公開日 2016/12/01
nanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・
第100回 最終回
■きっかけ
人生を道にたとえるならば、ところどころに曲がり角や分岐点があり、置かれている環境や、自分の意思であっちかな、こっちかなと選んで歩いて来ました。
その途中で、世間知らずの専業主婦が、子育て支援活動に足を踏み入れ、このコーナーに素人なのにエッセイを書くことになったのです。
今さらですが良く引き受けたと思います。
子育て支援も市民活動も知らなかった私が、流されるように今ここにいることを、15年前には想像もしていませんでした。
子どもを授かり、子どもを育てることが、想像以上に大変だと気づいたとき、仕事を辞めて、子どもと一緒に日々の暮らしに埋没していました。
子どもはかわいく、子育ての楽しさ大変さも知ったけれど、このままではいけないと、週に一度の主婦のためのセミナーに一年間通いました。
そして何かしなければと思った所で出会ったのが、子育てコンビニの活動だったのです。
上の子は、中学生、2番目の子が6年生だったと思います。
2001年頃は、まだパソコンが普及し始めたばかりで、まだまだのどかな時代でした。
ホームページも今から思えば手作り感満載のものばかり。
ブログもまだ普及し始めた頃だったので、今のように、FacebookやLineやら,Twitterやらとリアルタイムの情報発信に追いまくられたり、あふれる情報に振り回されることもありませんでした。
便利なはずのインターネットが、人を余計に忙しくしている事が気にかかります。
1回目を書いた頃は、インターネットでの情報発信がまだスタートしたばかりの頃だったのです。
■15年を振り返って、気がついたこと
活動を始めた頃の私は、自分が子育てと仕事の両立に挫折したことについて負い目を持っていました。
子育て支援という言葉もまだ馴染みがなく、子育ては、社会の問題ではなく、プライベートな問題だと思われていました。
しかし活動を続けるうちに、東京だけでなく全国の子育て支援の活動をする方々と知り合い、子育ては社会全体で考えるもの、子育て支援は必要な事なのだと、そのことは言い続けないとこの社会は変わっていかないということに気がつきました。
国も少子高齢化問題の深刻さに気付き、解決のためさまざまな施策をしますがなかなか少子化は改善されませんでした。
そんな中、子育ても、医療、年金、介護と並んで福祉の一つにしようという「四つ葉プロジェクト」の活動や、「にっぽん子育て応援団」の活動が立ち上がり、多くの方々の尽力で、2012年の8月に子ども・子育て関連3法が可決成立し、2014年、平成27年度から子ども・子育て新制度が始まりました。
そんな経緯をこのエッセイに綴ってきました。
親子で出かけて行ける子育て広場もたくさんできました。
街を歩いていて、赤ちゃん連れのお父さんが保育園に送って行っている風景や休日一人で子どもを見ている父親を多く見かけるようになりずいぶん世の中が変わってきたのを感じます。
女性のバスの運転手さん、郵便配達員さん、タクシーの運転手さんなどをたびたび見かけるようになったことなど、女性の働く場が増えていることにも気がつきます。
とはいえ、身近に保育園に入れず仕事に復帰できないと言っているお母さんたちや、仕事を続ける娘や嫁のために孫の世話に苦労している友だちなどの話をきくと、仕事と家庭の両立の悩みは、まだまだ続くのではないかと思います。
労働時間が長い日本人の働き方の問題が根底にあることは否定できません。
また一方には専業主婦願望の女子大生が増えているとの話もこの問題の根深さを感じます。
そして、シングルマザーが増えていることと、それに伴って子どもの貧困の問題がクローズアップされています。
しかも表面ではその現状がとても見えづらいという事に心が痛みます。
子どもの虐待の問題も増え続けています。
■子どもに鍛えられ、育てられる
わたしも活動年数とともに歳をとり、家族の病気、親の介護なども経験し、子育て、介護、医療の現場を見て人生の厳しさも人並みに体験してきました。
人生の厳しい局面で家族の支えが自分にとって大きな力になるという事を強く感じています。
子どもたちはそれぞれ大人になってしまったけれど、親子の関係は一生続きます。
人は、自分が生まれ育った家族、自分が作った家族、その二つを生きるのだなと最近しみじみ思います。
子どもだった自分が親との間に作ってきた関係は、良くも悪くも一生続きますし、自分と子どもとの間の関係も同様なのです。
良い時だけでなく、困った時、辛い時に、相談し合える親子関係を作っておくことは、難しいけれど後の人生を豊かにするのではないかと感じています。
自分が育った家族の中で、うまく出来なかった親との関係を、自分と子どもの間には作れるように努力したつもりだけれど、当の本人たちがどう感じているかはわかりません。
彼らがこれから試行錯誤しながら次の世代を作っていく中で、親の思いが伝わればいいなと思っています。
振り返ると本当に不器用で未熟な子育てだったと反省ばかり、子どもに鍛えられ、育てられたのだと今更のように思います。
■子どもたちの未来に幸せがいっぱいあるように
この活動をして、「子育てが大変だと大きな声で言っても良いんだ!」と思えたことは、大きかったと思いますし、共感できる仲間にもたくさん出会いました。
今や新聞、雑誌、もちろんインターネットで子育てのあれこれは毎日取り上げられ、保育園の問題をはじめ、子育てや子育て支援について話題にならない日はありません。
そんなわけで、素人のわたしが、修行のように書き続けたこの拙エッセイを、100回を節目とし最後にしたいと思います。
これまで読んでくださった方々、このような機会を与えてくださった方々に心から感謝します。
書くことで自分の気持ちの整理や再確認が出来たことは有難い事でした。
また、私の家族の記録にもなりました。
街で小さなお子さんを見かけると、そのきれいな瞳に吸い寄せられ思わず微笑んでしまいます。
そして何か力をもらうような気がするのは、私だけではないでしょう。
子どもには底知れないエネルギーがあります。
そんな子どもたちの未来に幸せがいっぱいあることをいつも祈りながら、これからも小さなお子さんを育てているご家庭のささやかな力になれたらと思っています。
みなさまのご意見ご感想をお待ちしています。
子育てをしていて、嬉しかったこと、驚いたこと、困ったこと、つらかったことなど、子育てをして感じた様々なことを、みんなでおしゃべりしてみませんか?
子育てコンビニでは、毎月「子育てコンビニひろば」という集まりを開いています。
子育てコンビニのスタッフ以外は毎回新しい方の参加があり、いつも同じメンバーの集まりではありません。
悩み相談に行くほどでもないけれど日ごろ気になっていることなどを、みんなで話してすっきりすることもあるようです。どうぞお気軽にお出かけください。
皆様のご参加やメールでのお便りなどお待ちしています。
nana
2016年12月号