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第85回 子どもと家族にやさしい社会フィンランドから学ぶこと

■安心して楽しく子どもを育てられる社会
思ったよりも涼しい日が多い9月でした。
気がつけば運動会シーズン到来、子ども達が一生懸命頑張る姿、毎年成長していく姿は、親だけでなく周りの大人たちにたくさんの感動をくれます。
来年から子ども・子育て支援新制度がスタートします。この制度については、これまでも何度か取り上げてきましたが、まだまだこの制度がどういうもので、これからどうなっていくのか良くわからないのが現状でしょう。
「すべての子どもたちが、笑顔で成長していくために。すべての家庭が安心して子育てでき、育てる喜びを感じられるために」できた新制度ですが、ここまでの動きをウォッチしてきた私自身も、子どもを育てている家庭にとって、どんな社会がいいのか、どうすれば安心して楽しく子どもを育てることが出来るのだろうかと改めて考えてみました。

■社会のまんなかに赤ちゃんをすえて育みたい
先日偶然書店で手に取った本「子どもと家族にやさしい社会 フィンランド 未来へのいのちを育む」(明石書房 2009)を読んで、小さな希望が見えたように思いました。
北欧は、男女平等で、子育て支援も充実していて理想的な国だとよく言われます。
わたし自身勉強不足で、具体的にどこがどう日本と違うのかなど比較したり、調べたりしたことはありませんでした。
この本は、「社会のまんなかに赤ちゃんをすえて育みたい」という思いで活動をされている「世界乳幼児精神保健学会」に関わる慶応義塾大学医学部小児精神保健医渡辺久子先生が編集されたものです。
渡辺久子先生のお名前を見て、2005年に三鷹市で開催された次世代子育てシンポジウム「自分と出会う、地域と出会う まちづくりと子育てネットワーク」で講演「母から子へ 心の子育て」を拝聴し、とても感銘を受けたことを思い出しました。

■お母さんがしあわせなら、赤ちゃんもしあわせ
フィンランド始め、北欧の国々は、日本と同じような工業化社会ですが、赤ちゃんや小さな子どもたちを社会の中心において長い間努力を続けています。
この本は、子どもを社会の中心にすえたフィンランドの子育てや子育て支援の仕組みを紹介しています。
執筆者は、渡辺久子先生の他、「お母さんがしあわせなら、赤ちゃんもしあわせ」との考えから、赤ちゃんの研究をこころざし、社会全体で子育てをサポートする仕組みづくりをめざした活動を世界中で行っている、
トゥーラ・タンミネンさん、その後継的研究者、子どものメンタルヘルスケアに取り組んでいるカイヤ・プーラさん、フィンランドの社会福祉を研究する高橋睦子さんです。
フィンランド在住の子育て経験者藤井ニエメラみどりさんのコラム「安心・安価で快適な出産」なども織り込まれ具体的に出産育児にかかった費用や、出産を迎える女性に配られる育児パッケージの内容にも触れてあり、興味深いものでした。
細かな内容についてはここでは紹介できませんが、この本を読んで今後の可能性を感じたのでこのコラムで紹介しようと思いました。

■フィンランドから学ぶこと
フィンランドが、以前から男性が協力的で子育てがしやすい社会だったかと言うと、どうもそうではなかったという事がわかりました。
この国も日本同様男尊女卑だったそうです。しかし第二次世界大戦で男性が家庭からいなくなったときに、女性たちが自動車の運転、機械の修理、工場を動かすことまでやるようになり、その経験を通して、戦後これまでのやり方が不平等だったことに目覚めたといいます。
フィンランドでは、女性が男性に対して、人間対人間という考えのもと意見を言うのだそうです。日本でも昔に比べるとずいぶんはっきりと意見を言うようになりましたが、それでもまだ我慢をしている女性が数多くいると思います。
人間対人間という考え方は、子どもに対しても同様で、相手が子どもであってもその言い分をきくべきだと言う考えがあり、3歳や4歳でも堂々と自分の意見を言うよう民主主義が徹底しているとのことです。
このような事は、一朝一夕にできる事ではないので、教育の大切さをしみじみと感じます。
また、渡辺久子先生は、まえがきに「一人の市民が一人の市民として発言することが出来、それに共感したり反対したりすることもできる自由な社会のあり方」をフィンランドに学びたいと書いておられます。
子どもが自由に発言できる環境は、その子どものそばにいるお母さんも自由だし、しあわせでいられる環境です。
今の日本は、残念ながら、まわりから後ろ指を指されないかと気にしながら生きているような、何か閉塞感を感じる社会ではないでしょうか。
日本も子ども・子育て支援新制度が始まり、子どもや子育てに社会の目が向いてきましたが、どんな社会になると子どもも大人も自由にしあわせに生きることが出来るのか、子どもと家族を中心に頑張っているフィンランドや北欧の国々の話は、子ども・子育て支援の今後を考える上でのヒントになるのではと思いました。

■子育てしやすい環境は自分たちで作っていく
先日、三鷹市市民協働センターで開催された”おやこでよってチョコっとアップるーむ”のお手伝いに行ってきました。
羊毛フェルトでキーケースを作るという講座だったのですが、この講座は0〜3歳までのお子さんを連れたお母さんたちが参加します。
基本的には、お子さんと一緒に作業をするのですが、離れられる間は、おもちゃで遊びますので、わたしは9か月から1歳2か月のかわいい子どもたちが遊ぶ様子を見守っていました。
その中に、明らかにハーフとわかる女の子が素晴らしい笑顔を振りまいていました。
お母さんも「この笑顔を見ると、産んでよかったと思うんですよ。」とうれしそうにおっしゃっていました。
聞いてみると、パパはスウェーデン人だとか。
北欧は子育て環境が整っているというけれどどうですかと尋ねてみました。
「日本も最近は子育て支援が充実してきているし、子連れで楽しめる所がいっぱいありますよ。」とのお返事でした。
子どもを育てるのに理想の場所は、きっとないのかもしれません。
制度は整っていても、その他の環境に人それぞれ求めるところが違います。
子育てしやすい環境は、制度や社会のせいにしないで、一人ひとりが、自分の出来るところから作り上げていくことなのではと改めて思いました。
大人も子どもも一人の人間として大切にされ、対等に自分の意見を言える社会になることがまず大切だという事も確認しておきたいことです。


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nana


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