公開日 2016/07/01
nanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・
第98回 若者が考える日本の子育ての問題
■『保育園義務教育化』と言う本
あじさいのきれいな季節になりました。
夏休みまであと一月ほど。子育て中のお母さんたちが少しほっとできる時ではないでしょうか?
『保育園義務教育化』(古市憲寿著 小学館)と言う本が話題になっているというので、読んでみました。
テレビやネットで大活躍の若手社会学者古市憲寿さんが書いたもので、もっと多くの人、特に年齢の高い男性に読んでほしいとの声が多いと聞きます。
若い社会学者が、日本の子育ての問題をどうとらえているのかとても興味深かったです。
■お母さんが人間だって気づいてますか?
この本は、親切に出来ていて、この本の読み方と言うページに、忙しい人向けなど、おすすめの読み方が書いてありました。
ピケティも心配する少子高齢化という日本の危機的状況を考え、ここはどうしても読んでほしいという気持ちの表れかもしれません。
そして、"はじめに"は、「お母さんが人間だって気づいていますか?」というタイトルになっており、自身や身近な人との関わりから問題に迫ろうとしていました。
同じ人間なのに、『「お母さん」になった途端、誰からも文句を言われないストライクゾーンが極度に狭まってしまう。日本の「お母さん」には基本的人権が認められていない様なのだ。』
これは、女性たちが子どもを産んで育て始めて、気がつく感情です。
妊娠、出産という喜びの後に、突然やってくる育児。
予想をはるかに超えた大変さは、経験してみないとわからない事ばかりです。
しかし、男性にはなかなか理解して貰えないのが現状です。
とりわけ在宅で子育てをする女性については、外で仕事をするよりも楽だと思われ、子どもと一日遊んでいると思われていてその孤独と不安を社会に理解してもらうのは難しいのです。
■少子化と労働不足という問題
少子化と労働不足という日本の大きな社会問題の解決に、保育所をたくさん作って、女性も働いてもらいましょうと言われています。
子どもを産んでなおかつ働こうと思っている女性がたくさんいるのに、保育園の待機児童の解消が20年以上も出来ていないという現状は本当に嘆かわしいことです。
保育園に入れなかったと嘆く親たちの声がテレビで頻繁に流れ、このままでは、もっと女性たちは子どもを産みたくても産めないし、少子化の解消は難しいと思います。
いくら少子高齢化といってもこの国で子どもを育てる事にリアリティが持てない、つまり子どもを持ちたいと思わないという著者が、この問題解決に当たり、”保育園義務教育化”というアイデアに出会ったというのです。
■乳幼児教育は社会全体のレベルを上げる
アメリカで実施された有名な実験によると、保育園に通った子どもたちは、学歴と収入が高くなった一方、犯罪率が低いといいます。
また、シカゴ大学のヘックマン教授の「5歳までの環境が人生を決める」についてもペリー幼稚園の例などを紹介して触れていました。
子どもは、早いうちから集団で育った方が、意欲や忍耐力といった「非認知能力」が育ち、その後の人生で成功する確率が高いのだそうです。
また、就学前教育が、いちばんコストパフォーマンスが高いという結果がでていることから、「保育園義務教育化」が、社会全体のレベルを上げることになり、社会にとって効率の良い投資と考えられるという事です。
ノーベル賞受賞者の研究結果と言われると説得力があります。、
また、保育園が義務教育になると、未だに根強い子どもを預ける事へのうしろめたさがなくなるとの指摘もありました。
■戦後女性が担っていた、育児と介護の行方は・・・
子育ても介護も昔は家族全体でやっていたかもしれないけれど、戦後は家庭にいる女性が担ってきました。
そんな中で、保育所ができ、子どもを預けて働く女性が現れ増え続けています。
子ども・子育て支援の新しい法律が、施行され子育ても福祉ととらえられて少しずつ社会が変わってきてはいますが、保育園の待機児童の問題がいつまでも尾を引いている現状です。
また2000年には、介護保険も出来て、高齢者を社会で見ていく制度も出来ています。
しかし本格的な高齢社会に対応が出来るのかと心配になります。
0歳からの保育園義務教育と介護が必要になった高齢者の看取りまでのケアを無償とはいかずとも、社会保障制度で賄えるようにするためには、どれほどの財源が必要なのでしょうか?
高齢者については、介護保険である程度はカバーできると思いますが、保育園を義務教育化する為の予算は莫大なものとなると思います。
因みに0歳児の保育にかかる費用は、一人一か月約40万、1歳児でも20万と言われています。
消費税8%から10%にするのさえ、先延ばしにするこの国で、保育園義務教育化の実現は何十年先になる事かとため息が出ます。
保育園の待機児童問題はじめ、子ども・子育ての政策が、政治家の口から多く語られるようになってきてはいますが、お金の問題などで辞任するお粗末な政治家が多く、悲しいことに政治への国民の信頼は薄れています
古市さん世代の若くて有能な政治家の出現を期待したいと思いますし、わたしたちももっと自分の生活について、政治、経済、法律と学ぶ必要があると感じました。
本当に知らないこと、わからないことだらけです。
■どんな国になると安心して子どもを産み育てることができるのか?
興味のある方は、この本を読んでみてください。
色々な事を考えるきっかけになると思います。
選挙も近い事ですし、どんな国になると安心して子どもを産み育てることができるのか、安心して老後を迎えられるのか考えてみるといいと思います。
時代とともに、社会のしくみは変わって行かなければなりません。
その変化の中で、自分にとって、家族にとって何が幸せなのか、じっくり考えて選び取っていくことが大切なのではないでしょうか。
イタリアでは、37歳の女性がローマ市長に選ばれたそうです。
若い力に期待したいですね。
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nana
2016年7月号