公開日 2017/06/01
ママとパパのリレーエッセイ 第172回 -西岡直実さん-
「アンパンマンのように強くなりたかったらキライなものもがんばって食べなきゃ。」といった言葉をお子さんにかけたことはありませんか。お子さんが考えたドラえもんのひみつどうぐのアイデアに「ウチの子は天才かも!」などと感心したことはありませんか。私は、そうした、アニメ、マンガ、キャラクターといった子ども向けコンテンツの機能や効果について分析したり、企画・提案したりする仕事をしています。
以前は広告会社で子どものアニメ番組の調査やキャラクターのマーケティングなどの仕事に関わっていましたが3年前に独立して、現在は自宅で妻と二人でミッドポイント・ワークラボという小さな研究所をやっています。三鷹では、子どもが自分でオリジナルキャラクターを考えてものづくりや物語づくりをする“キャラキッズ”(キャラワークスジャパン)という活動をやっていますのでそちらでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
私がちょうど小学校に入学した年に、『鉄腕アトム』、『鉄人28号』、『エイトマン』といったTVアニメ番組の放送が始まりました。アニメ業界ではこの年を日本の“アニメ元年”と呼んでいます。鉄腕アトムなど当時のアニメの世界にはすでに、高層ビル群、高速道路、お手伝いロボット、宇宙ステーションなどの未来図が描かれていて、私自身もそれらに憧れて科学者になりたいと考えたこともありました。そして50年ほど経ったいま、多少形は変わってもそれらのほとんどが現実となっています。当時私と同じような夢を持った人々が実現してくれたのかもしれません。また、当時たまたま伯母の家が貸本屋をやっていて、夏休みに従兄の家に遊びに行く度に(貸本には不要になる)月刊マンガ誌の付録をもらって作っていました。当時は、厚紙と輪ゴムのような材料だけで車を動かしたりロケットを飛ばしたり、赤と青のセロファンの立体メガネなどいろいろ子どもたちを楽しませる工夫がされていました。
大人になって、広告会社で子ども番組やキャラクターについての調査などを担当するようになり、じかに子どもたちの声も聞くようになって、子どもたちにとってマンガやアニメが、いかに大事なコミュニケーション手段や心の支えになっているかということを知り、自分のライフワークにしたいと考えるようになりました。
さて、昔に比べると子どもの読書時間はかなり減っています。それでも、子どもが幼児や低学年のうちは、読み聞かせやおすすめ図書など大人からのアプローチもしやすいと思いますが、中学年から思春期を過ぎると子どもたち自身の選択になってくるのでなかなか大変だと思います。そんな時期には、例えば、お子さん自身が、アニメで見た原作を読んでみようと思ったり、マンガに出てきた場所に行ってみたいなど、マンガやアニメもいい物語や体験に出会う機会の1つだと考えてみてもいいのではないでしょうか。また、動物のマンガを読んで飼育員の勉強をしてみたいとか、私が少年時代に考えたように、未来の世界や道具などにあこがれて、大人になったらそれを実現させたいといった夢に結びつくこともあるかもしれません。キャラクターについても、子どもがよごれても離さないぬいぐるみには心理的な効果があったり、ヒーローやヒロインに憧れることで子どもたちが前向きになったりストレスを解消したりといった効果があると考えています。
社会的には、アニメやマンガが、子どもに見せたくないといった表現上の問題、キャラクターでは過度なブームによる射幸心など、ネガティブな形で出てくることも多いのですが、私はできれば、子どもたちの大好きなマンガやアニメやキャラクターが、子どもたちの心の成長や人生の指針の一つとして役に立つようなポジティブな視点から研究や活動を深めていきたいと思っています。
どこかでお目にかかる機会があれば、お子さんや、お父さま、お母さまご自身のアニメやマンガに対する思いなどもぜひお聞かせいただければうれしいです。
2017年6月号