ママとパパのリレーエッセイ-第195回-奥林純子さん

公開日 2019/05/07

コラムママとパパのリレーエッセイ 第195回 -奥林純子さん

 

<108円で月の満ち欠けを1年間楽しむ方法>

三鷹の下連雀4丁目で子連れOKのパンとシフォンケーキの教室「BREAD&DAYS」と、小学生のための科学も学べるお菓子作り教室「ハーバルキッチン」を主宰している奥林純子です。

我が家には小学5年生と2年生の男児がおります。
子育てしていると、自分自身の子ども時代に曖昧だったこと、避けて通ってきたことを突きつけられる瞬間ってありませんか?
私にとってそれは、まだ子どもたちが幼稚園児で恐竜にはまっていた頃にやってきました。

ある日家族で上野の国立科学博物館に行き、まずはお目当ての恐竜の化石や骨格見本などを堪能し、その後太古の昔から現代に続く動植物の化石エリアを回りました。
そして展示してある巨大なアンモナイトに何気なく触れた時のこと!

中学の授業で習ったのに混乱して結局よくわからなかった「示準化石」と「示相化石」のことが突然理解できたのです!!
両方ともにアンモナイトが該当しているせいでちっとも覚えられず、でも頭の片隅にこびりついていたこの2つの用語が、アンモナイトの本物に触れただけで一瞬にして「ああ、なんだそういうことか」と理解できたのです。

正に『百聞は一見に如かず』ですね。
そして同時にこうも考えました。

「小さい頃から東京に住んでいたのに、どうしてうちの親は私をここに連れてきてくれなかったの?本物に触れればこんなにすんなり学習できたはずなのに!!」

私の両親は私が6歳の頃家族で北海道から東京に引っ越してきたので、東京のどこにどんな本物があるかなんてわからなかったかも知れません。
それに「学校で教えてくれるんだから」と、私や姉の学習内容を把握しようとしたこともありませんでした。
この経験から私は、子どもたちを育てる上で子どもの興味を注意深く観察し、本物に触れるチャンスと実体験を大切にすると決めました。あとで恨まれないくらい充分に。

それなのに、1つ困ったことが。
天体です。東京に住んでいると、星の観察は非常に難しい。そして私はこの分野がもっとも苦手なのです。知っている星座はオリオン座だけ。
学生時代も「テストに天体が出ませんように!」と何度願ったか知れません。
ですが長男は、天体に大いに興味を持ちました。きっかけは兵庫県にある西はりま天文台に宿泊し、バーベキューもして日本一の望遠鏡で夏の夜空をとことん堪能したこと。
そこで私は考え方を変えて、子どもたちと一緒に天体について学ぶことにしました。
最初は月について、絵本から。

それで気づいたのは、絵本に出てくる月は満月ばかり!!ということ。
どうしてだとおもいますか?
みなさんも小学生の頃学んだはずですが、実は「お月さま」には毎晩会えるわけではありません。
小さな子どもたちはきっと、夜になれば「お月さま」が空に現れると思っているでしょう。でも実際には夕方になっても真夜中になっても月に会えないことがあります。

でも満月なら、日没と同時に東の空に現れて、保育園のおむかえ時や習い事の後、おうちに帰ってくるまで東の空で追いかけてきて見守ってくれます。
そして真夜中に南の空を通って、明け方西の地平線に沈みます。
暗い夜の空を日没から夜明けまでずっと明るい光で照らしてくれる。それが満月なんですね。
だからこそ子どもたちに寄り添う優しいお月さまと言えば満月なのでしょう。

地球を挟んで太陽と月が反対に位置しているから満月。
同じ側にあれば新月。
小学生の頃昼休みにブランコに乗りながら、新月のかげを眺めていたのを思い出します。

一方、J-POPのちょっと悲しげな曲に出てくる「下弦の月」にはなかなか出会えません。
なぜなら下弦の月は真夜中にやっと東の空に現れて、朝が来る頃に南の空。午前中は西の空にいますが、空が明るくて見えにくいのです。
「下弦の月が見える」ということは「なんだか眠れなくて真夜中から明け方まで起きていた」ということを伝えたいのですね。


そんな月の満ち欠けの不思議を簡単に意識できる、我が家で実際に取り入れている方法をご提案します。しかも費用は108円!
やり方はとっても簡単です。

まずは100円ショップで月の満ち欠け付きカレンダーを買う。

玄関に置く。

朝や夜、ママやパパが「今日の月はこんなかたちかー会えるかな~」と大きめの独り言を言う。

月をみつけたら「今日は東の空にいたね」などと大きめにつぶやく。
毎日同じような時間に観察できるとステキ。

図書館で月に関係する絵本や図鑑を借りて親子で楽しむ。

これだけ。
これならパパやママに天体の知識がなくても大丈夫ですよね。形を意識して月を見つけるだけですから。
「お月さまには毎日会えるわけではない」ということが、子どもたちにとって疑問になったら大成功です。

月の周期はおよそ29.5日。
幼児から小学校低学年なら上弦の月から満月が見つけやすいでしょう。
満月の日にはアイスを買う、などちょっとイベント要素をとりいれて、少しずつ形を変えていく月の神秘を親子で楽しんでみるのはいかがでしょうか。

空を楽しむきっかけ作りや、もっと知りたい!と思った時の私のおすすめスポットは
三鷹市 星と森と絵本の家
です。

遊びながら知識を得て自ら探究していく。
これからの子どもたちに必要なのはそういった力だと思います。
そしてそれには、親子で本物に触れたという体験がベースになるはずです。

BREAD&DAYS 奥林純子
 

2019年5月号