nanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・season2 第5回

公開日 2019/03/01

コラムnanaの一口エッセイ~力を抜いて、ゆったりと・・・ season2

第5回 言葉の傾聴ではなく、こころの傾聴
 

◆ホームスタート・みたか
NPO法人子育てコンビニが、ホームスタート事業を始めてから、約2年が経過しました。
2年前の1月に第一回目の家庭訪問型子育て支援者(ホームビジター)養成講座を開催し、8名のビジターが誕生しました。
そして、2017年4月から正式に利用者を募集し始めました。
始めたのはいいけれど、利用希望者がどのくらいいるのだろうか、専門家でないわたしたちが訪問できるのだろうかと、ドキドキしていましたが、次々に申し込みが入るようになってきました。

そして、この1月は、第3回目の家庭訪問型子育て支援者養成講座を開催し、3月には、新しいホームビジターが誕生します。
この事業を始めてから、本部であるホームスタートジャパンなどで、度々研修会が行われ、わたしも参加し、勉強させていただいています。
先日は、多胎児の支援について学びましたので、その内容を少し紹介したいと思います。

◆「ホームスタートの多胎支援を考える」
最近は、不妊治療で生まれるお子さんが増えているということで、ふたごが生まれる割合も上がっていると聞きます。
三鷹にもふたごの会があるとは、聞いていましたが、わたし自身、身内や友人にふたごがいるということもなく、なんだか他人事のように思っていました。
しかし、最近ホームスタートの利用希望者にふたごのケースが増えてきており、今回の研修は、ちょうど良いタイミングでとても参考になりました。

登壇されたのは、みつごを育てたという、特定非営利活動法人ぎふ多胎ネット理事長の糸魚川誠子さんでした。
糸魚川さんは、35歳でみつごを妊娠、切迫流産の危険があるため妊娠初期から入院することが多く、その後も早産の危険があるため入院と、妊娠期間のほとんどを病院で過ごされたということでした。
しかも臨月が近づくと、早産を避けるために24時間点滴だったそうです。
13年勤め大好きだった教師の仕事も、休みが不定期に続くことで周りに迷惑がかかると退職されたということでした。

ふたご、みつごの場合妊娠中のトラブルを経験している方が8割だそうです。
妊娠中から外出できず孤独感をかかえ、多胎出産ができる病院が限られているため、通院も遠方と、多くの困難に直面します。
早産で、低体重で生まれてくることが多く、ママだけで退院というさみしさも経験します。
退院後も体力回復に時間がかかる中、過酷な育児が始まるのです。

◆一日30回の授乳
3人なので、ミルク、おむつの繰り返しが一日30回!
双六でいうと、”あがり”に来たらすぐ"”ふりだし”に戻る感じだったとユーモアを交えてお話しされましたが、聞いているだけでもため息が出そうな毎日です。
エンドレスな育児に疲労度は高まり、自信喪失に陥るケースも多いとのこと。
多胎家庭の虐待発生率は、単胎家庭の3~4倍だそうです。
糸魚川さんは、さまざまなサポートを得ながら乗り越えていかれるのですが、何カ月も外に出られない日々、久しぶりに行ったコンビニがキラキラ輝いて見えたそうです。

◆こころに響いた一言とは
3人連れてのお出かけは一苦労。そんな中、お友達が広場に一緒に行きましょうと誘ってくれたのだそうです。
3人の子どもを車に乗せながら、「毎日こんなことをしているんだね。」としみじみとそのお友達が言われた言葉に、涙があふれてきたそうです。
なにげない一言だけど、気持ちがこもっていると、わたしの今のこの気持ちをわかってもらえたと思えるものです。
そのことを、「こころの傾聴」という言葉で表現されていました。
自分のことを気にかけてくれる人がいるということが、とても嬉しかったと話されました。

◆「私らしさ」も大切
大変な毎日に、自信がなくなって、もうダメだと思ったときに、支えてくれたのは、「私らしさ」とそれを信じてくれる人の存在だったそうです。
子育てに熱心で真面目であるほど、毎日の育児、家事の負担に追いつめられていきます。
外遊びをさせたいのにさせられなかった分、絵本が大好きだった糸魚川さんは、たくさんの絵本を毎日読んだのだそうです。
「私らしさ」をみつけて、認めることで人はエンパワーされ、それが自信につながっていきます。

忙しいという字は、こころを亡くすと書きますが、毎日の家事育児に忙殺されているときは、「きれいなものをきれい」と思える時間もありません。
「夕陽を見てきれいだと思える明日を信じられる支援を!」と呼びかけておられました。

◆「言葉の傾聴でなく、こころの傾聴」が大切
ホームスタートは、専門家ではない子育て経験者が訪問するボランティア活動です。
多胎、単胎に関わらず、子育てに困難を抱えている方の状況を理解し、それぞれの人の良い面をみつけ、力を信じることができるサポートができるといいなあと思っています。
そのためには、「言葉の傾聴でなく、こころの傾聴」が大切なのだとお話を聴きながら思いました。

また、ふたごの場合、なおざりにされがちな兄弟姉妹へのケアも忘れてはいけないということも書き添えておきます。
これからも研修会でいろいろ勉強し、活動に役立てていきたいと思っています。

※ホームスタートとは、ボランティアスタッフが週に1回2時間程度訪問をし、話をしたり一緒に出かけたり、保護者が孤立しないように地域との繋がりを作る活動です。
ホームスタート・みたか E-mail:  h-start@kosodate.or.jp


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2019年3月号