第86回 ゆる育児キャンペーンとは?
■11月は児童虐待防止推進月間です
最近テレビのニュースなどで
オレンジリボンのバッジをつけた方をよく見かけるようになり、ピンクリボンと並んで、オレンジリボンもだいぶ認知度が上がってきたなあとおもいます。
オレンジリボンは、児童虐待防止の広報・啓発活動ですが、11月は、推進月間として「第12回子どもの虐待死を悼み命を讃える市民集会〜虐待死ゼロを目指して〜」を始め、全国でさまざまなイベントが開催されます。
そのなかに、「ゆる育児キャンペーン」があり、2012年から都内6つの子育てグループと子育て支援団体が共同で、フォーラムやフェス、勉強会、育児について考える会などを開いています。
三鷹市からもデュプレックスファミリーが参加団体になっています。
今年のキャンペーンのスタートとして「ゆる育児フォーラム」が、スウエーデン大使館で開催され、”ゆる育児宣言”が発表されました。
「ゆる育児」ってなんだろう、スウェーデン大使館ってどんなところだとうと興味津々で出かけてきました。
■スウエーデンは、子どもの体罰を法律で禁止した初めての国です
先月は、フィンランドの育児について書きましたが、スウェーデンも、フィンランドと同様、市民が長い間をかけて子どもにやさしい社会を作り上げてきました。
当日配布された「子どもに対する暴力のない社会をめざして 体罰を廃止したスウエーデン30年のあゆみ」という2009年に出された小さなパンフレットを読んでみました。
私も、ヨーロッパの古い映画などで、鞭や棒をつかった、酷い折檻を子どもが受けているシーンを見たことがあります。
子どももそれなりにかなり悪いことをしたわけですが、それを正す手段が親からの体罰で、それが当たり前と思われていた時代がスウェーデンにも長くありました。
1930年代に多くの国で子どもや子ども時代に関する新しい考え方や、医者や学者による研究が進み、体罰や精神的虐待などが子どもに及ぼす悪い影響についての知識も深まりました。
そしてスウェーデンでは数十年にわたって、体罰や精神的虐待をなくすための広報キャンペーンが続けられたそうです。
NGO(非政府組織)や様々な教育関係者が講演や会合を開いて、全国の子どもを育てる親や養育者に、暴力を使わない子育てを議論する場が作られ、マスメディアでも討論が行われました。
この冊子は、子どもが暴力を受けずに育つ権利を守るために、スウエーデンが30年間続けたキャンペーンがどれだけ有効であったか、またこれからも協力して取り組みを続けて行きたいと意思の確認のような意味を持っていました。
毎日のように報道される子どもの虐待の悲しいニュース。
「ゆる育児」キャンペーンは、スウエーデンの人たちが40年近くもかかって続けてきた「叩かない育児」について、考え、実行していく意思を持った現役のお父さん、お母さん、または養育者の活動です。
そんな、理由で、スウエーデン大使館でのキックオフとなったのでした。
■ゆる育児フォーラム
普段なじみのない、虎ノ門周辺、ビルが立ち並ぶオフィス街、アメリカ大使館始め、多くの大使館が立ち並ぶ一角にスウエーデン大使館はありました。
ドキドキしながら、出かけましたが、正面玄関を入ったすぐのところに会場となるアルフレッド・ノーベル・オーディトリアムがありました。
半円形のような形ですり鉢のように後ろに行くほど席が高くなっていて、客席から登壇者を見下ろすようになっています。木のぬくもりがある素敵な空間でした。
わたしの隣の席は、赤ちゃんを抱っこしたお母さんでした。
スウェーデン大使館アンナ・ハムレル一等書記官の開催のご挨拶の後、「ゆる育児」キャンペーンについて、都内6団体で構成される実行委員会のメンバーが交代で、この活動をするに至るまでの経緯が話され、ゆる育児宣言が読み上げられました。
ゆる育児キャンペーン2014のサイトから、http://yuruikuji.jimdo.com/ 「ゆる育児宣言」を読むことが出来ます。
「ゆる育児」ということばから「だらしがない育児」とか「手抜き育児」とか誤解をされることがあるそうですが、ゆるやかな育児という意味で、「ココロをゆるめ、カラダをゆるめ、子どもと楽しむゆるやかな時間、子育て。まわりの人たちとゆる〜くつながりながら、子どもも親も一歩ずつ、ゆるやかに成長する。」そんなイメージの”ゆる”と言う言葉です。
■パネルディスカッション
