nanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・第99回

公開日 2016/09/01

コラムnanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・  

第99回 脳科学とコミュニケーション

■脳科学からわかることがある
夏休み、いかがお過ごしでしたでしょうか?
お母さんにとって、夏休みは一番忙しい時期なので、なかなかゆっくり自分の時間を持てないのが悩みという方も多いのではないかと思います。
みなさんは、何か困ったり、悩んだりするときどのようにして解決策を考えますか?
いろいろと振り返ってみると、私の場合は、まず関係のありそうな本を読む、講座や講演会などに出かけてみる、映画を観る、人と会って話をするなどしながら、ああでもない、こうでもないとやっているうちに乗り越えてきたような気がします。
そんなときは、無意識にアンテナをはっているせいか、情報が入りやすくなっているように感じ、不思議に良い本に出会います。
最近、わたしは、テレビで知って興味を持った脳科学者中野信子さんの本を何冊か読んでみました。
まだまだ脳についてはわからない事が多いそうなのですが、人の行動を見ていて疑問に思っていたことが、脳科学の立場から解き明かされていました。
日々感じる人間関係の疑問を心理学の立場から論じたものは多いのですが、脳科学からの考察は新鮮でした。

■さまざまな日々の疑問
どうして人は、褒められるとやる気になるのか?
人はお祈りしますというけれど、祈ることにどんな意味や力があるのか?
仕事をするとき、人は金銭的報酬とやりがいのどちらを求めるものなのか?
子どもが時間をかけて勉強しているのにテストでできないのはなぜか?
いけないとわかっていてもアルコールやたばこ、果ては薬物中毒になる人がいるのはなぜか?
同じ環境で育っても、性格や行動に違いがあるのはなぜか?
最近結婚しない人が増えているわけは?
人が努力できるかどうかは才能によるのか?
物事をギリギリでやる人と、余裕を持ってやる人の脳に違いがあるのか?
運のいい人、悪い人がいるのはどうしてか?
同じ物事についても、人によって感じ方が違うのはどうして?  
人が幸福感を感じる時はどんな時か?
つい星占いなどの占いを読んでしまうのはなぜ?
どうでしょう?生活している中で、日々疑問に想ったり不思議に感じたりすること、もっともっといろいろあると思います。
最近の素人向けの本にありがちですが、章立てがわかりやすくなっており、わたしのさまざまな疑問に脳科学の立場からの考えを知ることが出来ました。

■人とのコミュニケーションが取れなかった子ども時代
わたしが、初めて中野さんをテレビで見た時、脳科学を勉強するに至った動機が印象に残りました。
中野さんは、子どもの頃変わった子で友達との会話に入れず孤立していたそうです。
それも、授業でやった内容を自分は一度で理解できるのに、他のみんなが出来ない事が何故だかわからず、自分は人と違うと感じたと言います。
みんなは、家で勉強してやっとわかるところなのに、「どうしてできないの?」なんてうっかり言ってしまったら大変な事になってしまいますよね。
この方は、とても知能指数が高く、受験勉強もゲーム感覚で苦にならなかった書いてありました。
それはそれで普通の人からは距離を置いてみられ、孤立したであろうことは、想像できます。
みんなが自然にできる事が出来ないことに悩み、脳に問題があるのではないかと思って脳科学の道に進まれました。
人とのコミュニケーションを持てる人がうらやましかったのだそうです。
頭が良いなんて羨ましいと思いますが、人にはその身にならなければわからない悩みがあるものなのですね。
友だちとのコミュニケーションを上手に取るために、学校の先生からは、もっとテレビを見るようにと言われたのだそうです。

■わたしたちの脳の働きを知ること
脳の働きがわかるようになってきたのは、1990年代以降で、大発見が相次いでいるという事です。
ミラーニューロンという神経細胞も新しく発見されたもので、別名を「共感細胞」といって、わたしたちがどのように他者に共感するかという仕組みがわかるようになってきました。
また、大人の脳神経細胞も、これまで減る一方と思われていたのですが、日々新しく生まれている事も発見されました。
わかりやすく書いてあっても専門的な内容をちゃんと理解するのは難しいのですが、人の脳は、自分の生命を守るように働いていること、また「人間は一人では幸せになれない」ことも脳科学の立場からわかってきました。
脳から分泌される物質、快楽や喜びをもたらすドーパミン、怒りや不安をおこすノルアドレナリン、安らぎや心身の安定につながるセロトニン、愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンなどがどんな時に脳から分泌され人の行動にどんな影響を与えているのか、
そんなことを少し知っていると日々の生活に生かすことが出来るのではないかと思いました。

■ヘルパーズ・ハイ
オリンピックを見ていると、勝った時の選手の脳には大量のドーパミンが出ているのだろうなあなどと、思ってしまいますが、人のために役に立ったり、人を助けたり、人のために祈ったりしたときにも人の脳からは、オキシトシンが分泌され幸福感が得られことを知りました。
「ランナーズ・ハイ」と言う言葉は良く聞きます。マラソンなどで長時間走り続けると起きる現象ですが、看護師が末期がんの患者に心から尽くすときに、不思議な多幸感を感じることがありこれを「ヘルパーズ・ハイ」と呼ぶそうです。
看護だけでなく、他人のために一生懸命尽くすことが幸福感につながることも「ヘルパーズ・ハイ」と呼べるのではと中野さんは言っています。
自分を犠牲にして人のために尽くすことは、苦しい事ばかりのようにみえますが、実は利他行為がその人の幸福にもつながっていると言うのです。
脳には人の苦しみを自分のことのように感じ、人の喜びを自分のことのように感じることが出来るという「共感のメカニズム」があるのです。

■脳の働きとコミュニケーションの大切さ
最近これまで比較的元気だった母が入院し、介護が必要になり病院に通っています。そんな中で気づいたのは、コミュニケーションの大切さでした。
これまでもいろいろ話をしていたつもりでしたが、振り返ってみると10代の終わりに家を出てからこれほど長時間一緒いたことは、なかったのではないかと思うのです。
わたしたち子どもが交代でそばについて一緒にいること、ゆっくり話を聴くこと、そんな時間の積み重ねの中で、高齢であっても母に良い変化があり、少しずつ良い方向の向かって来ました。
そしそのことは、私に幸福感と力を与えてくれました。
また、長い入院生活で急に多くの他人と接するようになった母も、人とのコミュニケーションを通じて、ささやかな喜びを見つけたようでした。人は歳をとっても成長できると感じました。

■子育ては新しい人とのつながりを作るもの
子育てをしていると、日々さまざまな問題にぶつかります。後から考えるとちっぽけなことでも、その時は壁のように大きく感じます。
また実際に、もっと大きな困難にぶつかる事もあるでしょう。
逆境にいる時に、人の脳は自分を守ろうとするために、活発に働くのだそうです。

人と接すること、助け合う事で助ける方も助けられる方もしあわせな気持ちになるのですから、子育てで困難を感じたり、悩んだりするとき、ぜひ勇気をもって外に出て、人と話してみましょう。
また、困ってる人や悩んでいる人を見たらそっと声をかけてみてはいかがでしょうか。

昔のような親戚同士やご近所のつながりが薄くなってきていると感じます。
特に地方から出てきて東京で暮らして歳をとると余計にそんなことを思うようになってきました。
「人間は一人では幸せになれない」のですから、自分から人とのつながりを作っていかないといけないと思います。
子どもをもち子育てをすることは、新しい人とのつながりを作る上でまたとない良い機会をたくさん与えてくれるものではないでしょうか。


 

みなさまのご意見ご感想をお待ちしています。
  
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nana

2016年9月号