公開日 2016/11/01
ママとパパのリレーエッセイ 第165回 -はまさん-
こんにちは、はまといいます。三鷹生まれ三鷹育ちです。ニュージーランド人の夫と6歳の息子と3人で暮らしています。
夫がニュージーランド人と話すと大抵の人が、「あ、じゃあ留学先で出会ったの?」とか、「英語ペラペラなんでしょ?」とか聞いてきます。
でも、私は留学したことは1度もありません。英語も実はあまり話せません。夫も日本語がカタコトなので彼は英語で、私は日本語で会話をしています。不思議なことにお互いに相手の言っていることはよくわかります。息子は両方の言葉を話せます。時に通訳もしてくれます。
夫とは三鷹市の牟礼で出会いました。彼は親戚の家の隣のアパートに私が小学生の時から住んでいて、私も「外国人のお兄さん」として、よく知っていました。最初に就いた仕事で英語を話す機会が多く、彼に教わったのがきっかけで縁があって一緒になることになりました。
一緒になってしばらくは夫が長く暮らしていたアパートで生活をしてきましたが、息子が生まれたことで手狭になり、もう少し広いところへ引っ越そうという話になりました。
私の希望は両親や兄弟、親戚や友達もいるので「三鷹市内の物件」。
そして夫の希望は「駅近、一戸建て、緑が多い、静か、楽器が演奏できる」。
難易度高いな・・・と思いつつ物件を探し始めたら、それはもう大変でした。
どの不動産屋に行っても「その条件じゃねえ・・・」と苦笑され、仕方なくgoogleマップの航空写真で駅近くの緑の多いスポットを見つけては、息子をバギーに乗せ、お散歩がわりに実際にその周辺を歩き回り物件を探す日々・・・。
もうすぐ子供が1歳になろうというある日、仕事中に知り合いの不動産屋さんから一本の電話が入りました。「ついに出たよ!」と興奮気味に電話を掛けてきてくれ、その週末にすぐ見学に行くことにしました。
駅から程近い閑静な住宅街。おしゃれでモダンな一戸建てが建ち並ぶ中、緑がうっそうと覆い茂り、そこだけ時間が止まってしまったかのような古い家でした。まるでとなりのトトロに出てきそうな雰囲気。外観だけでもかなり期待が高まります。中に入ると更なるときめきが待っていました。
1枚板の味のある床やお風呂場の漆喰の壁、古い神棚、台所と呼ぶにふさわしいキッチン、2階から眺める庭の風景。前の住人である老夫婦がこの家をとても愛していたんだろうなというのがすごく伝わってきました。
夫も私もこの家が大好きになり、すぐに引っ越しが決まりました。
広い庭は息子の遊び場になりました。友達と走り回ったり、木登りをしたり、いろんな植物や生き物を観察できます。公園へ行かなくても十分庭で遊べます。
庭に畑も作りました。家族で季節の野菜を育てています。息子も種まきから収穫まで一緒にやっています。今の季節は夏野菜がよく採れます。息子は「お腹がすいたー」と庭へ行ってはミニトマトをもぎとってもぐもぐ食べています。
私自身がまだ小さい時に住んでいた家も古い家でした。小学校を卒業する頃に建て替えてしまいましたが今でも古い家のたたずまいから内装、そこでの生活の断面まで鮮明に思い出せます。
学生の頃に建築・インテリアデザイン・暮らしの道具のデザインに興味をもって勉強していていたのも、その古い家で過ごした記憶が私のベースになっていたからのように思います。
家の記憶は残ります。だから、チープな工業製品でできた、のっぺらぼうみたいな家では子供は育てたくないなと学生のころから考えていました。この家に出会えたことは本当に運命だと思います。
息子の中にもきっと、この家で過ごした記憶が深く深くしみ込んでいくことと思います。
今年我が家は50歳になります。これからも丁寧に、ていねいに毎日を過ごしていきたいと思います。
2016年11月号