公開日 2016/08/01
ママとパパのリレーエッセイ 第162回 -築地律さん-
三鷹市星と森と絵本の家に在職中はみなさまにたいへんお世話になりました。
2016年3月末で退職し、今は新しい生活に適応努力中の築地にリレーエッセイのバトンをいただきました。
さて、突然ですが、髪を切ってもらったあとで、背中にチクッときたあと、かゆくて、かゆくてしょうがない…ということはありませんでしたか?
チクチクする~と大騒ぎして、シャツの背中をめくってみつけた数ミリほどの髪の毛の切れ端。
私が子どものころわが家では、これを「ほんとうのおひめさま」と呼んでいました。
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「ほんとうのおひめさま」は、アンデルセンの童話です。
あるところに「ほんとうのおひめさま」を探し求めている王子がいました。
王子は世界中をまわって「ほんとうのおひめさま」を探しましたが、見つからず。
ある嵐の晩、お城にやってきたおひめさま一行を泊めた王子は一粒の豆の上に敷布団を二十枚敷き、さらにやわらかい羽布団を二十枚重ねたベッドを用意しました。
おひめさまは次の日、とてもよく眠れたといいました。
次にお城にやってきたおひめさまも、同じように一粒のエンドウ豆を置き、その上に敷布団を二十枚敷き、さらにやわらかい羽布団を二十枚重ねた上に寝かされました。
朝になり、城の者が寝心地はいかがでしたかとおひめさまに聞くと、なにか固いものがベッドの中に入っていたためよく眠れなかったと答えました。
王子はこれこそ「ほんとうのおひめさま」とお妃に迎え入れた…というお話。
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当時わが家に子ども向けの本は、数えるほどしかありませんでしたが、その数冊を、何度も何度も読んで。
どのお話も、私たち家族みんなよく知っているお話になっていました。
取り込まれた物語は、血となり肉となって私たち家族だけにわかることばになりました。
50年経った今でもこれ以上にぴったりした表現はないと思うほどです。
みなさんのおうちでも、家族にだけわかる表現はありませんか?
2016年8月号