第84回 一日一日を大切に!
■自然災害が多い夏でした
新学期が始まりましたが、みなさまどんな夏をお過ごしでしたでしょうか。
このところの異常気象で、大雨、洪水の被害が相次ぎ、夏休みの最後の頃は、多くの犠牲者が出た広島の土砂災害のニュースに、心が痛む日々でした。
とりわけ、小さなお子さんを突然の災害で失ったご両親の悲しみは、想像もできません。
また、小さなお子さんを持つお母さんが、避難する時に友達と携帯で連絡を取りあい、お互いに自分に何かがあった時は、子どもをよろしくと友だち同士でお願いし合ったというエピソードは、子を持つ母親ならではの切羽詰まった想いを感じました。
母親は、どんな時でも子どもの命を守ることだけを本能的に願うものです。
■子育てが不安になる時代
また、この夏は、高校生が起こした痛ましい事件や、日本人男性がタイで代理母を使って子どもをたくさん産ませていた事などが話題となり、なんともやりきれない思いでいっぱいでした。
平成9年の神戸連続児童殺傷事件が起きた頃は、まだ家も子育て中でしたので、様々な意味で大きな不安を感じました。
我が子の安全ということや、思春期の子どもを育てる事への不安、親として自信を持てずに非常に苦しい思いをしていたことを記憶しています。
あれから、15年ほどの年月が経ち、どうにかわが家の子どもたちは成人しましたが、この間発達したのがインターネットです。
このめまぐるしい時代の変化に、今子どもを育てている親たちは、どんなにか心細く感じていることでしょう。
■顔を合わせて話すこと
なんだか暗い話題になってしまいましたが、こんな時に一番大切なのは、やはり家族や友人、地域の方々との繋がり、顔を合わせて話をすることだと思います。
一番の基礎となるのは、親子や夫婦間のコミュニケーションですが、そこからスタートして、友人や会社、地域の方々と顔を合わせてお付き合いをすることがとても大切です。
痛ましい事件が起きるたびに、その事件の背景を考えますが、「犯人の心の闇」と言う表現の奥には、家族に本当の意味で愛されることがなかったという事実があると思うのです。
わたしは、子育てをしていて不安になる時は、まず家族を大切にしようと考えて実行していたように思います。
子どもが話しかけてきたら、忙しくても手を止めて話を聞く、家族が出かける時は必ず玄関まで見送るなど、小さなことですが、自分を大事にしてくれているという事が相手に伝わると関係がうまく行ったように思います。
また、先日テレビを見ていたら、学校の先生が忙しくて子どもと向きあえないというテーマの討論で、ある事例として、職員会議を少なくして担任がその分子どもと話す時間をたくさん取るようにしたら、いじめ、暴力、不登校などの問題がかなり解決したという事でした。
このような話を聞くと、顔を合わせて話をすることが今とりわけ必要だと強く感じます。
■家族が一緒にいられる時間
小津安二郎監督の「彼岸花」という昭和の映画を観ました。
1958年の作品なので、出てくる親子の子どもの方が、私の親の世代というかなり古い話です。
娘の結婚を巡る、親子や家族の心模様が描かれていて、昔と今の違うところ、同じところなどなかなか興味深く面白かったです。
お見合い結婚が普通だった時代に、恋愛をして自分で自分の人生を決めるという娘と父の葛藤があるのですが、母親が娘と父親の間にうまく立ち入って、
父親の矛盾に満ちた気持ちを呑み込み、娘と父親が和解していく過程は、家族同士がそれぞれの立場で思いやりの気持ちをもっていて温かいものを感じました。
カウンセリングなどがなかっただろう時代の家庭の上手なコミュニケーションの取り方に感心しました。
この映画に出てくる主人公の母親は、戦争の時、戦争は嫌だったけれども、防空壕で親子四人で一緒にいられた時が、一番幸せだったと言っていました。
家族そろって旅行に行けるのがあと何回あるかと数えている様子にとても共感しました。
わが家もそうですが、家族はやがて、ばらばらにになっていきます。
知り合いの6人家族のお宅も、お子さんの成長とともに、一人減り、2人減りで、ご主人が単身赴任となり、今は一番下のお子さんと2人になってしまったと、寂しそうに話していました。
家族が一緒にいられる時間は思ったよりも短く、いつの時代もその時が母親にとって幸せな時間なのだなと思いました。
蛇足ですが、この映画でも、「子どもは思い通りに行かないものだ。子育ては大変だ。」と、昭和のお父さんたちが話していたのに苦笑してしまいました。
■一日一日をを大切に
新学期が始まり、落ち着いてくると、秋の行事が始まります。
この夏の身近に起きたことや社会的な出来事に思いを巡らすと、無事に夏休みを終え、家族が元気でいられることがいかに有難く幸せな事かと感じます。
100歳近くになると、人生何があっても驚かない境地に至るそうです。
還暦を迎えはしましたが、そんな心もちになれるまでには、まだまだという事なのでしょう。
ざわざわと心の中にある様々な想いの整理をしていかなければいけません。
あれもしよう、これもしようと思っていたのに、あっという間に過ぎ去った夏を反省しつつ、一日一日を大切に生きなければと思う今日この頃です。
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nana
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2014年9月号