ママとパパのリレーエッセイ-第180回-

公開日 2018/02/01

コラムママとパパのリレーエッセイ 第180回 -出口雅子さん-

初めまして。三鷹暮らしもかれこれ30年ほどになる出口雅子と申します。
私は残念ながら「ママ」でも「パパ」でもないのですが(笑)、三鷹で子育てしている外国人ママたちに寄り添う活動にかかわってきたご縁で、今回リレーエッセイに参加させていただきました。

私が外国人母子支援の活動に携わるようになったのは、学生時代にフィリピンで生活したことがベースになっています。
私は、子どものころ、自分のことは自分でやり、人に迷惑をかけないようにと育てられました。なので、フィリピンでも周りの人をあまり頼らず、がんばらなければ、と思っていました。当時、四人のフィリピン人女性たちと共同生活していたのですが、郵便局などに行く時に「一緒に行こうか?」と言われても、大丈夫、と断っていました。ところがある日、「私たちのことが嫌いなの? どうして、いつも一人で行動するの?」と悲しそうに言われたのです。その時初めて、フィリピンの人はめったに一人で行動しないことに気づきました。どこに行くにも何をやるにも友だちや家族と一緒なので、一人でいる人を見かけると心配になってしまうようです。

それ以降、私も、たとえ一人で大丈夫と思っても手伝ってもらうようにしました。フィリピンの人と一緒だと道に迷う心配もないし、何かあった時は心強いし、何より楽しい。タガログ語もどんどん覚えていきました。いつの間にか私も「一緒に行こうか?」と声をかけるようになり、そんなちょっとしたことで誰かの役に立てる喜びも感じるようになりました。自分ができないこと・苦手なことは誰かに助けてもらえばいいし、その代わり自分にできることは喜んでする。そうやってお互いに助け合い、補い合い、感謝しあいながらわいわい暮らすのは、私にとってけっこう心地よいものでした(もちろん面倒なこともありましたが…)。

フィリピンでの子育ても同様に、いろいろな人がわいわいと関わります。きょうだいや親せきと同居する拡大家族だから、という面もありますが、同居する人、近所の人、みんなが代わる代わる子どもをちょっとずつみていて、大げさに言うと「ママはおっぱいをあげるだけ」という感じ。「ワンオペ育児」とは対極の子育て環境があります。(一昔前の日本もそうだったと思います。)

今、日本で子育てしているフィリピン人女性もたくさんいます。日本での子育ては日本人にとっても大変なことですが、日本語がむずかしいうえに一人で行動することに慣れていないフィリピン人ママには、なおさらではないかと思います。

フィリピンにいた時、いろいろな人の“おせっかい”のおかげで安心して楽しく過ごせた恩返しとして、今、私もできる範囲で身近な外国人ママたちに“おせっかい”したいと思っています。そして私も「なんでも一人でできるようにならなければ!」などと無理はせず、しんどい時はまわりを頼って、感謝しながら生きていきたいです。

★野崎3丁目の「はちのこ保育園」を拠点に活動するボランティア団体「ピナット~外国人支援ともだちネット」では、常にメンバーを募集中です。
http://pinatmitaka.wixsite.com/pinat

2018年2月号