第20回 かかりつけ医について

公開日 2018/03/01

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みなみうら生協診療所の金子 惇(まこと)です。連雀通りの南浦の交差点近くにある「みなみうら生協診療所」というところで働いている医師で、高齢者の外来、訪問診療や小児の診療、予防接種を中心に活動させてもらっています。
自分は4年前に東京に来ましたが、それ以前は人口1300人の沖縄の離島・伊平屋島診療所で島内唯一の医師として3年間働いていました。 0歳の子どもさんから100歳を超える高齢者の方まで来る診療所で、「ハブに咬まれた」などの外傷から「学校に行こうとすると体調が悪くなる」といったこころの問題まで幅広く取り組ませてもらっていました。
三鷹の皆さんにも分かりやすい言葉で健康についてお伝えし、一緒に考えていけたらと思っています。8歳と6歳の子どもがいるパパです!

ですが、実は自分が4月から、母校の浜松医大(静岡県にあります)に赴任してそちらで診療や学生さんの教育を行うことになりましたので、2年に渡って色々書かせて頂いた本連載も今回が最終回となります。
 


かかりつけ医について

保護者の方たち向けの勉強会などに参加させて頂くと、医療機関や医師との関係に悩んでいる方がたくさんいることが分かります。

まだまだ流行っているインフルエンザを例にとって考えてみましょう。
診療所には毎日「インフルエンザが心配なので」「学校で病院に行けと言われたので」という方が来院されます。
一方で先日、妻の友人から「子どもが発熱し、幼稚園の先生に病院に連れていって下さいと言われたので連れて行ったところ、検査してインフルエンザの診断となった。タミフルを処方されたが、自分としては子どもは元気だし自然治癒力に任せたいと思い飲ませないでおいたら、後日病院の先生に怒られた」という相談がありました。
このお母さんは病院で怒られるということは自分の考えが間違っているのだろうか?子どもにとって良くないことをしているのだろうか?と悩んでおられました。

近隣の大きな小児科病院である都立小児総合医療センターが普段健康で持病のない子どもさんに関しては「インフルエンザの検査は原則しない」「タミフルなどのインフルエンザに対する薬は処方しない」と宣言しているのはご存知でしょうか?
http://www.byouin.metro.tokyo.jp/shouni/gairai/tiryouhoushin.pdf
理由としては
「自然に治る病気であるので普段健康で持病が無い場合は、検査をして診断をつけたり薬を飲んだりすることが必須ではないので」
ということが挙げられています。

勿論目の前で熱を出している自分の子が、入院が必要なのか判断してほしいという場合は受診する必要がありますが、検査のためや処方を貰うためだけの受診は必ずしも必要でないということが分かります。小児総合医療センターの様な大きい病院の役割と診療所の役割分担は異なりますが、小児の専門病院がこの様な方針を打ち出している意味は大きいと思います。

この考え方に基づくと、冒頭のお母さんの考えは決して間違っている訳ではありません。たまたまかかった医師と意見が異なるというだけだったのだろうと思います。
・熱が出た時にインフルエンザの検査をした方が良いか?
・インフルエンザと診断されたときに必ず薬を飲んだ方が良いか?
という簡単な質問にですら、「みんなに当てはまる正解」が無いのが実は現状です。子どもさんの病状や元々の病気によって違いますし、受診した医師によっても意見が異なることがあるかも知れません。医療者側としてはどこの医療機関を受診しても同じような医療が受けられる様な努力をしていますが、まだまだ不十分だと思います。

現段階で保護者の皆さんが出来ることは、
・プロの医療者としての意見や考えをしっかり教えてくれる
かつ
・保護者の意見や個別の状況をしっかり聞いて相談に乗ってくれる

という医療機関を見つけることかなと思います。なかなか難しいですし、お友達が「いい病院だったよー」と言っても自分や自分の子どもにとってそうでない場合やその逆もあると思います。

月並みな結論になってしまいますが、実際に行ってみて些細な事でもしっかり対応してくれる、保護者としての立場を理解した上で必要な助言をくれる医療機関を探してみて下さい。「受診した方がいいかどうか分からない」という場合や「おうちで様子をみていていいか分からない」ということもたくさんあると思います。上記の小児総合医療センターの件も含めて「軽症の人は受診しないで」と言っている訳ではありません。保護者が判断に迷うことも多いと思うので、そういう時はまず受診して相談してみて下さい。

‥‥

拙い連載でどれ位皆様のお役に立てたか分かりませんが、お付き合い頂き本当に有難う御座いました。自分としてもとても勉強になり、この様な機会を頂いたNPO法人子育てコンビニの皆さん、子育てコンビニを紹介して下さった方々に心から感謝しています。
三鷹がもっともっと安心して子育てが出来る地域となることを願って。


2018年2月26日 金子 惇


写真

写真は4年前に島を出た時のものです。島の皆さんにも三鷹の皆さんにもいつも十分な医療が提供できているかは自信が無いですが、温かく接して頂いて本当に働きやすかったです。恩返しできるように引き続き頑張ります
 

★編集部より

2年にわたってコラム連載をいただいた金子惇先生がご栄転のため、健康コラムは今回にて終了となります。金子先生どうもありがとうございました。


2018年3月号

 

 

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