのアプローチが最も効果のある事故予防だという事でした。
そして、環境へのアプローチですが、小さな子どもを育てる環境として家庭内が適切かどうかについては、子育て家庭に踏み込むことができないのでアプローチができないという事でした。
家庭内で事故が起きていることと、この小さなお子さんを育てている家庭内の環境が、事故を防げる状況になっているのかが大きな問題です。
赤ちゃんから未就学のお子さんがいる間は、危険なもの、子どもが間違って口に入れてはいけないものを子どもの手の届かない所に置くか、子どもが入れない場所に置くなどのさまざまな工夫をしています。
そういう知恵がどの程度、これから子育てをする家庭に継承されているのかがとても不安です。
家庭訪問型の子育て支援の必要性は、こんなところにもあるのではないかと思います。
■訪問する支援
2月のホームスタートを紹介する講演会では、特定非営利活動法人ホームスタート・ジャパン代表理事で大正大学教授の西郷康之先生が、「ホームビジティング(訪問型子育て支援)という新しいアプローチ ホームスタートとは!?」と題して、「支援が届いていない家庭とはどんな家庭だと思いますか?」との問いを参加者で考えることからスタートし、子育て支援の現状や今の施策では足りないところをどう埋めていくのか、そこにホームスタートのしくみがどんな効果をもたらすのかをお話しされました。
その後、「ニーズに向き合い続けてたどりついた予防型支援 アウトリーチこそ家庭をひらく」と題して、特定非営利活動法人子育てネットワーク・ピッコロの小俣みどりさんが、清瀬市での取り組みについて事例を交えてお話ししてくださいました。
会場では、市内や近隣市で子育て支援に関心のある方々が多数集まり、熱心にお話に耳を傾けていました。
先日NHKの情報番組「あさイチ!」で、「ホームスタート」が紹介されました。
1歳半くらいのお子さんを育てているご家庭にホームビジターの方が、訪問して一緒に家事をしたり、遊んだり、公園に出かけたりする様子を見ることができました。
孤独で不安な育児をしているお母さんが、ビジターさんの訪問を心待ちにし、お母さんやお子さんも嬉しそうでほっとした表情になるのと同時に、ビジターさんもとてもやりがいや満足感を持たれている様子が印象的でした。
子育ての経験がある方の、子どもへのことばかけの仕方や、お母さんのちょっとした不安を聴いて、専門家としてのアドバイスではなく、共感して、経験から出る知恵を伝える大切さがよく伝わってきました。
■消費税増税と子育て支援
4月から消費税が上がり、駆け込みで買い物をした方も多いかと思いますが、その一部は2015年にスタートする子ども・子育て支援新制度に使われるという事をご存知でしょうか?
新制度には1兆1000億円の財源が必要とされていましたが、消費税から確保できるのは、7000億円で、残りの4000億円のめどが立っておらず、7000億円でできるメニューに絞り込んだ形となって、十分な改善がされないのではないかと心配の声がきかれます。
せっかくの消費税増税ですから、増税分が子育て支援にどのように生かされているのか、市民がちゃんとウォッチしていかなければいけません。
ホームスタートの仕組みが、市民のボランティアの力を生かしながら、三鷹でも実現できるように、進めていきたいと考えています。
みなさまのご意見ご感想をお待ちしています。
子育てをしていて、嬉しかったこと、驚いたこと、困ったこと、つらかったことなど、子育てをして感じた様々なことを、みんなでおしゃべりしてみませんか?
子育てコンビニでは、毎月「子育てコンビニひろば」という集まりを開いています。子育てコンビニのスタッフ以外は毎回新しい方の参加があり、いつも同じメンバーの集まりではありません。
悩み相談に行くほどでもないけれど日ごろ気になっていることなどを、みんなで話してすっきりすることもあるようです。どうぞお気軽にお出かけください。
皆様のご参加やメールでのお便りなどお待ちしています。
nana
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2014年4月号