第97回 最新科学と子育て

公開日 2016/05/17

■解決しない待機児童の問題
桜の開花ももうすぐ、卒業、入学のシーズンになりました。
4月から保育園に入るお子さんをお持ちの方も多いと思います。
保育園は増えているはずなのに、就労希望の母親も増加しているという事で、待機児童の問題は、いつまでも解決しません。
昨年出産した姪からも、「認可保育園に落ちてしまって、産休明けどうしようかと悩んでいる。」と言われ、事態の深刻さを実感しています。
子育て支援の活動を、15年近くも続けていると、だいぶ良くはなっていますが、まだまだ20年以上も前と変わらないと思うことも多く、無力感に苛まれます。

■人間は本来共同養育
先日「ママたちの非常事態、最新科学で迫るニッポンの子育て」というテレビ番組を見ました。
現代の母親たちの不安と孤独の問題を扱っていました。
子育てを辛いと感じている日本の母親の問題を、科学的な視点から見つめなおしていました。
母親の7割が孤立感を感じるというアンケート結果がありますが、それはホルモンの影響だといいます。
エストロゲンと言うホルモンが、妊娠中に増え、子どもを産むと急激に減少します。母親の脳は、神経細胞の働きが変わり、不安や孤独に襲われるのだそうです。
人間は、本来不安や孤独を感じたら仲間と一緒に子育てをしたくなるようにできているのだそうです。
そのため大昔から仲間と一緒に子どもを育て、子孫を増やしてきました。
その例として、今でも太古の子育てである共同養育をしているカメルーンのバカ族の様子が紹介されていました。
現代の日本では、8割が核家族で、唯一の共同養育の仲間は夫なのに、夫の協力が得られない環境がほとんどというのが現状です。
子育て中の母親が、孤独や不安になるのは、当然のことなのです。

■夜泣きも母を守るため
夜泣きの理由についても科学的な根拠がありました。
最近の研究で、胎児の睡眠の様子がわかるわかるようになり、胎児は母体から酸素をたくさん奪うため、母親が寝ている時に、胎児が目を覚ましているのだそうです。
生まれた後も、その習慣が残っていて夜泣きをするのです。
夜泣きも母親の身体を守るための名残の行動と思うと、夜泣きにイライラしなくなり、そのうち寝るようになると思えるのではないでしょうか?
他にもみんなが悩まされる、2歳頃から始まるイヤイヤ期も脳の発達から科学的に裏付けた説明がされていました。

■オキシトシンの働き
出産の時に出るホルモン、オキシトシンは、筋肉を収縮させる作用があり、授乳の時もオキシトシンがでて、お乳を分泌させるのだそうですが、
脳にも働きかけ、わが子やパートナーへの愛情を強める作用があります。
このオキシトシンは、子どもを守るために、愛情や絆を邪魔する存在に攻撃性を高めるという働きもあります。
それが、どうも子育て中の母親の特に夫へのイライラに繋がるようです。
番組に出てきた実験によると、母親がリラックス状態にある時は、授乳中と夫が妻と向きあって気持ちに寄りそった会話をしたときでした。

■母性は経験によって育つ
女子学生の育児体験で脳に変化が見られたという実験の紹介もありました。
このように科学的に裏付けがあれば、説得力も増しますので、女子だけでなく男子も中学、高校のころに、赤ちゃんに触れる機会をもっと増やすことで、子育てについての理解を深めることにつながると思います。
0歳から2歳の子どものいる家庭の離婚率が一番高いというデータからも、子育ては、夫婦の関係に大きな影響を与えているのです。
女性は、出産で脳が変わりますが、男性は、妊娠で身体が変化するわけでもなく、出産もしないので変わりません。
男性に子育てへの理解を深めてもらうためには、子どもと接する時間を多くしてオキシトシンをたくさん出して、共同養育者になることが大切です。

■時代は変わった?!
先日NPOで、親子で参加できる講座の紹介や子どものおもちゃや洋服のフリーマーケットを開催しました。土曜日という事で予想以上にファミリーでの参加がありにぎやかでした。
このようなイベントは、普段は母子がほとんどなのですが、赤ちゃんを前抱っこしたお父さんの姿をたくさんみて、時代の変化を感じました。
抱っこした赤ちゃんをいとおしそうに見つめる若いお父さんのやさしい表情を見ながら、こうやってオキシトシンがでて子どもや家族への愛着がましていくんだなあと微笑ましく眺めていました。
子どもと接する時間をたくさん持つことによって、お父さんもより父親らしくなっていくのでしょうか。
お父さん同士の交流も見られ、週末のこのような場は、これからもっと大切になると思いました。


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nana