パネリストは、森郁子氏(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)
田沢茂之氏(NPO法人子どもすこやかサポートネット代表理事)
鈴木秀洋氏(文京区子ども家庭支援センター・男女平等担当課長)
柚井ウルリカ氏(swepan代表、スウェーデン出身 空手家)という顔ぶれでした。
各パネリストから、現在の活動についてプレゼンテーションがあり、その後「たたかない子育て」と「ゆる育児」と言うテーマでのパネルディスカッションがありました。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの森さんは2009年から日本国内でのポジティブディシプリンの普及活動をされています。
NPO法人子どもすこやかサポートネットは、子どもの権利、子どもに対する暴力防止に関する著書等も多く子ども支援をされている方です。
文京区子ども家庭支援センターの鈴木さんは、区の担当職員として、現状や取り組みを話されました。
そして、スウエーデン出身の柚井ウルリカさんのお話がとても私の印象に残りました。
3児の母であるウルリカさんは、スウエーデンで24年日本で21年暮らして、両方の社会や文化を見てきて、日本ので暮らす女性がもっと自分らしく生きられるようにならなければいけないと話されました。
スエーデンでは、子育ては父親、母親両方でするものだから、残業もないし、女性も働く、今の長時間労働が当たり前の日本の働き方だと、女性にばかり負担がかかり自分らしく生きられないし苦しいのではないかと。
そのような状況だと、虐待も起こるのではないかというご意見にはとても納得がいきました。
法律を作るだけで解決する事ではない、市民が意識を高めて自分達のできる事をすればいい、自分のまわりに関心を持つことが大事だと力強く語られて、とても共感しました。
■正解がない子育て
学校でも家庭でも体罰はいけないとうことが常識になりつつありますが、まだまだしつけと称した体罰が家庭内にあり、まわりが踏み込めず、虐待へとエスカレートした状況から子どもを救えない事例も後を絶ちません。
格差や貧困などの根深い問題もありますが、社会全体でこの状況を何とか良い方向にもっていくよう努力しなければいけません。
初めての子育てで、イライラしたり、つい手をあげそうになったりと言う経験は誰にでもあると思います。
また、厳しくしつけることの力加減や、甘やかしってどこまでをそういうの?とか、日々の子育ては、迷いの連続ではないでしょうか。
子どもを育てながら、自分と親との関係を見直したり、子ども時代のことを思い出したり、子どもをもったからこそ気づく親の愛もあります。
我が子への愛情をどう伝えて行けるかなど子育ては、試行錯誤の連続です。
そのような過程を経て、親も人として学び成長していくのだと思います。
■「ほめて伸ばす」?「叱って鍛える」?
先日新聞記事で「ほめて伸ばす」と「叱って鍛える」どっちの子育て、教育法を支持?というアンケートに、89%がほめて延ばす方を選んでいました
ただ、ほめるだけで、しかることをしない子育て、話し合う事だけする子育てはどうなのでしょう。
最後の方で、ウルリカさんから、スウェーデンでは、叩かない育児が前提となっていて、叱ることをせずほめるだけの子育て、話し合うだけの子育ては無責任ではないかと、一歩先を行ったそんな悩みも出されていました。
時には厳しさも必要だけれど、どこまで厳しくするかなど、親はいつも試されます。
子どもちに人生で出会う困難を自力で乗り越える力をつけるには、どうすればよいのでしょうか。
子どもも親も一人ひとり個性があり、親子はその個性の組み合わせです。
親子の数だけ子育てがあると言っても良いでしょう。
試行錯誤をしながらでも、親子で多くの時間を楽しく過ごし、たくさん話もし、良い関係を築いていけば、きっと子どもは自立して親から離れていくのではないかと思っています。
「ゆる育児」キャンペーンもっと広がっていくといいですね。
ゆる育児キャンペーンについては、コチラhttp://yuruikuji.jimdo.com/ からご覧ください。
12月初めまで、親子のための企画がいっぱいです。
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nana
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2014年11月号